INTERPRETATION

第84回 米Snap社、ついに上場

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。皆さんは、Snapchatって聞いたことがありますか?アメリカ発祥のメッセージアプリですが、イギリスの若者の間でも大人気です。そのSnapchatの運営会社スナップが3月2日にニューヨーク証券取引所に株式を上場、時価総額が約283億ドル(3兆円を超える)という大型上場となったことがビジネス界で話題を呼びました。そこで今回は、このニュースを解説しながら関連用語を説明します。

まずは「上場する」ですが、英語では何と言うでしょう? 新規で上場する場合は、go publicがありますが、list shares, get listed, become listed, become a listed company, make an IPOなど色々な表現がありますが、単にlist(自動詞)だけでも構いません。どこの株式市場にかを付け足す場合の前置詞はonです。(例:Snap has listed on the New York Stock Exchange)。

IPOはInitial Public Offeringの略で、直訳では「最初の公開売り出し」ですが、未上場の会社が新たに株式を上場し、証券取引所で売買できるようにすることを意味します。

上場前に企業はIPO価格(公開価格/売り出し価格)を決めます。今回の上場でスナップ社は、その価格を17ドルに決定しました(Snap has decided to price its initial public offering at $17 a share)。

上場して最初に決まる株価を初値(opening price)と言いますが、この初値がいくらになるのかが注目されます。人気の企業であればIPO価格の2倍以上になることもあります。

スナップ社の場合は、41%増の24ドルでした(Share of Snap Inc. jumped to $24 per share, 41% over its $17 opening price)。

企業価値を表す時価総額(market cap, market capitalization)は、およそ283億ドル(Its market cap is about $28.3 billion)。

今回のIPOの特徴は、公開された株式に議決権(voting rights)がないことです。エバン・スピーゲル最高経営責任者(CEO)ら共同創業者2人が議決権株式の9割を保持するということで、上場後も支配権(control)を維持する予定のようです。これは透明性(transparency)や企業統治(corporate governance)の面からも懸念されています。

スナップ社は、昨年Spectaclesというカメラ付きのメガネを発売したことでも話題になりました。スナップチャットの人気の理由は、投稿した写真や動画が最大10秒で消える仕組みになっていることですが、このSpectaclesを使うとビデオ撮影が最大10秒に設定されているので、さっとSnapchatで共有できるというわけです。でもこんなメガネをかけている人が近くにいたら……、SNSに投稿されそうだからと逃げますか? それとも、投稿されてもすぐに消えるから気にしませんか?

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本コラム第82回で企業買収を取り上げましたが、スナップ社は2013年にFacebookからのプロポーズ(30億ドルの買収案)を断った経歴があります。フラれたFacebookは腹いせにSnapchatとよく似たサービスを提供し始め、今はユーザー獲得の取り合いをしています。

日本で主流のメッセージアプリLineやSNOWと比べると、Snapchatはメッセージの自動消滅タイマーを設定できて顔認識カメラのあるSNOWと似ています。十代後半の私の息子二人ともやはりSnapchatをいつも使っています。すぐに消えるから気軽に画像を送れるようですね。

以上、スナップ社上場のニュースに合わせて、「上場」「IPO」「初値」「時価総額」「議決権」などの用語を紹介しました。IR通訳でも必須の表現ですので、お役に立てば幸いです。

2017年3月6日

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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