INTERPRETATION

Vol.16 「趣味は勉強?」

ハイキャリア編集部

通訳者インタビュー

【プロフィール】
島田彩子さん Ayako Shimada
関西学院大学社会学部卒業後、松下電器産業株式会社入社。出産を機に退社、通訳の勉強を始める。通訳学校在籍時から通訳の仕事を開始、在阪テーマパーク建設プロジェクト、大手メーカー社員研修セミナーでの通訳をこなす。2002年通訳技能検定準1級合格。現在は、フリーランス通訳者として活躍する傍ら、コングレ・インスティチュートにて講師も務める。

Q. 通訳を目指そうと思ったきっかけは?

大学生の頃、就職活動するのに何か一つくらい特技があった方がいいかなと思って、英語の勉強を始めました。卒業後、メーカーに国際要員として採用されたものの、実際にはあまり英語を使う機会がなくて。出産退職後、子育てだけだとノイローゼになりそうだったので、何かやろう! と通訳学校に通い始めました。仕事として具体的に考え始めたのはそれからですね。
英語は昔から得意だったのかと聞かれるんですが、実は恥ずかしい話、大学生の時に初めて受けたTOEICの点数が580点でした。本格的に勉強を始め、社会人になってから再受験した結果、930点。読み書きはできても、会話はままならず、外国人を見たらいつも逃げ出していました(笑)。

Q. 通訳学校では常に優等生だったと伺いましたが。

当時は入学テストも読み書きのみだったので、同時通訳科を薦められたんです。さすがに無理だろうと思って本科1に入れてもらいました。いざ授業が始まったら、本科1でもアップアップでした。とにかく先生に誉めてもらいたい一心だったんです。宿題を完璧にこなすわけではなかったのですが、衛星放送を毎日聞いて、逐次通訳の練習をしました。先生に「いいですね」なんて言われるとすっかりその気になって、おだてられたというか……(笑)。

Q. 分娩室に辞書を持ち込んだというのは本当ですか?

とにかく英語を何とかしたかったんです。妊娠中もずっと勉強を続けていて、出産当日は大学生の頃から作っていた単語帳を一冊握りしめて陣痛室に入りました。陣痛の間も暇になったら困るなぁと思って。実際のところ、すぐに生まれたので見る時間もなかったんですが。もともとアバウトな人間なのですが、英語だけは例外でした。いろんな表現を吸収して、どこかでうまく使えた時が嬉しいんですよ。

Q. 仕事の前は緊張しますか?

あまり緊張はしません。同時通訳のブースも入ってしまえば、やるしかありませんから! 前日は心臓バクバクです(笑)。できるだけの準備をして仕事に臨むよう心がけています。帰国子女ほど耳がいいわけでもないし、通訳技術もまだまだだと思っています。だからこそ、事前準備で誠意を尽くしたいんです。資料は出ないことが多いので、インターネットで情報を集めたり、例えばその企業のHPがなくても、同業種の会社を調べて使えそうな単語をリストアップします。

Q. 今だから言える失敗談は?

いろいろあります。固有名詞を取り違えて見当違いな訳出しをしてしまったことがあります。「松下」を「マサチューセッツ」とか! 気を使ってか、どなたも指摘して下さらないと、自分で立ち直るしかないというか……(笑)。おそらくこういったことは、通訳者なら必ず経験しているのではないでしょうか。

Q. プロとしてこころがけていることはありますか?

睡眠をとることです。集中力をキープするために夜10時半には寝ます。朝4時半に起きて、6時半に子供を起こすまでが勉強時間です。『朝2時起きで、なんでもできる!』という本に影響されて2時に起きてみたんですが、お昼の12時ぐらいから眠くて眠くて(笑)。いろいろやってみた結果、私には4時半が一番合うようです。この生活はもう5年ぐらい続いています。

Q. もう外国人を見ても、逃げませんか?

いえ、逃げます(笑)。通訳はできても、フリートーキングは今でも緊張気味です。楽しそうにお喋りしている仲間をみるとうらやましいんですが、会議に入ってからが勝負と考えるようにしています。長いプロジェクトになると、みんな仲良くなって世間話をするんですが、私はあまり率先しては加わらないほうですね。

Q. ご趣味は?

仕事です(笑)。平日子供がいなくて、仕事も入っていない時は、明け方プラス朝の9時から夕方4時まで勉強しています。不思議と嫌にならないんですよ。もちろん一日中通訳練習をしているわけではなくて、新聞や本を読んだり、ニュースを聞いたりと、いろんなことをしています。自分でもバカみたいだなぁと思うんですが……。

Q. 現在は、通訳学校で教えていらっしゃると伺いましたが。

皆さんいろんな事情があるとは思いますが、「半期休んで、次のタームから来る」のは本当にもったいないと思います。英語や通訳の勉強は、毎日続けないと維持できないので、半年休んでしまうと次が大変です。それまで勉強してきた事が無になってしまいますから。「半年前までやっていたから!」と思っていても、知らない間にレベルが落ちていたり、以前分かった単語が分からなかったりというショックで、ストレスをためることになると思うんです。
継続は力なりだよといつも授業で話しているんです。通訳になるのは「諦めなかった人」です。誰でもスランプ、結婚、転勤などいろんな状況があると思います。学生ではないので、勉強だけしていればいいというわけにもいきませんよね。勉強を続けるのが困難な理由は100も200もあると思いますが、それでも「続けたい!」と思える人だけが、通訳になれるのではないでしょうか。

<編集後記>
今回は大阪でのインタビューでした! 毎回、お会いするたびに「太ったの」とおっしゃいますが、私の半分ぐらいにしか見えません。趣味は勉強という話を聞いて、成功する人は、皆さん本当に努力しているんだなぁと再確認しました。

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ハイキャリア編集部

テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

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