INTERPRETATION

Vol.6 「夢と情熱と好奇心のおもむくままに」

ハイキャリア編集部

通訳者インタビュー

【プロフィール】
上原正人さん
Masato Uehara
沖縄出身。沖縄県同時通訳者養成事業の2期生。高校卒業後、カナダに6年半留学。カールトン大学とオタワ大学に学ぶ。帰国後、通訳・翻訳者として沖縄県庁知事公室に採用される。その後、様々な企業で社内通訳者として経験を積む。現在はスポーツメーカーに勤務。

Q. 通訳を目指すようになったきっかけは何ですか?

留学先のカナダ・オタワ市で、日本人通訳者のパフォーマンスを目の当たりにしたことです。当時は政治や社会に対する知識が足りず、カナダ連邦議会の論戦の内容は深く理解できないものの、常時テレビ中継されるその同時通訳の素晴らしさにインスピレーションをビリビリ感じました。
留学中、日本語クラスのアシスタントを担当しました。学生から様々な質問を受け、自分なりに納得のいく説明をすることに情熱を覚えたんです。その事からも、もしかしたら自分は通訳に向いているかもしれないと何度か思いましたね。

Q. 通訳になるにあたって、どのような勉強をされましたか?

スクーリング歴は長いですよ(笑)。留学中は、初歩段階での通訳訓練法を教えてもらい、シャドーイングやリプロダクション、サイトラ、スラッシュリーディングなどを自分なりにやっていました。でも所詮は独学の世界。帰国後、本格的な訓練を受けようと思い、通訳学校の門を叩くことにしたんです。
いわゆるハウツー本で指南されている勉強方法は一通りやりましたが、帰国後すぐに通訳翻訳の仕事を始めたので、分厚い資料の翻訳と通訳の仕事に明け暮れては、週二回通訳学校の授業に出るという感じでした。今振り返ると、毎日が勉強だったのかもしれません。当初は新聞を四紙購読していたんですよ。目を通しきってないものを持ち歩いては、出先で新聞ばっかり読んでました。6年半カナダにいたので、その間抜けてしまった日本事情を勉強しないと、と不安にかられながら字面を追いかけていたことを覚えています。

Q. 沖縄では、県知事公室でご勤務されていたと伺いましたが。

帰国後は東京の通訳学校に通うつもりでいましたが、太田知事の在任中に運良く採用されて、働くことになりました。最初は主に、平和記念資料館建設に向けて準備していた資料の翻訳を担当しました。米国公文書館から取り寄せた沖縄戦に関する特大ファイルを、個室にこもってほそぼそと翻訳したんです。それもファーストフード店で働くよりも安い時給で!(笑)海外からジャーナリストや研究者が来た時は、取材通訳もしました。その後、国際交流課(現・文化国際局)に新規採用されてお給料がアップ、通訳の比重も多くなりました。在日各国大使館・領事館からの公式訪問の際にお供したり、沖縄で開催された国際会議の場には要人付という役を与えられたりと、普通では出来ない経験をさせてもらいました。今思うと本当に怖いもの知らずで、来るもの拒まずの姿勢で何でも引き受けていましたね。

Q. 知事公室でのお仕事で、何か印象に残ったことはありますか?

シンガポールベースのクルーズ船会社の社長が、沖縄県内の財界人・起業家・学生を集めて行ったビジネスセミナーでの通訳です。知事が急に参加出来なくなり、社長がスピーチの途中で原稿の残り30頁分を私に渡し、「後は通訳の訳とさせていただきます」とステージを降りてしまったんです。私は真っ暗なステージの上でスポットライトを浴びながら、最後までサイトラをしました。途中で、少し詰まってしまい、自分のつばを飲む音がスピーカーから聞こえてきて、最後のページをめくるまで、とても時間が長く感じられたのを覚えています。このセミナーは、スーパースターカプリコーンという豪華客船の中で行われたのですが、そのせいか今でも「カプリコーン」という名前には敏感です(笑)。

Q. 現在のお仕事内容について教えて下さい。

カスタマーサービスセンターと、物流センターが統合されたスポーツメーカーのオフィスで働いています。成田空港の近くということで、平日はホテルに滞在、週末は東京のアパートに帰っています。緑も多く、人混みを離れて仕事に集中でき、週末も計画的に時間を使っているのでバランスがとてもいいです。オフィスの方々や通訳者さんもとても協力的で、明るく楽しい毎日を過ごしています。

Q. 毎日お忙しいと思いますが、休日はどのようにお過ごしですか?

土曜日は昼頃までグースカ寝た後、ジムで体を目一杯動かしています。その後は、映画を観にいったり、友達とお店を覗いたり、カフェで新聞や雑誌、資料を読んだりしています。これがいつものパターンですね。

Q. もし、通訳者になっていなければ何をしていたと思いますか?

むずかしい質問ですが、最近は教えることが楽しいと思えるようになってきました。特にキャンパスの雰囲気が好きで、日本語や日本文化・社会を熱心に学ぶ生徒達の学習に一役買えたらと思うことがあります。好奇心の赴くままにいろいろ試してきたら今にたどり着きました。今後何か新しい興ことを見つけたら、通訳業から離れるかもしれません(笑)

<編集後記>
ジムではエアロビクスにはまってます!と上原さん。上原さん=エアロビクスと、なかなか想像できないのですが、かなりハードなスポーツのようです。私も今度挑戦してみたいものです。

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ハイキャリア編集部

テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

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