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放送通訳者直伝!すぐ使える英語表現

第133回 「優位性を保つ」

maintain an edge against ... ~に対する優位性を保つ

We should put customers first so that we can maintain our edge against our competitors.

(競合他社よりも優位でいるために私たちはお客様を第一にすべきです。)

maintain an edge against ... は「~よりも優位でいる、~に対する優位性を保つ」ということです。edgeは「端、縁」という意味のほかにan edgeと不定冠詞を付けることで「優位、強み」という意味も持ちます。edge自体はドイツ語のEcke(端)から来ています。

この表現に初めて出会ったのはAMラジオのAFN (American Forces Network)でした。AFNは米軍向け放送で、軍関連の告知番組もあります。その中でカーター国防長官が"We need to maintain our edge"と述べていたのでした。ちなみにカーター国防長官のフルネームはAshton Carter (アシュトン・カーター)ですが、アメリカのラジオやテレビニュースではAsh Carterとニックネームで読み上げることも多いようです。

ところでロンドンの北西部にEdgwareという地区があります。ロンドンの端にあるのでedgeと関係があるのではと思い、調べてみました。が、語源は「端」ではなく、サクソン時代のことば"Ecgi's weir"から来たのだそうです。Ecgiは人名で、weirは「川の堰(せき)」です。魚を取るためにEcgiが堰を作ったのではと言われています。現在のEdgwareはロンドン地下鉄Northern Lineの終点。ユダヤ系住民やヒンズー教徒、イスラム教徒なども多く暮らす多文化共生地域です。


第132回 「動かぬ証拠」

hard-and-fast evidence 動かぬ証拠

In order to write a good essay, you must use hard-and-fast evidence to support your claim.

(良いレポートを書くためには、動かぬ証拠を用いて自分の主張を裏付けねばなりません。)

hard-and-fast evidenceは「動かぬ証拠」という意味です。この語が誕生したのは19世紀後半で、海洋関連の用語から来ています。船舶がhard-and-fast状態である場合、その船がしっかりと固定されている様子を表します。つまりここで使われているfastは「速い」の意味ではなく、fasten your seat beltのように「留める」の意味から派生しているのですね。

今回この表現をご紹介するにあたり、hardを改めて辞書で引いてみました。中学校で学ぶ単語hardにも色々な意味があることがわかります。しかも私にとってのオドロキは鉛筆の「H」や「HB」がhardおよびhard blackの頭文字であったことでした!今まで何気なく使っていたのにまったく知りませんでしたね。気になったので、鉛筆メーカーのウェブサイトでさらに調べたところ、鉛筆の芯にはHやHB、B以外にFもあると書かれています。Fはfirmの頭文字で、HとHBの中間の濃さおよび硬さを持つのだそうです。

そういえば通訳の勉強をしていたとき、私の恩師が「速記者用ボールペン」が通訳のメモ取りには使いやすいとおっしゃっていました。ボール径が1.0という太字なのですが、インクの出がスムーズなので、どんどんメモをするにはうってつけなのですよね。


第131回 「よそよそしい態度」

give the cold shoulder to ...  ~によそよそしい態度を見せる

Have I done something wrong? I don't know why he gave the cold shoulder to me.

(何か悪いことしたのかしら?なぜ彼がよそよそしい態度をとるのかわからないわ。)

今回ご紹介するのはgive the cold shoulder to ... (~によそよそしい態度を見せる)です。giveはturnやshowで置き換えることもできます。cold shoulder 自体は話し言葉で「冷たい態度、冷遇、無視」という意味です。語源は19世紀の文学作品とされていますが、具体的にどの作品が最初にこのフレーズを用いたかは定かでありません。日本語では「冷や飯を食う」と言いますので、「冷たい」という意味では共通点がありますよね。なお、「~から冷遇される」はget the cold shoulder from ... となります。

ところで英語圏では「わからない」という意味を示すボディランゲージとしてshrug one's shouldersという表現があります。これは両肩をあげ、手のひらを上に向けて両手を広げる動作です。日本語では「肩をすくめる」と訳します。ほかにもshoulderを用いたフレーズではrub shoulders with ...(有名人などと交わる)、a shoulder to cry on (悩みを聞いてくれる人)、put one's shoulder to the wheel(本腰を入れて仕事などをする)などがあります。

最近私は肩甲骨の痛みによる肩こりがあり、整体院のお世話になっています。「肩がこる」はhave stiff shoulders、「肩甲骨」はshoulder bladeです。「肩甲骨」は医学用語ですとscapulaまたはomoplateと言います。漢字なら部位がわかりますが、英語は難しいですね。その都度暗記です。


第130回 「停滞期間」

the doldrums 停滞期間、スランプ

Finally the team escaped the doldrums by scoring three goals against their biggest rival

(最大のライバルを相手に3得点を決めることで、チームはスランプからようやく脱することができました。)

doldrumsは「停滞期、スランプ」という意味ですが、海事用語では「無風帯」という語義もあります。これは赤道付近の海域で風が吹かない地帯のことです。オックスフォード現代英英辞典で調べると、赤道でこのような状況に見舞われた帆船は航海を続けることができず、風不足で立ち往生するとの説明がありました。

doldrumsの語源は定かではありませんが、リーダーズ英和辞典にはdullとtantrumがつながった語なのではと出ています。dullは「鈍い」、tantrumは「癇癪」ですよね。

doldrumsの用法として覚えておくべき点は、定冠詞のtheを必ず付けるということです。ほかにもたとえばShe is in the doldrums.(彼女は気がふさいでいる)、The economy remains in the doldrums.(経済は停滞期にある)といった用法もあります。

ところで私は最初doldrumsという語を耳で聞いたとき、何かdrums(ドラム)から来た単語だと思っていました。そこで電子辞書でdrumが付く語を調べたところ、色々あることがわかりました。珍しい語ではhumdrum(平凡な)、panjandrum(大将、御大)がありましたし、その一方でニュースでは時々conundrum(難問)という単語も出てきます。一つの語をきっかけに、ぜひ皆さんも楽しみながら単語調べをしてみて下さいね。


第129回 「激しくなる」

hot up 激しくなる

The debate between the presidential candidates are really hotting up .

(大統領選候補者たちの討論はどんどん激しくなっています。)

hot upは「激しくなる」という意味で、主にイギリスで使われる略式表現です。heat upと同じ意味で用いられます。辞書でhotを引くと「暑い、激しい、熱心な」という形容詞が冒頭に出てきますが、じっくりと辞書を読み進めると、動詞としてこの表現が紹介されているのです。なお、「激しくなる」以外には「火の勢いを強める、~を温める」という意味もあります。

今回私がこの表現に出会ったのはCNNのスポーツニュースでした。hotのような基礎単語にも動詞としての用法があったことに、改めて言葉の奥深さを感じます。一方、こうなると今度は反対語のcoldにも動詞用法があるのか気になるのですね。早速調べてみたところ、coldは「冷たい」などの形容詞、「寒さ」などの名詞、そして「完全に」という副詞のみが出ており、動詞としての用法はありませんでした。ちなみに「完全に」という意味でのcoldは主にアメリカで使われており、She learned her lines cold.(彼女はセリフを完全に覚えた)という例文が出ています。

ところでhotを調べた際、辞書のページをめくっているとhot-housing(幼児英才教育)、hothead(せっかちな人)、hot potato(難局)、hotair(でまかせ)などもありました。こうした新たな発見があるがゆえに、紙辞書遊びについつい興じてしまいます。



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プロフィール

柴原早苗

柴原 早苗さん
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。 アルク「English Journal」でBBC Newsを監修した後、現在はNHK「ニュースで英会話」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当中。 通訳学校で後進の指導にあたるほか、大学の英語学習サポートルームにて英語学習アドバイザーも務める。 著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)。「放送通訳者・柴原早苗のブログ」を更新中。