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放送通訳者直伝!すぐ使える英語表現

第180回 「維持する」

hold up (維持する)

One dollar is holding up at 105 Japanese Yen.

(1ドル105円を維持しています。)

放送通訳現場で私が難儀するのが「句動詞」。基本動詞に前置詞などを付けたフレーズです。give in、get along withなどがありますよね。意味を知っていれば問題なく訳せます。けれども語義を知らないと、非常に訳しにくいのです。同時通訳ですので、だんまりを決めてしまっては放送事故になりかねません。文脈から連想して苦し紛れの訳になることもしばしです。

先日AFNを聞いていた際、耳にしたのはhold upという句動詞。今回ご紹介するフレーズです。私は外出中にラジオを聞くことが多いのですが、そこで知った単語で未知のものがあれば、なるべく手元のメモ用紙に書くようにしています。よって、メモ帳とペンはバッグの一番取り出しやすいところに入れています。

さて、このhold upを電子辞書の「成句」機能で調べると、実に多くの語義が出てきました。「支える」「維持する」などがいずれの辞書でも上部に掲げられています。それ以外の意味もたくさんあります。たとえば、hold up a person to derision(人を笑いものにする)、That excuse doesn't hold up anymore!(その言い訳はもう通用しないんだよ!)、How are you holding up? (調子はどう?)などです。句動詞の勉強は私にとって一生続きます!


第179回 「~する余地がない」

not have the bandwidth to ...(~する余地がない)

I'm afraid I do not have the bandwidth to do the project now. Can you ask me later?

(今はそのプロジェクトをする余地がないんです。また後日、聞いてもらえますか?)

「~する余地がない」「これ以上は無理」を英語ではdo not have the bandwidth to ... と言います。bandwidth自体はラジオの周波数の「帯域幅」という意味です。他にも口語表現で「処理能力」という語義があり、この表現が生まれました。

私がこの言葉に出会ったのは、アメリカのとあるニュースサイトでした。最近のサイトは広告収入を得るために、ニュース動画を視聴する前に企業広告が流れます。そのCMの中にこのフレーズが出てきたのです。15秒ほどのCMは、急いでいるときほどまどろっこしく感じます。けれどもその中に出てくる英語や日本語を通訳してみようと考えれば、立派な勉強時間になります。「ちりも積もれば山となる(A penny saved is a penny earned)」です。

ところでラジオの「周波数」は英語でfrequencyと言います。一方、NHKラジオ第1放送を聞いていると「JOAK(ジェイ・オー・エー・ケー)」という言葉が時々聞こえてきます。このJOAKは「呼出符号」です。アメリカの呼出符号の場合、ミシシッピ川を境に東西に分けています。「WBUR」などとWで始まる場合は東側、「KWEM」などKが頭文字の場合は西側という具合です。


第178回 「突き止める」

nail down (突き止める)

Why did the sales figure drop? We need to nail down the cause..

(なぜ売上高が落ちたのだろう?原因を突き止めなければ。)


英語で「突き止める」をnail downと言います。動詞と前置詞から成り立つこのような表現を文法用語では「句動詞」と言います。実は放送通訳現場で私が一番苦労するのが句動詞。もとの動詞の意味と異なる語義になるため、全体の文脈から推測して訳すことがしばしあります。出てくるたびに辞書で調べて勉強です。

nailは「爪、くぎ」という名詞の他に、「くぎで打ちつける」「嘘を暴く」などの意味があります。今回ご紹介するnail downは決定や合意をこぎつけるというニュアンスだけでなく、無理やり人に「意向をはっきり言わせる」という語義もあります。皆さんもぜひ辞書の例文検索機能で調べて、様々な用法を身につけてください。

さて、紙版の「ジーニアス英和辞典」でnailを引くと、くぎの詳しい図が出ています。「頭部」はhead、「胴部」はshankとあり、ねじの構造も図解になっています。さらにインターネットで調べたところ、ねじには「おねじ(male screw)」と「めねじ(female screw)」なるものがあったのですね。知りませんでした!


第177回 「わずかな額」

chicken feed (わずかな額)

The sum might sound like chicken feed to you, but I have spent some time saving the amount!

わずかな額に聞こえるかもしれませんが、その金額を貯金するのに結構かかったんですよ!)

chicken feedは文字通り訳せば「家禽の飼料」ですが、口語表現では「わずかな額」という意味もあります。小銭、はした金のことです。この表現に私が初めて出会ったにはイギリスの週刊誌The Spectatorの読者投稿欄でした。投書欄は世情を表すトピックであふれています。しかも珍しいフレーズにお目にかかることも少なくありません。英語学習にも大いに役立つことから、私は毎回楽しく読んでいます。

chicken feedは上記のようにsound like chicken feed to ... といった表現の他、for chicken feed(はした金で、ただ同然で)、pay chicken feed(小銭を払う)などの用法もあります。また、お金関連以外にも「つまらないもの(人)」という意味もあります。初めてこの単語が登場したのは1836年だそうです。

さらに辞書を読み進めたところ、「偽情報」との語義もありました。具体的には「政府が自分の使っている二重スパイや他の政府からのスパイにわざと流す誤った情報」を指すそうです。「偽情報」で思い出すのが、最近よく聞かれるfake news(偽ニュース)。ちなみにfakeはジャズ用語で「即興演奏をする」という意味もあるそうです。


第176回 go head to head (直接対決する)

go head to head (直接対決する)

The candidates went head to head on the TV debate.

(候補者たちはテレビ討論会で、直接対決しました。)

「直接対決する」は英語でgo head to headと言います。head-to-headのように間にハイフンを入れる表記もあり、意味としては他にも「直談判して」「一騎打ちの」といったものもあります。head-to-head raceはスポーツ用語の場合、「大接戦」を指します。

私はデジタル全盛の時代となった今でも紙辞書が好きで、自宅では大修館書店の「ジーニアス英和辞典第5版」を愛用しています。そのジーニアスでheadを引くと、数ページにわたり語義や例文、慣用句などが列記されているのがわかります。ざっと眺めてみると、have a head for (得意である)、come to a head(危機に陥る)、make head(立ち向かう)など実にたくさんのフレーズが出ているのですね。

なお、head単体の語義で面白かったのは「(蒸気・水などの)圧力」「(炭鉱の)地下通路」「(河川・渓谷などの)源」でした。簡単な単語でも、じっくりとすべての語義を読み直してみると、その都度大きな発見があります。



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プロフィール

柴原早苗

柴原 早苗さん
放送通訳者。獨協大学・順天堂大学非常勤講師。 上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。 ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。 NHK「世界へ発信!ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。 ESAC(イーザック)英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。 通訳学校にて後進の指導にあたるほか、大学での英語学習アドバイザー経験も豊富。 著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)、「英検分野別ターゲット英検1級英作文問題」(旺文社、2014年:共著)。 「放送通訳者・柴原早苗のブログ」 http://sanaeshibahara.blog.
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