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21世紀の通訳 -Interpreting in the 21st Century-

第53回 数字

通訳をしているときに、数字が出てくると、処理に苦労します。逐次通訳でも難しいですが、特に問題となるのは同時通訳のときです。事業会社の予算や売り上げ確認の会議などでは、順番に数字を見ていき、目標を達成したか、していないか、また理由はなんなのか、といったことを順番に話していきます。

このような場合は、数字は資料に書いてありますし、「125ミリオン」のように、位取りも日本語に直すことなく話が進んでいく場合が多いので、資料のどこを読んでいるかさえ分かればそんなに難しくはありません。

もちろん資料がない状態で数字が出てくることがあります。「今期の売り上げは125ミリオンドルです」は不自然ではないですが、「日本の人口は125ミリオン人です」とはさすがに言えません。

そのような場合は、日本語と英語では位取りが違うので、苦労することになります。One hundred...と聞こえてきたところで、すぐに100と訳出してしまうと、そのあとにtwenty five millionが続いた場合は、1億2500万と訳さなければならないので、言い直す羽目になります。そのため、最近はいきなり数字が出てきた場合には、まず書き取ってみるようにしています(私はまだ経験が浅いので、同時通訳のときに少し待つというのはとても怖いのですが...)。それとは逆に、数字はとにかく分かった段階ですぐ訳出するというテクニックもあります。例えば元発言が「X党は衆議院では⚪︎議席、参議院では△議席を占めています」であれば、X党は、⚪議席と△議席、衆参それぞれで占めています」のように、数字を先に出してしまうのです。

数字が出てくると、通訳者の負担が増すということは、研究結果でも裏付けられているそうです。私は日本語と英語の通訳で数字が出てきた場合は、ヨーロッパ同時の場合よりも位取りが違う関係で特に難しいと思うのですが、ヨーロッパ言語にも特有の問題があるのかもしれません。これは英語の例ですが、リンカーンによるゲティスバーグ演説はfour scores and seven years agoで始まっています。1 scoreは20年なので、87年前という訳になります。もし原稿がない状態で同通していたら、最初からつまずいてしまいそうですね。ダースが12を表すということは、日本でも(チョコレート菓子のおかげで?)知られていますが、あまり一般的に使われる表現ではありません。

英語では割とよく使われるのでしょうか。例えばオバマ大統領による広島での演説では、We come to mourn the dead, including over 100,000 Japanese men, women and children, thousands of Koreans, a dozen Americans held prisoner.というくだりがありました。


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プロフィール

佐藤 祐大

佐藤 祐大さん
日英会議通訳者。熊本大学英文科卒。 公益財団法人日本英語検定協会に4年半務めたのち、ロンドンメトロポリタン大学に留学し、会議通訳の修士号を取得。 製薬会社、経営コンサル会社での社内通訳者を経て、2016年7月より現職。