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放送通訳者直伝!すぐ使える英語表現

第125回 「引き留める」

buttonhole 引き留める

I was in a rush but he buttonholed me about his new plans.

(私は急いでいたのですが、彼は新しい計画について私を引き留めました。)

buttonholeは「ボタン穴」のことですが、動詞では「引き留める」という意味があります。もともとはbuttonholdが正しく、それがなまってbuttonholeになったと「リーダーズ英和辞典」には書かれています。なぜ「引き留める」という意味になったかと言いますと、「その人の注目を集めるために、その人物が着用している洋服のボタン穴をつかむ」という状況があったからだそうです。「引き留める」という意味になったのは19世紀後半でした。

ところで「ボタン」という日本語の語源に関しては諸説ありますが、ポルトガル語のbotaoが一番有力のようです。また、「花のつぼみ」を表すフランス語から来たという説もあります。一方、自動車レースのF1界ではJenson Buttonさんが有名ですが、新聞表記は「ジェンソン・バトン」さんです。そういえばマイクロソフトのBill Gates氏は「ビル・ゲイツ」氏ですが、アメリカの元国防長官Robert Gates氏は「ロバート・ゲーツ」氏です。同じスペルでも日本語の書き方が異なるのは興味深いですよね。

「シャツのボタンをかける」は英語でbutton a shirtとなり、buttonは動詞になります。「シャツのボタンを外す」はunbutton a shirtです。「ちょっとした誤解」という意味で用いられる「ボタンの掛け違い」は英語でa slight misunderstandingと意訳すると良いでしょう。


第124回 「とても無理」

cry for the moon とても無理

You say you want to go to Saturn? That's crying for the moon.

土星に行きたいって?それはとても無理だよ。

前回のこのコラムでは「そんなの簡単(as easy as 123)」をご紹介しました。今回は「とても無理」というフレーズです。英語ではcry for the moonと言います。ないものねだりをすることや途方もない野心を抱く様子を表しています。最近の表現で言うなら「ムリムリムリ!」という感じですね。・・・とここまで書いてふと思ったのが、「なぜ最近はムリを3回繰り返すか?」です。3という数字に何か意味があるのかもしれませんね。この「回数」についても調べたいと思っています。

本題に戻りましょう。cry for the moonはcryの代わりにask, reach, wishを使うこともできます。この表現が初めて使われたのは1800年代半ばで、ディケンズの小説"Bleak House(荒涼館)"にも出ているそうです。

さて、このコラムがアップされる2016年2月8日は暦の上では「新月」です。私の手帳には「大安、先勝」といった六曜のほかに満月と新月の表示があります。私は毎朝手帳を確認する際、月の形も調べています。満月の日になると私は夕方に月を確認するのですが、東の空に大きく輝く月の美しさは息をのむほどです。満月の翌朝の早朝勤務もまだ月明かりがありますので、朝焼け前の暗い夜道もいつもより安心して歩けるのですね。逆に新月の日は早朝も真っ暗です。自然の中で私たち人間は生かされているのだと改めて感じます。


第123回 「そんなの簡単」

as easy as 123 そんなの簡単

A: Smartphones seem difficult. (スマホって難しそう。)
B: Why? It's as easy as 123!(なぜ?そんなの簡単だよ!)



本コラムも今日で123回目となりました。そこでごろ合わせとして今日はas easy as 123をご紹介しましょう。「そんなの簡単」という口語表現です。ほかにもas easy as ABCといったフレーズもあります。日本語では「チョチョイのチョイ」や「朝飯前」などと言いますよね。今風に言うならば「超~簡単!」といったところでしょうか。

日本語ではたとえば「社会学のイロハ」と言いますが、英語でも「イロハ」、つまり「基礎」に当たる言葉をABCで表現します。ちなみに大学1年生向けの初級コースは英語で"101"と言います。たとえばGeography 101と言えば、地理学の授業でも初級コースを指すのですね。この由来は1929年にアメリカのバッファロー大学が履修要綱でそのような数字を割り当てたことが始まりだとされています。英語ではone-oh-oneと発音します。

ところで「朝飯前」のもう一つの同義語に「おちゃのこさいさい」があります。漢字では「お茶の子さいさい」です。「お茶の子」はお茶うけに出すお菓子などのことで、「簡単に食べられるもの」という意味です。「さいさい」は囃子言葉で軽快さを表します。そういえば英語でもIt's a piece of cake.と言いますよね。どちらも甘いものが使われているのが興味深いところです。


第122回 「自分の仕事を熟知している」

know one's onions 自分の仕事を熟知している

He's an excellent staff. He certainly knew his onions.

彼は素晴らしいスタッフですね。確かに自分の仕事を熟知していましたよ

know one's onionsは「自分の仕事を熟知している」という意味です。どちらかというとイギリスでよく使われる口語表現で、一説では1920年代ごろから用いられているそうです。  

ただ、今回原稿の執筆にあたり色々と由来を調べてみましたが、今一つ確定的な説明は見つかりませんでした。その代わり、似たフレーズに遭遇しました。not know beansという表現で、「まったく知らない」という意味です。こちらは19世紀中ごろに登場したものです。beanとは豆のことで、「小さくて価値がないもの」を比ゆ的に表しています。つまり、「そうした小さなことでさえ知らない」というニュアンスから誕生したようです。

ところでonionはカタカナですと「オニオン」と発音しますが、英語では「アニアン」という音に近くなります。学習者向けの「ジーニアス英和辞典」では見出し語の隣に「発音注意」と赤字で示されています。こうした部分をその都度確認しておくのも大切です。

もう一つ、onionskinという語について。こちらは「オニオンスキン紙」という手紙用の薄い紙のことです。玉ねぎからできているわけではなく、薄さを表すためにこのような名前となりました。昔のエアメール用便箋などが代表的ですよね。ちなみに日本で出版されている辞書や聖書、六法全書などは「薄様印刷紙(うすよういんさつし)」という紙を使っています。紙辞書好きな方は英和辞典と英英辞典を触り比べてみると違いがわかります。


第121回 「ひどくたたかれる」

get the stick ひどくたたかれる

He got the stick from his teammates because he was always late for work.

彼はチームメートからひどくたたかれました。いつも仕事に遅刻してきたからです。

get the stickは「ひどくたたかれる、厳しい処置を受ける」という意味です。間のtheは省いてget stickでも同じ意味になります。

stickは元々ドイツ語のsteckenから来た単語です。stick自体は「(切り取った、または枯れた)枝木」という意味で、branchやtwigのようにまだ付いたままのものとは異なります。こうした話題も学習者向け英和辞典(大修館書店「ジーニアス英和辞典」など)には詳しく出ていますので、ぜひ調べたついでに目を通してみて下さいね。「ついで学習」の積み重ねが大きな蓄積となっていきます。

ところでA.A.ミルンの児童小説「くまのプーさん」では「プー棒投げ」という遊びが出てきますが、これは英語でPoohsticksと言います。物語の舞台は「100エーカーの森」。エーカー(acre)はヤード・ポンド法を表す単位ですよね。100エーカーをメートル法に直すとおよそ40万平方メートル。うーん、「40万平方メートルの森」では何とも味気なく思えてしまいます。日本でも「6畳の部屋」と言う方が「約10平方メートルの和室」というよりしっくりきますよね。数え方一つをとってもそれぞれの文化が反映されています。

stick一つからこうしてあれこれ自由に想像するのも発展学習です。ぜひ皆さんも楽しみながら勉強を続けて下さいね。2016年もよろしくお願いいたします!



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プロフィール

柴原早苗

柴原 早苗さん
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。 アルク「English Journal」でBBC Newsを監修した後、現在はNHK「ニュースで英会話」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当中。 現在は通訳学校でも後進の指導にあたる。ESAC英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。 著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)。「放送通訳者・柴原早苗のブログ」を更新中。