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21世紀の通訳 -Interpreting in the 21st Century-

第25回 通訳用語

今年の連載もあと2回ということになりました。欧米ではそろそろクリスマスシーズンということもあり、海外によっては休みに入るので、お仕事が落ち着いてきた方もいるのではないでしょうか。私は忘年会が続くため、昼食に韓国料理のサムゲタンなど消化のよさそうなものを選んで食べています。

今回はこの1年半で学んだ通訳用語についてまとめてみたいと思います。日本で使われているものと、ヨーロッパで使われているものが混在していますが、ご容赦ください。

「通訳者」
まだまだ一般の方は通訳者のことを「通訳」や「通訳さん」と呼びますが、通訳業界や学術界では翻訳者のことは「翻訳」とは呼ばないのだから、「通訳者」と呼ぼうという機運が広がっているようです。

「同通」
同時通訳の略。海外ではsimと略されることもあります。逐次通訳はconsecutive interpretingなのでconsecということも。ちなみにsimultaneousは日本ではほとんどの人が、エージェントの名前になっていることもありsàiməltéiniəsと発音しますが、 sìməltéiniəsという発音もありヨーロッパではこちらで発音する人も多くいます。

「パナガイド」
ウィスパリング通訳のときに利用する機器の名前。ヨーロッパではtour guide system, biduleと呼ばれることも。海外ではクリネックスがティッシュペーパー一般、ゼロックスがコピー機一般をさすように商品名が一般名詞化している...のか、実際この製品しかないのか、いつか調べてみようと思います。

「FIFO」
First in first outの略。同時通訳のときに、聞こえてきた順番に訳すという原則のこと。

「KISS」
Keep it simple and shortの略。同時通訳のときは、あまり複雑な構文を使ってしまうと間違える可能性があるため、一文一文を短く、単純な文にすることが望ましいという考え。

「サイト・トランスレーション」
サイトラと略される。原稿を見ながら他言語で訳出していくこと。

まだまだご紹介したい用語はいくつかありますが、紙面の都合上このへんでやめておきます。ちなみにこの連載は、ワード1枚分と自分の中で決めて書いており、通訳にも活きてくるかもしれないと800字程度でまとまった文を書く練習に使っています。


第24回 Award Ceremony

先週はお休みをいただいて、渡英してきました。ロンドンメトロポリタン大学の会議通訳科を無事修了したので、修了式に出席するためです。

せっかくはるばるロンドンまで行くのだからと、しっかりガウンと帽子をレンタルしました。ヨーロッパの学生の多くも同じことを考えたらしく、みんなしっかりガウンを着ていました。私は一人で行きましたが、彼らの多くは両親とともに参加していました。逆にイギリス人の学生は、学部のときに着たからと、ちょっとフォーマルな格好をしたくらいで、ガウンは着ていませんでした。ハリーポッターの世界ですね。講師陣もガウンを着ており、先生の一人に尋ねたところイギリスでは自分が卒業・終了した大学のガウンを着るそう。写真の真ん中には黄色いガウンを着た先生が1人写っていますが、これはSOASのガウンだということです。持っている学位が修士か、博士かによってもガウンの種類が違います。諸外国にはガウンのようなものはないところもあるため、その場合は適当に色や模様などを選んで着用するようです。

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式の流れとしては、いくつかのスピーチがあったあと、学生が順番に舞台上に呼ばれて、舞台上の総長と握手していく、というものでした。証書の授与はなく(事前に自宅に届いていました)、舞台上を通過するのみでした。全学で一度にとりおこなうには学生の数が多すぎるので、学部ごとに分けて行われましたが、それでも250名ほどの学生がいたため、式自体は2時間かかりました。舞台上でセルフィーを取ったり、ハプニングで帽子が落ちてしまったりと、日本の大学の式典と比べるとずいぶんくだけたことをしている人たちもいました。

ロンドンには8日間滞在しましたが、以前住んでいたところでもあるので、特に観光などはせず、修了式に出る以外は大学の授業を覗きにいったり、友人と近況報告をしたりして過ごしました。面白かったのは友人から聞いたスターバックスネームの話です。イギリスではコーヒーを注文するとスターバックスの店員に名前を聞かれます。色々な人種の人が店員でもお客さんでもいて、英語が必ずしも母語ではないため、誰が何を頼んだのか分からなくなってしまうのでしょうか。自分のドリンクが用意されると名前を呼ばれます。私は名前が簡単なので、いつも自分の名前を言っているのですが、今回一緒にロンドンでスタバに行った日本人の友人は「Amy」というスターバックスネームを持っているそう。彼女の日本の名前はうまく聞き取ってもらえないし、綴りを説明するのが面倒だからという理由だそうです。こんなところにも、多文化なロンドンが表れていますね。

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第23回 フィードバック

私が通訳という仕事で好きなところは、明確なフィードバックがもらえるところです。状況によっては、通じなければコミュニケーションが止まってしまいます。色々と考えて、訳出をしたとしても、自分の選択の妥当性を説明するような機会は与えられません。通じなければ意味がないのです。そういう、シンプルなところが好きです。

先日、よく通訳を担当する外国人役員からフィードバックをいただきました。今までは学校でフィードバックをもらうことはありましたが、顧客から面談のようなかたちでフィードバックをもらうことはなかなかないので、とても参考になりましたし、やる気につながりました。学校でのフィードバックは、先生が英語も日本語も両方分かるので、訳が正確か、訳語の選択は妥当かといった点が中心となりますが、クライアントからのフィードバックはまた視点が違います。特に日→英の場合は、クライアントは全く日本語は分からないということが多いので、フィードバックは正確性以外の部分になります。以下、3点に関して、フィードバックをもらいました。

1、 発音が明瞭
私は中学から英語を始めたので、発音には限界がありますが、発音がはっきりしていることが採用の決め手になったということでした。日本語の通訳を聞いていても、滑舌が悪かったり、発音が不明瞭だと聞いていてストレスになりますよね。

2、 何でも訳そうとする
「冗談でそんなに何でもかんでも訳さなくていいと言うこともあるけれど、実は雑談も訳してくれるのはありがたい。私は言葉が通じないところで仕事をするのは初めてだから、雑談をすることで身近に感じてもらいたいと思っている。分からない言葉を聞いている時間はこんなに長く感じるのかということを初めて知った。みんなが冗談を言って笑っているのを聞くと、やはり何がおかしいのか気になるから、文化的にその冗談が私には面白くなかったとしても、訳してみようと試みてくれることがうれしい。他にも経験がある人はたくさんいるけれど、あなたは特に何でも訳そうとしてくれるから、採用した」と言っていただきました。これは自分の留学経験がものを言っているのかもしれません。留学時代には周りが自分の分からない言語で話していて、疎外感を覚えたこともあったので、無意識にクライアントがそのような気持ちにならないように心がけているのでしょうか。

3、 新しいことを学ぼうとしている
これは通訳者であれば当たり前のことなのですが、役員からすると営業・マーティングから物流・財務など、色々な分野のことを学んでいるのに感心したようです。確かに、以前会社勤めをしていたときは、自分の担当以外のことは関係部署にふればいいと線引きをしていました。今は別の意味での線引きをしていますが(例えば、自分に話しかけられても、他の人に話を振ってしまうようになりました。何だか、自分の話で時間を取ってしまうと落ち着かなくなってしまいます)、何でもかんでもかじっている姿勢が新鮮だったのかもしれません。


第22回 スキルチェック

駆け出しの通訳者にとって、スキルチェックは避けて通れない道です。エージェントに登録する場合もスキルチェックが必要ですし、社内通訳者のポジションに申し込むときも、スキルチェックがある場合があります。

資料を使って準備ができる実際の案件と比べて、スキルチェックでは初見の素材をうまく通訳する能力が求められます。あくまで私個人の見解ですが、おそらく「ここを見ているのではないか」というところについて今回は書いてみたいと思います。

・話の流れが取れているか
遂次でも同時でも、話の流れが取れているかがまず見られていると思います。まずは逐次通訳のスキルチェックを受けることになるでしょうが、大体イントロがあり、意見の主張、それから具体例と続きます。特にButやHoweverなどの接続詞には注意する必要があります。また、「ポイントは3つあります」などの前置きがあり、それぞれのポイントを述べることが多いようです。

・数字
あまり数字ばかり羅列されることはないと思いますが、「欧州連合は分担して16万人の難民を向こう5年間で受け入れることにしました」「「日本政府は2020年の東京オリンピックまでに年間で観光客2,000万人を目指しています」など、数字がいくつか使われます。これらの例は時事を知っていれば聞き逃しても分かってしまいますが、実際はもっと「○○産業は年間○○億円の規模」など、一般的には把握していないような数字が使われます。

・訳しにくい表現
日英、英日どちらの場合でも、訳しにくい表現が出てくることがあります。例えば「おもてなし」とか、「ブラック企業」など、日本に独特のコンセプトや、「○○調査委員会」や「△△協会」などの固有名詞が出てきます。これらは定訳があることもありますが、おそらくどのように切り抜けているのかを見られているのではないかと思います。

・プレゼンテーション能力
もちろん意味が正確に取れているかが第一でしょうが、発音や声の聴きやすさなども見られているのではないでしょうか。「あー」「えー」などついつい言ってしまいますが、聞く側にとっては気が散るものです。小学生のとき、校長先生があまりにも「おー」などと言うので、内容そっちのけで何回「おー」と言うか数え始めてしまった経験はありませんか?

本番に強くなることが大事ですので、通訳学校など訳すときに毎回本番のつもりでやるといいかもしれません。特に最初は「うまくできるか分かりませんが」とか、途中で「分からなくなってしまいました」と言ってしまう人がいますが、まずは分かったところだけでも形を整えて訳出する練習をするのがいいと思います。


第21回 Tough Choices

最近、米国の大統領選で共和党の指名争いのニュースが世間を賑わせていることもあり、キンドルにヒューレット・パッカードの元CEO、カーリー・フィオリーナ氏の自伝「Tough Choices」をダウンロードして、読破しました。これから通訳者を目指そうと考えている方には、おすすめの一冊です。私はグローバル企業で社内通訳者の仕事を始めて半年になりますが、その間に学んできた単語がこれでもかというほど使われています。表現は平易で読みやすく、内容も面白いため、サクサクと読み進められると思います。ビジネスや会計の用語は専門の用語集や参考書を買って勉強することもできますが、どうしても英語と日本語を対訳で覚えるだけになってしまい、自分の中で消化するのが難しいのではないでしょうか?この一冊は、用語も学べるし、多国籍企業がどのようにして機能するのかということも分かりやすく理解することができるため、是非読んでみてください。

昨年は、こちらは民主党の候補であるヒラリー・クリントン氏の著書「Hard Choices」をやはりキンドルにダウンロードして、読み終えました。彼女も文体は平易でシンプルですが、こちらのほうが読むのに時間がかかりましたし、調べなければならない単語が多くありました。

この2冊の自伝、ずいぶんタイトルが似ていますよね。表紙もどちらも両氏の顔写真が、正面からアップで載っているので、キンドルのホーム画面に並べてみると、ますます類似性が強調されます。面白いのは、邦訳のタイトルです。クリントン氏の著書は直訳である「困難な選択」となっていますが、フィオリーナ氏のほうは「私はこうして受付からCEOになった」。クリントン氏は昔から日本でもかなり知名度のある人ですから、タイトルはこれくらいシンプルでもいいのかもしれません。フィオリーナ氏はフォーチュン誌にビジネス界で最も影響力のある女性に選ばれるなどしていますが、クリントン氏ほどの知名度はないため(私も大統領選に出馬するまでは知りませんでした)、このようなタイトルをつけないと売れないと出版社が思ったのでしょうか。

これはどちらかというと翻訳の問題ですが、面白いと思ったので取り上げました。

これからビジネスのことを学びたい、と思う方は、是非手に取ってみてください!



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プロフィール

佐藤 祐大

佐藤 祐大さん
日英会議通訳者。熊本大学英文科卒。 公益財団法人日本英語検定協会に4年半務めたのち、ロンドンメトロポリタン大学に留学し、会議通訳の修士号を取得。 製薬会社、経営コンサル会社での社内通訳者を経て、2016年7月より現職。