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知ってトクするシゴトの韓国語

ハイ・キャリアに韓国語関連コラムが初登場! 大学卒業後に韓国語の学習を始め、韓国留学。海運会社勤務後、2004年に韓国語スクールを設立した幡野さん。2010年には中国語講座も開始し、自身も中国語の学習を始め、現在上級レベルを目指し奮闘中なのだとか。そんな幡野さんから、韓国語の話、語学学習の話、そしてスクール運営をする中での様々な風景について語っていただきます。

第10回 一流でなくとも、「二、三流の一流」を目指す

 前回のコラム で「第7回オレカテ」に参加したことで思い出した、とある翻訳の事例について書かせて頂きました。その際、「第8回オレカテ」は私が講師になると申し上げましたが、先日、その講演を行って参りました。

 題名は「シゴトの韓国語と韓国語のシゴト」。韓国語を活かす仕事にはどのようなものがあるか、そして仕事に活かすための語学力はどの程度必要かなどについて、これまで当校で学ばれてきた多くの方の事例をご紹介しながら、お話しました。

 語学を活かす具体的な仕事として紹介が欠かせないのは「通訳者」でしょう。しかし、この「通訳者」にもいろいろあります。私はまず、「一流の通訳者」と「二流、三流の通訳者」とに分けました。

 「一流の通訳者」は、専門機関で同時通訳をはじめ、ありとあらゆる通訳の訓練を受け、国際会議などを中心に活躍する方々。現在このフィールドで活躍する日韓(日本語・韓国語)通訳者は、たいてい韓国の通訳翻訳大学院を卒業し、実践を積んでいる方がほとんどのようです。韓国にはどのような通訳翻訳大学院があるのか、その大学院に入るための予備校的な専門学校については、こちら(「All About 韓国語~韓国の「通訳翻訳大学院」と「入試準備学院」について)をご覧ください。

 自身の語学力が上級レベルに近づいてきて「通訳者」という仕事に興味を持ち出す頃に想像する姿はまずこの一流の通訳者かもしれません。しかし、優秀な韓国人通訳志望者と共に大学院に入り、厳しい訓練についていき、無事卒業をし(卒業試験にパスできないこともある)、さらにそこから安定的に仕事をもらい実績を積んでいくという王道を突き進める人はほんのわずかなのが現実です。

 現在、首都圏で活躍する一流の日韓通訳者は、私の個人的感覚としては多く見積もっても20~30人程度でしょうか(通訳の先生方からは「もっと少ないよ」と言われそうですが......)。そう、一流の通訳者として活躍するのは、例えて言うならサッカーの日本代表に選ばれるくらい、すごいことなんですよね。

 しかし、実はこのような一流の方ばかりを「通訳者」と呼ぶのではありません。「通訳者」を必要としている場所は無数にあり、必要とされる場所で素晴らしいパフォーマンスを発揮する方々もたくさんいます。このような場で活躍する通訳者を、勝手ながら「二、三流の通訳者」と呼ばせて頂きましたが、あくまでも一流との対比で、この「二、三流」の通訳者として成功するためにも、一流の方々と肩を並べるくらいの志(こころざし)、相当の訓練量、ビジネススキルや知識が必要です。

 当校の「通訳翻訳プログラム 」には、この「二、三流」のフィールドで活躍する方々がたくさんいらっしゃいます。多くの上級者にこうなるチャンスがあります。具体的にどのような場面で活躍されているのか、当校の受講生の方の中から3名をご紹介しましょう。

 Sさんは日本語ネイティブ。市の国際交流団体職員として働いています。担当業務は韓国語による窓口・電話相談対応など。外国人住民が多い市なので、外国語による相談対応需要は大変多いそう。ほかにもSさんはコミュニティ通訳者として、県の医療通訳派遣に応じたり、市民通訳ボランティアも行い、医療現場や学校教育現場において、日本語が不得意で不便な思いをする方々のお手伝いをしています。韓国語を活かして人々の生活を豊かにするお手伝いをするのは、まさに究極の社会貢献といえるでしょう。

 次にIさん。Iさんは韓国語ネイティブ。IT業界のSE、韓国語講師などの職を経て、ゲーム会社に就職し、社内で欠かせない専属通訳者として活躍しています。ゲーム会社は日韓ビジネスの中でも好調の業界。そのような業界では、一般社員に通訳を任せたり、外部に依頼したりせず、Iさんのように専属の通訳者を置いています。Iさんの仕事としては、会議通訳、各種書類の翻訳など。ゲームに関する用語は入社してから培ったものももちろんありますが、SE時代の経験も生きているそうです。

 最後にKさん。Kさんは日本語ネイティブで、エンターテイメント会社の社員です。K-POPファンならよく知る男性歌手グループの、日本市場でのリリースを担当しています。韓国側の事務所とのやりとりや契約関連、コンサートやイベントの企画や運営に携わるのはもちろんのこと、日本市場で発売するCD楽曲の日本語歌詞翻訳まで手掛けたこともあります。このように、韓国との交渉や楽曲の翻訳まで携われるのは、かなり高いビジネススキルと通訳翻訳能力があってこそでしょう。

 さらに付け加えますと、受講生の方の中にはこのように会社などの事業体に所属せず、フリーランサーとして通訳・翻訳業をこなす方もいらっしゃいます。

 以上、具体的な事例として3名の方をご紹介しましたが、皆さんに共通しているのは、専門分野で強くなり、さらに通訳・翻訳技術を磨いてそこで韓国語力を発揮する、という点です。

 とある通訳の先生が「通訳者は究極のサービス業だ」とおっしゃっていました。そう、通訳は「人と人との心をつなぐ仕事」です。自身がやりがいを持って取り組める仕事を見つけ、そこで韓国語力が発揮できることこそ、その方にとっての最大の自己実現となり得るのではないでしょうか。

 一流の通訳者になれたらそれはそれでとてつもなく素晴らしいこと。しかし、それ以外にも意義のある通訳の現場はたくさんあり、ありがたいことに多くの人にこのフィールドで活躍するチャンスがあります。ぜひ、「二、三流の一流」を目指していこうではありませんか。


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プロフィール

幡野泉

幡野泉さん
早稲田大学第一文学部卒業。1998年、韓国・延世大学校韓国語学堂修了。韓国大手商船会社の日本総代理店に勤務後、有限会社アイ・ ケー・ブリッジ設立。04年には「シゴトの韓国語講座(現・アイケーブリッジ外語学院)」を開設し、ビジネス韓国語を中心とした講座運営を開始。同年、延世大学校韓国語教師研 修所、第20期研修過程修了。現在、「アイケーブリッジ外語学院」代表および「All About 韓国語」ガイド。著書に『明日から使えるシゴトの韓国語』(アルク)、『シゴトの韓国語 基礎編応用編』(三修社)、『リアルな表現が話せる!韓国語フレーズブック』(新星出版社)などがある。2010年の中国語講座開講をきっかけに中国語の学習を開始し、2012年にはHSK(新漢語水平考試験)の5級を取得。