INTERPRETATION

第30回 栄枯盛衰は世の常?!

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者もついにほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。

いきなり平家物語の引用で失礼。1月26日付のビジネスニュースを読みながら、中学時代に暗記させられた古典の一節が脳裏に蘇ってきました。

言うまでもなく、ここ何年も時価総額で世界のトップランナーとして悠々と走り続けてきた、米アップル社の話。

英The Economist誌Espressoによると……。

Apple announced revenues of $75.9 billion for the last three months of 2015, up 1.7% year-on-year, and profits of $18.4 billion, breaking its own record for the most profitable quarter in American business history.

ここまで読むと、絶好調のアップルの業績が続いていて、何の心配もいらないように感じます。ところが後半は……

But it said its revenues in the current quarter-two thirds of which come from iPhones – would fall by 11% year-on-year, marking the iPhone’s first-ever sales decline.

となっています。

この発表によると、13年も増収を続けてきたアップルの成長にもついに陰りが見えてきたようです。

では、前回紹介したパラレルリーディング(並行読書)で1月27日付日経新聞の記事と比較してみましょう。前半部分とほぼ同じ内容が書かれた部分を引用すると……。

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15年10~12月期業績は売上高が2%増の758億7200万ドル、最終利益が2%増の183億6100万ドル。いずれも過去最高を更新し、8四半期連続の増収増益となった。

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この二つから以下のような比較ができます。

1.Revenues → 売上高

2.the last three months of 2015 → 15年10~12月期

3.up 1.7% → 2%増の

4.year-on-year→ 相当する表現なし。(前年同期比、の意。YoYの略もよく使われる)

5.profits→ 最終利益

6.breaking its own record → 過去最高を更新し

これを次のような表にまとめると分かりやすいかと思います。

160201 green.png

このように短い記事の比較でも意外に参考になる表現が見つかるのではないでしょうか。ぜひ、勉強法として取り入れてみてください。

ところで、ウォール・ストリート・ジャーナルはApple iPhone Sales Grow at Slowest Rate Everという見出しの記事を出しています。このslowestは前回説明したのと同じ用法ですね。どう訳すと日本語として自然な表現になるんでしたっけ? (第29回を参照)

ちなみに私はアップル社の製品を使い始めて20年になります。初めてパソコンを購入するときにMacを友人に勧められ、それ以来ずっとアップル社のファン。iPhoneやiPadも発売してすぐに購入し、故スティーブ・ジョブズ氏の有名なスタンフォード大学でのスピーチには何度も涙しました。企業がいつまでも成長を続けていくのは至難の業でしょうが、平家のように落ちぶれることがないよう祈っています。(Apple Watchは買わないけど)

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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