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放送通訳者直伝!すぐ使える英語表現

第170回 「大喜びして」


like a dog with two tails 大喜びして


Since she was qualified to enter the tournament, she was like a dog with two tails..


(彼女はトーナメントの出場資格を得たため、大喜びしていました。)

今年の干支は戌ですので、今回はイヌが出てくる英語表現です。「大喜びして」は英語でlike a dog with two tailsと言います。イヌはうれしいことがあれば尻尾を振りますが、尻尾が2本あれば喜びの感情も2倍になりますよね。そのようなニュアンスです。

ただ、辞書でdogを引くと、むしろマイナス感漂う表現が多く見受けられます。たとえばrain cats and dogsは「土砂降り」、dog's dinnerは「めちゃくちゃ」、dog eat dogは「私利私欲の戦い」です。電子辞書の成句検索でdogを入れると大量に出てきます。

ところでオンラインのOxford Learner's Dictionariesでdogを入力したところ、南アフリカ英語も出てきました。be in the dogboxはbe in the doghouseと同義で、「非難の的になって」という意味です。世界にはたくさんのローカル英語があることに気づかされます。


第169回 「保留されて」

on ice 保留されて

They have put their holiday plan on ice since they needed to adjust their schedule.

(スケジュールの調整が必要となったため、彼らは旅行計画を保留しました。)

on iceは「保留されて」という句動詞で、計画などが延期される際に用いる表現です。19世紀後半ごろから使われている略式フレーズです。なお、ice自体は古代からある単語で、一説によると西暦900年よりも前に誕生したのだそうです。on iceは文字通り「氷上で」という意味もありますし、アルコールなどを「氷で冷やして」という語義も存在します。

ところで皆さんはクリスマス、どのように過ごされましたか?おいしいケーキに舌鼓を打った方もいらっしゃるでしょう。アイスケーキなどもクリスマスケーキとしておなじみですよね。日本語では「アイスケーキ」と言いますが、英語ではice cream cakeです。ice cakeと言った場合、「板氷(ばんひょう)」、つまり流氷の小さな塊を指すのです。

iceを使った英語表現は他にもあります。たとえばbreak the ice(話の口火を切る)、be skating on thin ice (危険を冒している)などがその一例です。ちなみに私は子どもの頃オランダに暮らしていたのですが、オランダ語でアイスクリームはijsでした。ドイツ語ではEisですが、フランス語はglace、イタリア語はgelatoです。調べてみたところ、スウェーデン語ではglassと言うそうです。頭文字がgで始まるあたり、何か共通点が言語学的にあるのかもしれませんね。興味深いところです。


第168回 「大盤振る舞いをする」

push the boat out 大盤振る舞いをする

Since there was a sharp increase in sales, the president decided to push the boat out.

(売り上げが大幅に伸びたため、社長は大盤振る舞いをしようと決めました。)

push the boat out は「大盤振る舞いをする、気前よくお金を払う」という意味です。主にイギリスで使われる略式表現です。お祝いや娯楽などにお金を使う様子を表します。

そもそもボートというのは一人で陸から移動させることができません。人の助けを借りてようやく漕ぎ出すことができます。そこから少しずつ意味が転じて、イギリス海軍で用いられるようになったそうです。海軍での意味は「人にアルコールをおごる」というものでした。

英語には今回ご紹介したフレーズ以外にも、海や船舶などにちなんだ表現が色々とあります。たとえばrock the boatは「波風を立てる」、navigate the difficult meeting (難しい会議をうまく処理する)、jump ship (組織を離れる)などです。考えてみれば、日本語にも「大船に乗ったつもりで」「船頭多くして船山に上る」などがありますよね。

ところで千葉県船橋市の地名由来は、市内を流れる「海老川」にまつわるものだそうです。その昔、橋を渡すのが難しかったため、小さな船を数珠つなぎのようにして橋の代わりにしたと市のHPには出ています。 


第167回 「素直に認める」

make no bones about ...~を素直に認める、~について率直に言う

I saw her going out with a new boyfriend so I asked her. She made no bones about it.

(新しい彼氏と歩いていたので彼女に聞いてみました。率直に認めていましたね。)

make no bones about ... の語源には諸説あるようです。中でも有力なのは「サイコロ遊び」から来たというもの。サイコロは昔、骨から作られていました。ただ、実際のところ、ネイティブスピーカーもこの表現の成り立ちについてはあまり知らないとインターネットの各ページには出ています。

boneを辞書で引くと、こうした珍しいフレーズが結構ありました。たとえばa bone of contention(争いの種)、throw ... a bone(人に多少の援助をする)、to the bone (節約などがぎりぎりまで)などです。「からからに乾いた」はbone-dryと言います。形容詞です。

ところで私は昔から辞書引き遊びが好きで、今でも紙辞書を広げてはどんどん「脱線」しています。たとえば今回のboneの場合、最後のeを他の母音にしたらどのような単語があるか調べるのです。bonaから連想してbonafide(真実の)、boni→bonito(カツオ)、bono→U2のBonoという具合。uならbonusですよね。私にとって既知の単語をあらためて引き直すことそのものがbonusです。


第166回 「簡単に解決できる問題」

low-hanging fruit 簡単に解決できる問題

My classmate thought it was a low-hanging fruit. In fact, it was much harder than originally anticipated.

(クラスメートは簡単に解決できる問題だと思っていました。けれども実は当初の予想より難しかったですね。)

low-hanging fruitは文字通りの訳では「低い所にぶら下がる果実」ですが、比ゆ的な用法もあります。今回ご紹介するのは「簡単に解決できる問題」という意味です。各種辞書サイトを調べると、この表現は1980年代に誕生したようです。投資関連の分野では「投資チャンスとして簡単に買収できる企業」という語義もあります。

ところで「果物をもぎ取る」はpluck off fruitと言います。pluckは楽器の弦をかき鳴らすときにも使う単語です。一方、fruitは動詞用法もあり、That tree fruits early.は「あの木は早く実を付ける」という意味です。vegetableやsaladは動詞で使えませんが、fishは動詞になりますよね。

hangingと言えば、私はイギリスのパブが好きで、お酒は飲めないものの、パブの建物外に飾られたhanging basketに魅了されます。GoogleでUK pub hanging-basketと入れて画像検索をすると、美しいパブの写真が出てきます。真冬でも花を飾るイギリス。そろそろクリスマスの飾りが華やかな頃です。



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プロフィール

柴原早苗

柴原 早苗さん
放送通訳者。獨協大学・順天堂大学非常勤講師。 上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。 ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。 NHK「世界へ発信!ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。 ESAC(イーザック)英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。 通訳学校にて後進の指導にあたるほか、大学での英語学習アドバイザー経験も豊富。 著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)、「英検分野別ターゲット英検1級英作文問題」(旺文社、2014年:共著)。 「放送通訳者・柴原早苗のブログ」 http://sanaeshibahara.blog.
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