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放送通訳者直伝!すぐ使える英語表現

第151回 「途中で放棄する、中途半端でやめる」

drop the ball (途中で放棄する、中途半端でやめる)

Since you wanted to complete your PhD, don't drop the ball now. Otherwise, you would regret it.

(博士号を終えようと思っているなら、途中で放棄してはいけないよ。さもないと後悔するから。)

drop the ballはアメリカで主に使われる略式表現です。「途中で放棄する、中途半端でやめる」の他に、「へまをする」という意味もあります。もとは野球から来たフレーズで、試合中にボールを落としてしまう様子から生まれています。

野球から誕生した表現は他にもあります。ballpark(野球場)を使った表現にはballpark figure (概算)がありますし、ball game(野球)も、This is a different ball game(これはまた話が別だ)といったフレーズも存在します。そういえば日本でも相撲関連の言葉がありますよね。「序の口」や「がちんこ勝負」などがその一例です。

ballは12世紀ごろに誕生した語で、この時期の英語は言語学的に言うと「中英語」です。フランス語でボールはballe、ドイツ語ではBallとなり、英語と似ているのがわかります。ちなみにサッカーの年間最優秀選手に贈られる名誉ある「バロンドール」はBallon d'Or(黄金の球)という綴りで、フランス語です。

辞書の注意書きを見たところ、baseball, basketball, golfballなどは一語ですが、テニスだけはtennis ballと2語になります。こうしたちょっとした注意点も学習者向け辞典の解説ならではですよね。


第150回 「分相応の生活をする」

cut one's coat according to one's cloth (分相応の生活をする)

I wanted to buy an expensive car but I came to a conclusion that I must cut my coat according to my cloth.

(高い車を買いたいと思っていましたが、分相応の生活をしなければならないとの結論に至りました。)

cut one's coat according to one's clothは文字通り訳せば、「自分の布に応じて自分のコートを裁断する」という意味で、「分相応の生活をする」ということです。大修館書店の「ジーニアス英和辞典」によれば、忠告をする際に使われるとあります。他の辞書を引いたところ、主にイギリスで使われる略式表現と出ていました。

「順応して生きるべし」という意味の表現は他にもあります。たとえばWhen in Rome, do as the Romans do.(郷に入っては郷に従え)やStretch your legs according to your coverlet.(掛け布団の長さに合わせて脚を伸ばせ)、Better bend than break.(折れるより曲がった方がまし)などです。日本語でも「長い物には巻かれよ」「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」などがありますよね。いずれも「中庸」を勧めることわざです。

ところで私は今回の執筆にあたり、coatを英和辞典で引き直し、一通り語義を読み直してみました。coatはcoteと同音であることや、他の用例も参考になっています。たとえばa heavy coat(厚手のコート)、a light coat(薄手のコート)なども使いこなしたいところですよね。なお、少し古風な用法としてcoatには「上着、ジャケット」という意味もあり、A coat and tie are required(上着とネクタイをお召しください)との例文も辞書には出ています。こうして「ついでに」調べてみると、改めて発見がありますよね。


第149回 「難しい選択」

tough call (難しい選択)

It was a tough call, but in the end, I chose what I wanted to do.

難しい選択でしたが、最終的にはやりたいことを選びました。)

今回ご紹介するtough callは「難しい選択、困難な決定」という意味です。callは中学校で学ぶ基本単語ですが、辞書を引いてみると実にたくさんの語義があることがわかります。手元にある「ジーニアス英和辞典」(紙版)でcallを引き、読み進めてみると、名詞のかなり下の方に略式表現として「決心、決定」という意味が出ていました。make a call(決定する)、It's your call(それは君が決めることだよ)、It's anybody's call(はっきりしたことを言うのは難しいね)などといった表現があるのですね。tough call自体は主にアメリカでよく使われるようです。

ところでtoughの原義は「折れにくい」という意味です。toughには「難しい」「厳しい」「(肉体的に)頑丈な」などのほかに、「(肉などが)固い」という意味もあります。This steak is too tough(このステーキは固すぎる)という具合です。一方、tough-loveは「愛のむち」、a tough part of town(街の物騒な地区)など、多様な意味があることもわかります。

こうして既知の単語も改めて辞書を引くと色々と発見がありますよね。


第148回 「大げさな行動をとる」

ham it up (大げさな行動をとる)

The therapy dog has her own website with photos of her hamming it up.

(そのセラピー犬は自分のウェブサイトもあり、大げさな仕草の写真も掲載されています。)

 ham it upは「大げさな行動をとる」という熟語で、私が初めてこのフレーズに遭遇したのは放送通訳のニュースでした。元のニュースの舞台はサンフランシスコ。「セラピー犬」ならぬ「セラピー豚」が空港で大人気という話題だったのです。クリスマスの時期、空港はどこも混みますよね。そのような中、セラピー・ピッグが登場したことで、大行列をなす人々も少しホッとした様子がそのニュースでは描かれていました。

 hamは食べ物の「ハム」ですが、略式表現では「(演技過剰の)大根役者」という意味も有します。こちらはThe Hamfat Manというミュージカルから来たもので、主人公は不器用な男性です。Hamfatがhamfatterに転じ、「ham=大根役者」と変化したようです。ちなみに「アマチュア無線家」を「ハム」と言い、やはりスペルはhamです。こちらはamateurのamがhamと発音が似ていることから生まれた言葉です。

 この原稿を書くにあたり、紙辞書をいつものごとく眺めていると、hamの下の語義にham-and-egger(並みの人間)という言葉がありました。他にもham-handed(手先が不器用な)、hammy(演技が大げさな)なども出ています。食べ物にも色々な意味があるのですね。


第147回 「結論、印象」

takeaways (印象、結論)

Having looked at the situation, we should make a clearer goal. That's one of my takeaways from the meeting.

(状況を見たところ、もっとはっきりしたゴールを設定すべきでしょう。それが会議から私が抱いた印象です。)

今回お届けするのはtakeawaysという単語で、意味は「印象、結論」です。会議や話し合いなどを経て抱いた結論や印象、あるいは行動指標などを指します。口語ではよく使われるフレーズで、CNNニュースでも頻繁に耳にします。通常、takeawayにsを付けた複数形です。

ちなみにイギリス英語の場合、takeawayはアメリカ英語のtakeout、つまり「持ち帰り」を指します。Chinese takeawayであれば「持ち帰りのできる中華料理店」を意味しますし、I got Indian takeaway yesterday.は「昨日はインド料理のテイクアウトを入手した。」です。

ところで手持ちのジーニアス英和辞典(紙版)でtakeを引くと、語義や関連表現だけで4ページ半にも及びます。それだけtake一つを取ってみてもたくさんの意味があり、句動詞が存在しているのがわかります。先ほどご紹介したのはtakeawayと一語でしたが、take awayの句動詞を読んでみると、「(子供)を(学校に)いかせないようにする」という意味もありました。こうして「ついでに」調べてみると、意外な発見があります。



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プロフィール

柴原早苗

柴原 早苗さん
放送通訳者。獨協大学・順天堂大学非常勤講師。 上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。 ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。 NHK「世界へ発信!ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。 ESAC(イーザック)英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。 通訳学校にて後進の指導にあたるほか、大学での英語学習アドバイザー経験も豊富。 著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)、「英検分野別ターゲット英検1級英作文問題」(旺文社、2014年:共著)。 「放送通訳者・柴原早苗のブログ」 http://sanaeshibahara.blog.
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