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放送通訳者直伝!すぐ使える英語表現

第101回 「(進行を)妨害する」

throw a spanner in the works (進行を)妨害する

During the final stage, our budget was cut in half. That really threw a spanner in the works.

最終段階になって予算を半分にされました。あれで本当に妨害されましたよ

 今回ご紹介する表現はthrow a spanner in the worksです。主にイギリスで使われる略式表現で、アメリカの場合、throw a wrench in the worksとなります。意味はいずれも「(進行を)妨害する」です。 

 spannerは工具の「スパナ」「レンチ」のことです。エンジンなどにスパナを投げ入れてしまえばエンジンが壊れてしまいます。そこから「妨害する」という意味になったそうです。初めて使われたのは1930年代とされています。

 ところでスパナとレンチに違いはあるのでしょうか?spannerはイギリス英語、wrenchはアメリカ英語で、同じものを指します。一方、日本語の場合、幅を調整するタイプのものは「モンキーレンチ」と呼ばれています。また、家具などの金属部分で六角形の留め具がありますが、そのネジを止めたり緩めたりするものを「六角棒スパナ(英語ではhex key)」と言います。自分で組み立てるタイプの本棚やイスなどにL字型のネジ締めがありますよね。あれが六角棒スパナです。英語のhexはhexagon(六角形)から来ています。

 私たちの日常生活でよく見かけるものも、改めて調べてみると新しい発見があります。インターネットで画像検索をすればすぐに分かりますので、本当に便利な時代になりましたよね。


第100回 「コツを教える」

show someone the ropes コツを教える

You seem to be struggling with the tool. Let me show you the ropes.

どうやらその工具に苦戦しているようですね。コツをお教えしましょう

 本コラムもおかげさまで第100回目を迎えました。ここまで長く続けることができましたのも、読んでくださる読者のみなさまのおかげです。改めまして心より御礼申し上げます。みなさまの英語学習に少しでもお役にたちたいというのが私の願いです。どうぞこれからもよろしくお願いいたします。
 さて、今回ご紹介するのはshow someone the ropes、「コツを教える」というフレーズです。ropeは文字通り「ロープ」のことですので、文字通り訳せば「ロープを見せる」となります。これは航海関連が語源のようで、帆船がロープを多用しているところから誕生したとされています。経験ある船員が未熟な者に教える、という意味から来たようです。show以外にもteach someone the ropesと言うこともあります。
 さて、英語学習に「コツ」はあるのでしょうか?私自身の経験を振り返ると、ひたすら試行錯誤の連続で今に至っているという感じです。通訳の仕事をしていても、まだまだ学ぶことは果てしなくあり、学習法や時間の使い方など、自分に合いそうなものはトライし続けています。英語上達の最大のコツは、とにかく「続けること」なのかもしれませんね。


第99回 「大損する」

take a bath 大損する

Since the company wasn't careful enough, it took a bath investing in their new project.

その会社は十分注意を払わなかったため、新規プロジェクトへの投資で大損しました

 私は「記念日」と名の付くものが好きで、カレンダーなどに書かれている「○○の日」という記述に注目しています。国民の祝日や業界団体が設定する記念日など、その内容も多岐にわたりますよね。ちなみに毎月26日は「ふろの日」なのだそうです。そこで今回は「お風呂」に関連した英語表現を見てみましょう。
 take a bathは文字通りであれば「お風呂に入る」という意味です。一方、略式表現では「大損する」という意味にもなります。ビジネスや投資などで巨額の損失を出す様子を表します。このフレーズが誕生したのは1900年代の始めだそうです。
 ところで日本語では「お風呂に入る」という具合に動詞の「入る」が使われます。英語で「お風呂に入る」はtake/have/get a bathです。「浴槽そのものに入る」のであれば、get into a bathとなります。同じ行為でも動詞が日本語と英語で異なるのは興味深いですよね。
 私はこの原稿を書くに当たり、紙版の辞書「オーレックス英和辞典」(旺文社)を今回は活用していますが、bathを使った表現がもう一つありました。take/have an early bathです。これはイギリスの口語表現で「(サッカーなどで)退場させられる」という意味だそうです。ちなみにan early exit from the World Cupは「ワールドカップからの早期敗退」となります。これを機にスポーツ用語を学ぶのも楽しそうですね。


第98回 「有能な人を選ぶ」

separate the sheep from the goats 有能な人を選ぶ

The management has decided to separate the sheep from the goats in order to go ahead with the new project.

経営者側は新規プロジェクトを進めるために有能な人を選ぶことを決めました。

 今年の干支は未。ということで今回ご紹介するのは「ヒツジ」を用いた表現です。separate the sheep from the goatsは主にイギリスで使われる表現で「有能な人を選ぶ」という意味です。「有能なものとそうでないものを区別する」というのがより具体的な意味となります。 

 もともとこのエピソードは新約聖書のマタイ25章31から46節に出てくるものです。その当時、放牧はヤギもヒツジも一緒でした。しかし夕方には両者を分けて小屋に入れたのだそうです。聖書の世界ではヤギが悪人を、ヒツジが神の民を表すとされています。そのことから今回ご紹介するフレーズが誕生したようです。

 さて、昨年末に大修館書店の「ジーニアス英和辞典第5版」が出版されました。第4版から数年たっており、ファンにとっては待ちに待ったお目見えです。私は第4版から愛用しており、今回も発売直後に入手しました。まだページがパリッとしており、これからどんどん単語を調べては下線を引いたり余白に書き込んだりしていくのが楽しみです。

 そんな紙辞書でsheepを引くとヒツジの鳴き声や関連語などが一気に目に入ってきます。デジタル辞書も便利ですが、紙の場合はページを開くだけでざっと情報が入るのが助かります。みなさんもぜひ紙辞書の魅力を改めて感じてみてくださいね。今年も本コラムのご愛読、よろしくお願いいたします。


第97回 「決定的証拠」

smoking gun 決定的証拠

This e-mail can be the smoking gun for the prosecutors to indict him.

このメールは検察側が彼を起訴する上で決定的証拠になるかもしれません。

 今年最後のこのコラムではsmoking gun(決定的証拠)という表現をご紹介しましょう。
 smoking gunは文字通り訳すと「煙が出ている銃」のことで、発砲直後に煙が上がっている様子を表します。そこから派生して「決定的証拠」という意味を持つようになりました。「私は撃っていない」と言っても銃口を見れば煙が残っていますので、それが証拠というわけです。
 この意味はどこから生まれたのでしょうか?グーグルでsmoking gun originとワンスペースを入れながら語源を調べてみるといくつかヒットしました。読んでみると出典はシャーロック・ホームズの「グロリア・スコット号事件」という1893年の作品なのだそうです。そこではsmoking pistolという単語が用いられています。シャーロック・ホームズと言えば、「ギリシャ語通訳」という作品も有名です。
 ちなみに通訳者が出てくる小説や映画というのは探してみるといくつかあります。新潮文庫から出ているジュンパ・ラヒリの短編集「停電の夜に」の中には「病気の通訳」という作品が収められています。他にも「ザ・インタープリター」という映画が数年前にヒットしましたね。10年ほど前にはNHKのドラマ「結婚のカタチ」で女優の藤原紀香さんが通訳者の主人公を演じています。
今年も残すところあとわずか。本コラムをお読みの皆様にとって、来年も幸せな一年となりますよう。



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プロフィール

柴原早苗

柴原 早苗さん
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。 アルク「English Journal」でBBC Newsを監修した後、現在はNHK「ニュースで英会話」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当中。 通訳学校で後進の指導にあたるほか、大学の英語学習サポートルームにて英語学習アドバイザーも務める。 著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)。「放送通訳者・柴原早苗のブログ」を更新中。