INTERPRETATION

Vol.19 「ことばが私の原動力」

ハイキャリア編集部

通訳者インタビュー

【プロフィール】
高橋美佐さん Misa Takahashi
明治大学文学部仏文科卒業後、大手アパレルメーカーに勤務。6年間の勤務を経て、フランスに渡る。2年間の滞在中、パリ・安田火災ワールドアクセスセンター、米国系コンサルティング企業に勤務。帰国後、国際間コーディネーターとして独立、主に芸術分野の日/伊/仏/英通訳者として活躍する傍ら、ナレーション、翻訳、仏語講師など、枠にとらわれない活動を展開中。著書に、『はじめてのイタリア語』、『絵でわかるイタリア語基本単語』(明日香出版)、『しっかり学ぶフランス語』(ベレ出版)がある。

外国語との出会いは?
小さい頃、外国=アメリカというイメージがあり、どんな国なのかなぁと漠然と思っていたんです。英語の勉強という意味では学校のThis is a pen.から入ったんですが、これは向いているかも! と思いましたね。フランス語は、フランスポップス歌手のミッシェル・ポルナレフを好きになったのが始まりです。私の中学生時代のアイドルで、この人のお嫁さんになるんだ! と思っていたんです(笑)。本格的に勉強を始めたのは、大学生になってからなのですが。イタリア語を勉強し始めたのは、フランス滞在を終えてからです。もう1つ何かできると強みになるかもしれないと感じたこと、フランス語と似ているので効率もいいかなと思っただけなんですが、思いの外うまく進んで今では仕事の半分がイタリア語なんです。
パリに渡ったきっかけは何だったんですか?
企業で6年働いたんですが、とにかく毎日忙しくて気が付いたら結構お金が貯まっていたんです。年齢的なこともあって、30才になる前に新境地を! と思ったんですよ(笑)。何となくこのままではダメなんじゃないかと感じていました。中学生の頃からパリの街に恋こがれていて、一体どんなところなんだろうって常々思っていたんですが、ただ観光で訪れるようなことはしたくなかったんです。フランスという国に対して敬意を示したかったというと大げさかもしれませんが。街について勉強し、言葉もある程度できるようして、「この街や文化が好きで、子供の頃から勉強していました」と胸を張って言えるようになってから行きたいと思っていたんです。
そんなわけで、28年間の片想いを経てパリに渡りました。
帰国後、国際間コーディネーターとして独立されたと伺いましたが。
最初は知り合いの紹介でお仕事を頂き、徐々にフリーランスとしての活動を始めました。イタリア語の勉強を始めた頃でもあったので、通訳を目指すというよりは、イタリア語を日本で一番できる人になろう! と思っていたんです。もう挫折しましたけれど(笑)。昼間働き夜学校に通う生活を1年半続け、とにかく自分で自分のお尻を叩かないとと、無理矢理名刺にイタリア語もできますって書いちゃったんです。30才になっていたので、このままでは実績も作れないまま時間だけが過ぎていくんじゃないかと焦燥感を覚えたんですよ。それからイタリア語の仕事が来るようになったんですが、今考えるとかなりの冒険でした。
「3ヶ国語単語帳」
舞台通訳の魅力は?
「普通」じゃない人達に会えることだと思います。一番印象に残っているのは、新国立劇場でのオペラ通訳です。振付家に付いて通訳するのですが、最初は通訳するタイミングがうまく掴めず本当に大変でした。分厚い脚本を見ながら進めていくので、例えば「何ページのこの歌の部分の、この歌い出しのところで躍り手さん動いて下さい」、と振付家が言うのをそのまま通訳しても何だか変な感じなんですね。私自身オペラに関する知識が全くありませんでしたので、正直自分でも満足のいくパフォーマンスではありませんでした。すごくくやしくて、次に同じ仕事が来たときは1ヶ月前からCDと台本を付き合わせて必死に勉強したんです。3時間分の台詞を全部調べ、有名なアリアはCDで覚えるなどして徹底的に予習して行きました。練習が始まって、振付家が「楽譜何ページ何小節目のところから」と言ったとき、私は「テノール歌手の『光が』という台詞から」と通訳したんです。通訳時間もぐんと短縮されるし、日本人出演者にも的確に伝わったようで、大変感謝されました。私自身もすごく達成感があって、初日舞台終了後打ち上げのビールのおいしかったこと! 大変だったことなど全て忘れて、本当に嬉しかったです。それ以後もリピートを頂いていますが、甘んじることなく毎回同じように勉強しています。この5年でかなりオペラに詳しくなりましたが、お金を頂きながら知識を増やしていけるなんて、本当にありがたいことだと感謝しています。
多言語が話せるのを「強み」と感じるのはどんな時ですか?
例えばいろんな国の方を交えて英語で会議をしたときに、私一人でイタリア語・フランス語・英語・日本語がカバーできるので、お客様には重宝がられますね。微妙なニュアンスの確認を取りたいときに、「高橋さん、今のをちょっとフランス語で聞いてもらっていいですか?」と頼まれることもあります。翻訳では、VOGUE NIPPONというファッション雑誌の翻訳を長い間担当させて頂いております。各国からいろんな面白い記事を集めてきて日本に紹介することが多いのですが、例えばアメリカ版VOGUEの中に、フランス語やイタリア語がファッションのキーワードとして出てくることがあるんです。そういうときには、重宝されているようですね。
新しい単語は、3言語関連づけて覚えるのですか?
無意識にやっているところがあります。例えばフランス語で何か新しい言葉に出会ったら、これってイタリア語だとどうなんだっけ? と、頭が自動的に反応するんです。そうなると、ついでだから英語も調べておこうかという気になるんですよね。アフリカの言語、韓国語、ランス語とかだと、違うかもしれませんが、ヨーロッパ言語ということで、関連づけて覚えられる利点はあります。
「困った時のお助けメモ」
プロとして心がけていることはありますか?
健康管理のため、サプリメントを毎日飲んでいます。コラーゲン、緑黄色野菜、フルーツ(笑)。こういう仕事をしていると食事が偏りますし、バランスよく食べてよく寝る!、なんてなかなか難しいんですよね。私の自慢は基礎体力と、やれと言われたらやれるという根性、それを裏付けるためにきちんと食べて必要な栄養を摂ることです。月に2回はプールで泳ぐようにもしているんですよ。
1週間のスケジュールは?
今週のスケジュールをお話しましょうか。月曜はこのインタビュー後に渋谷でお買い物。帰宅すると、インタビュー原稿のテープ起こしが待っています。ちなみに納期は明日までなんですけれど(笑)。火曜日は、午前中に語学学校で教えて、木曜は語学教材作りに関する打ち合わせと、ビジネス関係のディナーがあります。金曜はプールで泳いだ後、日頃お世話になっているオペラ団体の公演を観にいきます。今週は割と穏やか且つバラエティ豊かなんですが、週によってはテレビ通訳が1週間続き、舞台通訳で缶詰になっているときもあります。
ワイン関係のフランス語講座も担当していらっしゃるんですね。
日本ソムリエ協会さんからのご依頼で、1年に3回講座を行っています。最近、世界大会に出場したいという人が増えてきているんです。ワインにまつわるフランス語を勉強したい方も多いので、ワインのコメントの仕方などについて授業を行っています。最初お話を頂いた時は、真っ青になりました。色合いがどうとか、泡の具合がどうとか、とりあえず全部頭に詰め込んで、授業に挑んだのを覚えています。どうなるかと思いましたが、やってみたら好評でもう6年目になるんです。ハッタリが効いたんでしょうか……。本人は結構どきどきしながらやっていたんですが(笑)。
休日はどのようにお過ごしですか?
友人や業界仲間と会って情報交換していますが、何かしら連絡が入るので、朝から晩まで100%休日! はなかなか難しいですね。たまに1週間ヨーロッパに行くんですが、思いっきり遊べばいいのに、何となく情報収集している自分がいて、何やっているんだと思うこともあります。
クラッシックバレエを25年やっているんです。「バレエをやっています」と言いたいが為に、必死で体重を維持しているようなところもありますが(笑)。先日仕事先の方に、何気なく「バレエをやっている」と話したところ、「高橋さんに対する見方が変わった」と言われたんです。コツコツ子供の時から努力を続けている姿勢を頼もしく感じたらしいのですが。時々言うといいかもしれませんね(笑)。言うからにはバレエを続けておかないといけませんが!
今後も通訳者として?
通訳という仕事を続けるかどうかは正直なところ分かりませんが、言葉にはこだわっていきたいと思っています。外国語に限らず、日本語に対しても、もっともっと深く理解できるようになればいいですね。外国語を使う時には、日本語に対する理解力が一番重要になってくると思うんです。そういう意味でも、言葉に対する勉強は一生続けていきたいです。

編集後記
たくさんのエネルギーをありがとうございました! 美佐さんとお話していると、私もどんどんポジティブになっていく気がします。目標実現までの努力、常に前へ前へと進んでいく姿勢、とにかく圧倒されっぱなしの1時間でした!
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テンナイン・コミュニケーション編集部です。
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