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放送通訳者直伝!すぐ使える英語表現

第121回 「ひどくたたかれる」

get the stick ひどくたたかれる

He got the stick from his teammates because he was always late for work.

彼はチームメートからひどくたたかれました。いつも仕事に遅刻してきたからです。

get the stickは「ひどくたたかれる、厳しい処置を受ける」という意味です。間のtheは省いてget stickでも同じ意味になります。

stickは元々ドイツ語のsteckenから来た単語です。stick自体は「(切り取った、または枯れた)枝木」という意味で、branchやtwigのようにまだ付いたままのものとは異なります。こうした話題も学習者向け英和辞典(大修館書店「ジーニアス英和辞典」など)には詳しく出ていますので、ぜひ調べたついでに目を通してみて下さいね。「ついで学習」の積み重ねが大きな蓄積となっていきます。

ところでA.A.ミルンの児童小説「くまのプーさん」では「プー棒投げ」という遊びが出てきますが、これは英語でPoohsticksと言います。物語の舞台は「100エーカーの森」。エーカー(acre)はヤード・ポンド法を表す単位ですよね。100エーカーをメートル法に直すとおよそ40万平方メートル。うーん、「40万平方メートルの森」では何とも味気なく思えてしまいます。日本でも「6畳の部屋」と言う方が「約10平方メートルの和室」というよりしっくりきますよね。数え方一つをとってもそれぞれの文化が反映されています。

stick一つからこうしてあれこれ自由に想像するのも発展学習です。ぜひ皆さんも楽しみながら勉強を続けて下さいね。2016年もよろしくお願いいたします!


第120回 「最新の」

red-hot 最新の

The statistics you have given me is indeed a red-hot information!

教えてくれた統計は実に最新の情報だね!

red-hotは形容詞で「最新の」という意味です。ニュースや情報などが最も新しいと言う際に使う表現です。私がこのフレーズに出会ったのはCNNのインタビューでした。ニュース英語にはこのように口語的な表現もたくさん出てきます。新たな表現に遭遇するたびに、私にとっては勉強となっています。

red-hotというのは文字通り、何かが熱を持ったり熱くなったりすれば赤く色が変わることを表します。この表現が誕生したのは14世紀ごろだそうです。ちなみに1980年代にアメリカ・カリフォルニア州で誕生し、2012年にはロックの殿堂入りを果たしたのがバンドRed Hot Chili Peppers(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)です。

ところで日本語でも色を使った表現はたくさんとありますよね。「青二才」「真っ青になる」「真っ赤なウソ」「腹黒い」という具合です。ぜひ皆さんも英語の辞書で色をいくつか引いてみて下さい。それぞれの色がどういうニュアンスを示すのかも、学習者向け英和辞典であれば出ているはずです。色の世界を楽しんでくださいね!


第119回 「準備中の」

in the pipeline 準備中の、進行中の

As for our new product in the pipeline we will coordinate with other teams so that we can come up with a sales strategy.

準備中の新商品に関しては、販売戦略を打ち出せるよう、他のチームと調整します。

in the pipelineは会話でよく使われる表現で、「準備中の、進行中の」という意味です。パイプラインとは石油などを運ぶ輸送管のことで、そこを通っている状況からこのような語義になりました。

さて、pipelineはpipeとlineが組み合わさった言葉ですが、辞書でpipeを引いてみると、たくさんの意味を持つことがわかります。私が愛用する大修館書店「ジーニアス英和辞典第5版」には類語としてtubeを紹介しています。この違いが何か気になりインターネットで検索したところ、アメリカの工具関連のサイトが見つかりました。説明を読んだところ、pipeは「水や油など液状のものを運ぶもの」であり、「内径で容量を量る」と出ています。一方、tubeは外径で量るのだそうです。工具の世界ではこのように違いを打ち出しているのですね。

ジーニアスの例文を読むと「パイプをくわえて」はwith a pipe between one's lipsとあります。一方、pipeの動詞の意味の一つに「甲高い声で言う」というものがありました。「袋やチューブを絞ってケーキに飾りをつける」もpipeだそうです。


第118回 「最後の最後で決める」

pull an audible 最後の最後で決める

She couldn't decide at first but pulled an audible and went ahead with her plan.

彼女は最初決断できなかったものの、計画を実行することを最後の最後で決めました。

pull an audibleは「最後の最後で決める」という意味です。もともとはアメリカンフットボールから来たフレーズで、今回ご紹介したこの表現も主にアメリカでよく使われるようです。
ちなみにaudibleそのものは「聞こえる、聞き取れる」という意味で、反対語はinaudibleです。私は普段、英単語を辞書で引いた際、必ず反対語も確認するようにしています。特に反対語はin-やun-で始まることが多く、うろ覚えということもよくあるのですね。その都度チェックすることは、自分にとっても大事な確認作業です。

さて、英語にはスポーツから来た表現がほかにも色々とありますよね。たとえばabove par(標準以上である)の由来はゴルフ、the ball is in your court(決定権はあなたにある)はテニスから生じたものですし、by a nose(少しの差で)は競馬用語です。英語学習の際にはぜひひとつの表現をきっかけに、「ではほかにどのようなものがあるだろう?」と想像力を働かせて調べてみて下さい。きっとみなさんの表現力アップに寄与するはずです。


第117回 「簡単なこと」

cakewalk 簡単なこと、容易なこと

Don't worry! I can handle it. The task seems like a cakewalk to me.

心配しないで!できるから。私にとっては簡単なことに思えるよ。

cakewalkはアメリカの略式表現で、「簡単なこと、容易なこと」という意味です。もとは19世紀のアメリカ黒人の競技で、一番優美な歩き方の組が賞にケーキをもらうという内容だったそうです。その後意味が転じて19世紀後半には「簡単なこと」という語義になりました。ちなみに「ケークウォークで歩く」という動詞の用法でもcakewalkは使われます。

  ケークウォークと言えばドビュッシーのピアノ曲が有名ですよね。「ゴリウォーグのケークウォーク (Golliwogg's Cakewalk)」という題名で、組曲「子供の領分」の中に入っています。ドビュッシーは1908年に当時3歳の娘のためにこの曲を作りました。ゴリウォーグは絵本に出てくる黒人の男の子の人形だったそうです。興味のある方はぜひ動画サイトやCDなどで聞いてみて下さいね。

 たった一つの単語からいろいろなことに関心を抱けるのが英語学習のだいご味です。みなさんもぜひ楽しみながら勉強を続けていって下さい。



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プロフィール

柴原早苗

柴原 早苗さん
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。 アルク「English Journal」でBBC Newsを監修した後、現在はNHK「ニュースで英会話」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当中。 通訳学校で後進の指導にあたるほか、大学の英語学習サポートルームにて英語学習アドバイザーも務める。 著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)。「放送通訳者・柴原早苗のブログ」を更新中。