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放送通訳者直伝!すぐ使える英語表現

第118回 「最後の最後で決める」

pull an audible 最後の最後で決める

She couldn't decide at first but pulled an audible and went ahead with her plan.

彼女は最初決断できなかったものの、計画を実行することを最後の最後で決めました。

pull an audibleは「最後の最後で決める」という意味です。もともとはアメリカンフットボールから来たフレーズで、今回ご紹介したこの表現も主にアメリカでよく使われるようです。
ちなみにaudibleそのものは「聞こえる、聞き取れる」という意味で、反対語はinaudibleです。私は普段、英単語を辞書で引いた際、必ず反対語も確認するようにしています。特に反対語はin-やun-で始まることが多く、うろ覚えということもよくあるのですね。その都度チェックすることは、自分にとっても大事な確認作業です。

さて、英語にはスポーツから来た表現がほかにも色々とありますよね。たとえばabove par(標準以上である)の由来はゴルフ、the ball is in your court(決定権はあなたにある)はテニスから生じたものですし、by a nose(少しの差で)は競馬用語です。英語学習の際にはぜひひとつの表現をきっかけに、「ではほかにどのようなものがあるだろう?」と想像力を働かせて調べてみて下さい。きっとみなさんの表現力アップに寄与するはずです。


第117回 「簡単なこと」

cakewalk 簡単なこと、容易なこと

Don't worry! I can handle it. The task seems like a cakewalk to me.

心配しないで!できるから。私にとっては簡単なことに思えるよ。

cakewalkはアメリカの略式表現で、「簡単なこと、容易なこと」という意味です。もとは19世紀のアメリカ黒人の競技で、一番優美な歩き方の組が賞にケーキをもらうという内容だったそうです。その後意味が転じて19世紀後半には「簡単なこと」という語義になりました。ちなみに「ケークウォークで歩く」という動詞の用法でもcakewalkは使われます。

  ケークウォークと言えばドビュッシーのピアノ曲が有名ですよね。「ゴリウォーグのケークウォーク (Golliwogg's Cakewalk)」という題名で、組曲「子供の領分」の中に入っています。ドビュッシーは1908年に当時3歳の娘のためにこの曲を作りました。ゴリウォーグは絵本に出てくる黒人の男の子の人形だったそうです。興味のある方はぜひ動画サイトやCDなどで聞いてみて下さいね。

 たった一つの単語からいろいろなことに関心を抱けるのが英語学習のだいご味です。みなさんもぜひ楽しみながら勉強を続けていって下さい。


第116回 「~へ出発する」

ship out ... ~へ出発する

Although I like living in the east coast, I'm shipping out west to do my master's degree in California.

東海岸で暮らすのは好きなのですが、カリフォルニアで修士課程の勉強をするため、西に向けて出発します。

ship out ... は「~へ出発する」という意味です。口語表現ですが、アメリカ英語ではよく出てきます。ship out westと言った場合、これは西、つまり西海岸の方を指していることになります。例文の前半に「東海岸」とありますので、文脈から想像することもできますよね。

shipを学習者向け英和辞典で調べると、boatやvesselとの違いが出ています。私が愛用する大修館書店「ジーニアス英和辞典第5版」ではshipの見出しの下に「通例boatより大きくvesselより小さい」とあります。ちなみに「ラクダ」はthe ship of the desertsとも言うそうです。辞書を引いたついでに例文や注意書きを読んでみると、思わぬ発見がありますよね。

なお、動詞としてのshipは列車やトラック、飛行機などを使って貨物を「送る、輸送する」という意味です。名詞では「飛行船」「宇宙船」という語義もあります。熟語では「今の仕事を辞める」がjump ship、「(会社の苦境をよそに)さっさと見限って去る」はleave a sinking shipです。

shipは中学校で学ぶ基礎単語ですが、調べてみると奥が深いですよね。ぜひみなさんも簡単な単語をあえて辞書で引き直し、多様な世界を楽しんでください。


第115回 「ものすごく」

monstrously ものすごく

The actor found the reporter's question monstrously difficult.

その俳優は記者の質問をものすごく難しく感じました。

今回ご紹介するmonstrouslyに初めて出会ったのは、放送通訳の現場でした。CNNではニュースの合間に別番組の予告が流れます。そのとき画面に映ったのは俳優のベネディクト・カンバーバッチ(Benedict Cumberbatch)。映画「SHERLOCK(シャーロック)」で一躍有名になりましたよね。本人のセックスアピールについて記者に問われた際、"I feel monstrously uncomfortable talking about this"と答えています。

monstrouslyはmonster(怪物)から派生した単語です。monster自体の語源はmonstrumというラテン語で、monere(警告する)から来ています。monsterも元は「警告するもの」という意味があり、怪物が神の警告と考えられていたことから、怪物という意味になりました。

monstrouslyにはほかにも「巨大な (gigantic)」という意味もあります。たとえばa monstrously fat animal(巨大な動物)などです。monstrousと形容詞にした場合は、a monstrous sum of money(途方もない金額)、a monstrous wave(巨大な波)という使い方もできます。状況を強調する副詞というのもいろいろあり、興味深いですよね。


第114回  「大勢の」

an army of ... 大勢の

In order to deal with the situation, we need an army of helpers.

状況に対応するため、大勢の助っ人が必要ですね。

 an army of ... は「大勢の」という意味です。a lot of と同じ意味になります。army の語源はarm(武装した)とy(集団)で、army 字体は「軍隊」のことですよね。ただし、「陸・海・空軍」という観点から見た場合、armyは「陸軍」のことになります。ちなみに海軍はnavy、空軍はair forceです。
 今回an army of ... というフレーズに出会ったのも放送通訳現場でした。こうした単語が出てくると、つい「ではnavyやair forceを使った表現は?」と気になります。表現力増強に大切なのは、こうした小さな疑問を解消すること。早速調べたところ、それほど珍しい意味を持つフレーズはなかったのですが、navy beanという単語に惹かれました。こちらは「白インゲンマメ」だそうです。注釈を読むと、「昔米海軍の貯蔵食料だったことから」とあります。そういえば日本には「海軍カレー」というものがありますが、こうして何かの由来がきっかけで単語が生まれることがあるのですよね。
 ところで「非難の嵐」は英語でa barrage of criticismと言います。barrageは「集中砲撃」という意味です。今回のコラム執筆を機会に軍事用語を使った表現をいろいろと調べたくなりました。



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プロフィール

柴原早苗

柴原 早苗さん
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。 アルク「English Journal」でBBC Newsを監修した後、現在はNHK「ニュースで英会話」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当中。 通訳学校で後進の指導にあたるほか、大学の英語学習サポートルームにて英語学習アドバイザーも務める。 著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)。「放送通訳者・柴原早苗のブログ」を更新中。