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ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

ビジネス・経済・金融などの分野の翻訳や通訳でよく出てくる表現をイギリスのメディアから取り上げてお届けします。

第41回 類語をまとめて覚えよう!その2「下がる・減る」

この度の熊本地震により被災された皆様ならびにそのご家族の皆様に心よりお見舞い申し上げます。住民の方々の安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

前回から類語をまとめて紹介しています。今回は、前回の反対語「下がる・減る」を取り上げます。まずは日本語でいくつ思い浮かびますか?

・減少
・減量
・落ち込む
・低下
・下落
・下降
・縮小
・減退
・縮む
・先細り
・漸減
・削減
・急落
・暴落

それぞれニュアンスは異なりますが、逐次メモで矢印を右下がりに描いて記せるタイプの言葉がたくさんあります。

では英語ではどんな表現がありますか?
ニュアンスとしては、1)徐々に 2)急激に 3)そのどちらにも使える、の3つのタイプに分けられるかと思います。

1)徐々に
・diminish:減少する、縮小する、という意のややフォーマルな言葉。動詞のみ。law of diminishing returns(収穫逓減の法則)
・dwindle:「人口が徐々に減る」というようなニュアンスで使われ、少子化のことをdwindling birth rateともいう。
・peter out:これも「次第に/徐々に小さくなる」ですが、最後は「なくなってしまう/消える」というニュアンスがあり。
・wane:徐々に減る、という動詞以外にon the wane(減少傾向で)という副詞句の用法もあり。時間とともにだんだん減少・衰退する、というニュアンス。

2)急に
・drop:物が落ちる/物を落とす、というときに使う語なので、値段や温度の低下について使われると、decreaseやdeclineよりも程度の大きさや急激さがニュアンスに含まれる。a sharp drop(急激な減少)
・plunge:(価格などが)急落する。物価や株価、通貨が急に下落するときに使われる。名詞用法もあり。飛行機が墜落する、という文脈でも使われる。The plane plunged into the Mediterranean Sea. (その飛行機は地中海に墜落した)。
・plummet:これも「急落・暴落(する)」の意。名詞と動詞の両方で使われ、アクセント位置同じ。Stocks have plummeted this quarter(この四半期で株価が暴落した)。

3)一般的な「減る」だがsuddenly, dramatically, gradually, steadilyなどの副詞を組み合わせることで、「急に/劇的に/徐々に/ 着実に」の意を加えられる。
・decrease:(数や量)が減る/を減らす、(値段やレベル)が下がる/を下げる。動詞では第2音節に、名詞では第1音節にアクセント。
・abate:(税金や料金)引き下げる。(量や程度)が減少する abate a tax(減税する)
・contract:(規模や程度)が縮小する/を縮小させる。名詞のcontract(アクセントは第1音節)は「契約」の意で、「縮小」という名詞はcontraction。
・curtail:(支出や生産)を縮小する、(成長や活動)を抑制する。curtail public spending(公費を削減する)
・decline:下落・減少・低下の意味がある動詞かつ名詞。珍しくアクセントの位置は同じ。「断る/辞退する」という意味もあり。

以上、12個の同義語を紹介しましたが、他にもcut down, ease, fall, lessen, lower, reduce, shrink, slackenなど色々あるので、能動的に使えない言葉があれば是非この機会に勉強してみてください。英訳の際には、難しい語を駆使するだけでなく、moreやless/fewerを使って簡単に表せることもお忘れなく!

I hope the Panama Papers will result in less tax evasion! (パナマ文書がきっかけで税金逃れが減ることを期待します)。


第40回 類語をまとめて覚えよう! その1 「上がる」

ビジネスや経済の話では数字が欠かせません。通訳では数字が出るとまずは「ビクッ」とする通訳者も多いと思いますが(私もです!)、大切なのはその数字がどういうニュアンスで用いられているのか、その数字が「大きい」のか「小さい」のか、「増加している」のか「減少している」のかなど数字がもたらす意味を訳出すること。そこで、これから5回にわたり数字に関連して使われる用語を取り上げます。まず第1回目は「上がる」のニュアンスで使われる語を見てみましょう。

「上がる/増える」という意味の日本語だといくつ思い浮かびますか?
文脈やニュアンスにより以下のような類語があります。
• 増加
• 上昇
• 増大
• 伸びる
• 高まる
• 引き上げる
• 上向く
• 増量
• 増額
• 拡大
• 急騰
• 暴騰

では英語ではどうでしょう? 
• increase: 最も一般的。給料や価格、速度、重量など色々な場合に使える。動詞・名詞ではアクセントの位置が異なる。on the increase(増加中)もよく使われる。
• rise: ~率、料金、売り上げなどの数量が上がる。自動詞なので「(値段を)上げる」というときはraise. これもon the rise(上昇中)という表現あり。
• gain:(体重)が増える(put onとも)、(速度や価値)を上げる、というときに使う。日常会話ならI've put on 3 kg(3キロ増えちゃった)、ビジネスではThe company's shares gained 12 percent(その企業の株価は12%上がった)など。
• grow: (経済)が成長する、(企業)を拡大させる、等の文脈で使われる。動詞のみ。名詞はgrowth。
• enlarge:形を大きくすること。拡大する。例:enlarge three times(3倍に拡大する)
• snowball: 日本語では「雪だるま式に増える」と言いますが、英語ではsnowmanではなくてsnowball(雪玉)で同じ意味になるのがおもしろいですね。急速に増える/拡大する。この意味では動詞のみ。ちなみに「雪合戦」はa snowball fight。
• surge: 急上昇・急増・急騰。ふつうは名詞用法のみ。数字以外にもa surge of excitement/ love のように「感情が急に高まること」やa surge of orders(注文殺到)などの文脈でも使われる。
• multiply もともと「掛け算をする」という意味なので、「急激に(ねずみ算式に)増える」。ちなみに算数の3x4はmultiply 3 by 4という。参照:quadruple(4倍に増加する), triple(3倍に増加する), double(倍増する)
• soar: (価格・温度・コストなど)が急上昇・急騰する。ふつうは動詞用法のみ。
• inflate: 利益の水増しや支出の増大など会計関連や、価格のつり上げや通貨の暴騰にも使われる。動詞のみ。名詞はinflation。(第一回参照)
• appreciate: (価値や値段、相場)が上がる。Yen appreciated 10 % against the dollar(円の価値がドルに対して10%上がった)
• mounting: 名詞を修飾して「増える一方の、かさむ、高まる」の意で使う。mounting costs/debts(かさむ費用/負債)など。

たくさんありますね! 他にもaccrue, swell, skyrocketなど色々あります。ニュアンスや用法の違いはあれ、上記の表現すべて、逐次通訳のメモなら右上がりの矢印で表せます。矢印の角度を調整することで、上昇が急なのか緩やかなのかも一瞬で記せますね。

以上、「上がる・増える」という意味の類語を紹介しました。次は、その反対語「下がる・減る」の類語を紹介します。



第39回 Brexit 特集 その4 Remainersの意見は?

皆さん、こんにちは。4月に入り、イギリスにもやっと春の陽気が訪れました! 日本在住の方は、お花見を楽しまれたことでしょう。
第36回からBrexit(イギリスのEU離脱)問題を取り上げています。前回は「Brexiteersが不満に思う理由」を4項目取り上げたので、今回はそれぞれに対するRemainers(残留派)の意見を紹介します。

1)EUの法律・規則は役に立っている
EU加盟国で統一された規則に従っているため全体的な官僚手続きが減り、企業はその恩恵を受けている。官僚手続きを減らすにはBetter regulation(規制の効率化)に向けて働きかけることは可能。またEU市民としてEUの規制下にある工業製品・食品などを安心して利用・消費できる。

2)分担金の負担額に対する見返りは十分にある
「十分な見返りはある」と証明する研究結果がいくつもある。例えば、London School of Economics (LSE)の調査結果によると、EU自由貿易協定のおかげでイギリスの物価が低く抑えられており、各家庭あたり年間200ポンド、イギリス全体では53億ポンドの節約につながっているという。またCBI(英国産業連盟)によると、EU加盟国として低価格によるメリットだけでなく貿易・雇用・投資が増えるため各家庭あたり年間3000ポンドもの恩恵を受けているとのこと。ちなみにEUへの分担金は各家庭あたり年間340ポンドなので、金銭的に十分な恩恵を受けている。

3)EUからの移民は財政に貢献している
Brexiteers(離脱派)は、EU移民が社会保障制度を悪用している、医療・教育制度を圧迫している、低賃金労働を供給するためにイギリス人が失業している、などという理由をあげ、EU移民に反対している。しかし複数の調査結果によると、EU移民は実のところnet fiscal contributors、つまり全体的には社会保障の受給額よりも納税額のほうが多いとのこと。したがって、EUからの移民は社会保障を受けるためではなく働くためにイギリスに来ているので、国に貢献している。また現在EU諸国で暮らしている200万人以上のイギリス人がBrexitにより強制送還される可能性もあり。「うっとうしい天気が続くイギリスから老後は太陽がさんさんと輝くスペインへ」と夢を膨らませて貯金しているイギリス人にとってEU離脱は夢をぶち壊すようなもの。
またイギリスはシェンゲン圏には入っていないので、出入国の際には必ず国境検査を通る必要があり、難民やテロリストの入国は制限されている。

4)欧州人権裁判所(the European Court of Human Rights: ECHR)はEUの管轄外
前回も触れた通り、欧州人権裁判所をを設置している欧州評議会(Council of Europe)はEUより大きい機関なので、EUが欧州人権条約に順守していたとしても、イギリスがEUを出たからと言って欧州人権裁判所の管轄から出ることにはならない。

以上、前回取り上げた項目に対し、Remainersの主張を紹介しました。本コラムでは4点に絞って説明しましたが、他の多くのトピックについても両者の意見が対立しています。

Brexitを考える上で大きな問題は、もしイギリスがEUを離脱することになった場合、離脱後のイギリスがどのような立場に置かれるのかまったく分からない、ということです。もしノルウェーのようにEUには加盟しないけれども単一市場には残ると決めた場合、分担金の支払いは続く(多少の減額はあり)し、ヒト・モノの自由な移動が保証されているので移民問題もそのまま残ります。EU規則に従う必要もあります。けれども単一市場に残るかどうかは今回の国民投票(EU referendum)では問われません。また日本や米国を含む世界の国々と個別に行う貿易交渉で、イギリスがこれまでよりも良い条件を獲得できるかどうかも不明です。スコットランドは2年前に住民投票でUKに残ると決めたところですが、UK離脱問題が再浮上する可能性も既に示唆されています。
一方、肝心のEUもイギリスが抜けるとガタガタと崩れてしまう可能性も低くありません。イギリスがEUを出て、それなりにうまくいけば後に続こうとする国が出てくる可能性もあり、EU存続のためにはイギリスが残ることが必須とも言えるでしょう。

というわけで、非常に不確定要素が多いので、世論調査の結果では拮抗しているようですが、大半の投票者は「不確実性」を回避して、Remain(残留)に投票するというのが私の予測です。あまり心配せずに見守りましょう。


第38回 Brexit 特集 その3 Brexiteersが不満に思う理由

皆さん、こんにちは。前々回からBrexit(イギリスのEU離脱)問題を取り上げています。
この度EUの代名詞ともなっているブリュッセルでテロ事件が起きたことは非常に衝撃的であり、テロとの戦いの深刻さを考えさせられます。ロンドンからブリュッセルへはユーロスター(高速列車)で2時間、東京・名古屋間のような感覚で日帰りできる距離にあり、今回の事件も身近に感じ、テロ対策として自分にできることは何かを再考しています。

さて前回は「そもそもEUとは」について解説しましたが、今回は「イギリス人にとってEUの何が不満なのか」を考えてみたいと思います。

EU離脱派(Brexiteers)が掲げる主な理由には、1)EU法・規則、2)分担金・EU予算、3)移民問題、4)人権裁判所、等があります。では、これらの点についてもう少し詳しく見てみましょう。

1)EUの法律・規則が多すぎて、企業の負担になっている
EUは超国家機関(Supranational organisation)であり、EU法は国内法に優先します。バナナ、チョコレート、馬肉など様々な食品に関する規制から労働時間指令(Working Time Directive)など、数多くのEU法に従う必要があり、企業の負担になっています。この文脈ではtoo much bureaucracy/red tape(ややこしい/煩雑な/官僚的手続きが多すぎる)などという表現で批判されます。

2)巨額の分担金を負担しているが、その見返りが少なく、無駄な支出が多い。
EU加盟国は毎年それぞれの国の経済規模に見合った金額をEUに支払い、EUは各国の事情に合わせて給付金を出し所得再分配をしてお互いを助け合っています。そのようなシステムでは驚くことではないと思いますが、ドイツ、フランス、イギリスのような経済大国は受取額よりも拠出額のほうが多く純拠出国(a net contributor)という状況が続いています。2014年度のイギリスのネット額(拠出額と受取額の差)は88億ポンド。これは2009年度の43億ポンドから約2倍に跳ね上がっていることが離脱派の不満理由にもなっています。
また直接的な見返りだけでなく、「EUという巨大な組織が何にお金を使っているか」という点でEUの支出内容も批判の対象となっています。これは欧州議会議員(Member of the European Parliament: EMP)だけでなく、翻訳・通訳者も含めた職員への待遇が問題視されることもあります。

3)移民が多すぎて国の負担となっている
イギリスでは国民医療制度(NHS、イギリスの住民は無料で利用できる)を始め、社会保障制度が充実しており、様々な福祉手当てが給付されています。この制度はイギリス国籍でなくても利用できるので、移民がNHSを利用したり、生活保護を受給したりすることが国の負担になっているという批判や、移民に仕事を取られて失業しているという不満が高まっています。キャメロン政権は移民の数を減らすことを公約に挙げていますが、人の移動の自由が約束されているEU加盟国である限りEUからの移民の数を減らすことは不可能です。それでこれまでのところ矛先はEU以外の移民に向けられ、滞在許可取得に苦労する勤労日本人や勤勉学生もずいぶん増えました(ロンドン・メトロポリタン大学が一時期学生ビザを支給できなくなったこともあります)。離脱派は特に「東ヨーロッパの国々からの移民は生活保護を求めて渡英する」と思う人が多くEU離脱がその解決策であると考えています。去年から深刻化している中東からの難民問題に関連して、出入国管理(border control)を自分たちの権限で行いたいという要望が高まっています。

4)欧州人権裁判所(the European Court of Human Rights: ECHR)の判定には納得できない
イギリスでは法的に認められている人権問題がECHRで違反と判定されることがあります。例えば服役中の受刑者の選挙権に関して、イギリスでは受刑者には選挙権を与えないと規定されていましたが、それがECHRで違反判決が出ました。人権保護の行き過ぎの例だとして離脱派の不満原因ともなっています。
ところが実は、これはかなり教育レベルの高い人でもEUをよく理解していないことを表しています。EUにはEuropean Court of Justice(欧州司法裁判所)が設置されていますが、これはEUの条約や法令を司る機関であり、欧州人権条約(European Convention on Human Rights)違反を審査するECHRとは別の機関です。ECHRはEUではなく欧州評議会(Council of Europe、47か国が加盟するEUとは別の国際機関)が設置している裁判所なので、イギリスがEUを離脱しても欧州人権条約には順守しなければなりません。

「欧州」といっても欧州連合(EU)、欧州経済領域(EEA)、シェンゲン圏(Schengen Area)、ユーロ圏(Euro Zone)、欧州評議会(Council of Europe)など、いくつかの方法でグループ分けされており、非常にややこしいので下図を参考にしてください。

以上、EU離脱派が話題にするEU法、分担金、移民問題、人権裁判所について解説しました。次回は残留派の考えを紹介したいと思います。

欧州の国々の相互関係

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第37回 Brexit 特集 その2

皆さん、こんにちは。前回からBrexit(イギリスのEU離脱)問題を取り上げています。その2では、少し基本に戻り、そもそもEU(欧州連合)とは何なのかを一緒に考えたいと思います。というのも「EUを出たがるイギリス人がどうして増えたのか」を理解するためには、まずEUを理解することが大切だからです。

1.EUの生い立ち
現在のEU(欧州連合)が誕生したのは1993年ですが、誕生のきっかけは二つの世界大戦にさかのぼります。二つの大戦により、欧州の各地が荒廃し、またアメリカ合衆国とソビエト連邦という二超大国による世界の分断が進む中で、欧州が一致団結することで再興をはかろうという動きが活発化します。まずはフランスとドイツが仲直りすることから始まり、ベルギー、イタリア、ルクセンブルグ、オランダの4か国が加わってEuropean Coal and Steel Community(ECSC、欧州石炭鉄鋼共同体)が1952年に設立されます。その後、石炭鉄鋼以外にも領域を広げたEuropean Economic Community(EEC、欧州経済共同体)が1957年に誕生しました。

Brexit問題を考える上で、ここで注目していただきたいのは、EUの母体であるECSCやEECの当初の加盟国にイギリスは入っていない、ということです。イギリスは欧州の主要国であるためにEUの主要国でもあると思われがちです。ところが、イギリスは地理的にヨーロッパ大陸からは離れた島国ですし、アメリカとの関係も密接なため、大陸諸国の仲間に入るかどうか二の足を踏んできました。60年代に入り、やっとEECに加盟希望を申し出ても当時のフランス大統領に反対されるなどという経過があり、加盟が実現したのは1973年のこと。確かにイギリスは欧州の主要国ではありますが、EUの中核メンバーではないのです。このことは、イギリスが単一通貨ユーロを導入しなかったことと関連していると言えるでしょう。

2.EUの掲げる理念、ever closer unionについて
「絶えず緊密化する連合」などと訳されますが、EUは問題が発生する度に「お互いの連携を強めて、さらに統合すること」で解決しようとしてきました。1992年には単一市場(Single market)を形成し、人・モノ・資本・サービスの移動が自由化されました。2002年には共通通貨ユーロが導入され、現在19か国で使用されています。最終的にはthe United States of Europe(ヨーロッパ合衆国)を樹立しようという考えさえあります。ところが、今回イギリスがEU離脱の国民投票をするということで英キャメロン首相がEUに提案した改革案の内容は同理念ever closer unionに反するものであり、これまでのEUのあり方を根本的に変えるきっかけとなる可能性があります。

3.EUは国際連合(UN)のヨーロッパ版?
第二次世界大戦に設立された国際機関、国際連合(UN)と比較して、「EUはUNのヨーロッパ版なの?」と聞かれたら、どう答えるでしょうか?
どちらも戦後、国際的な平和と発展を目指して設立された国際機関ですが、質問の答えはNoでしょう。上記2からも明らかなように、EU諸国のほうがずっと強く結びついています。単一市場以外に、欧州議会(European Parliament)があることも大きな違いと言えるでしょう。EUの場合は、欧州議会(国会を拡張したようなもの)が設置されていて、議員は各加盟国から直接選挙で選ばれます。そこで採択されるEU法(Regulations規則、Directives指令、等)は、各加盟国の国内法に優先します。つまりEU法と国内法の間で矛盾があれば、EU法が優先的に適用されます。
また翻訳・通訳者の関心事としては公式言語の数も大きく異なります。UN加盟国の数は現在193か国に及びますが、公式言語は6言語のみ(英語、フランス語、ロシア語、中国語、スペイン語、アラビア語)。一方、28か国が加盟しているEUの公式言語はなんと24言語。これは各加盟国が公平に参加できることがEUでは重視されていることを表しています。マルタのようなミニ国家でもEUに加盟した時点から、すべての公式文書はマルタ語にも翻訳され、会議にはマルタ語の同時通訳がつきます。したがってEUの通訳や翻訳の量は莫大で、それにかかる費用が問題となることもありますが、ヨーロッパ言語の翻訳・通訳者にとっては、非常に魅力的な雇用の機会を提供しています。

以上、今回はBrexitを考える上で重要となるEUについて、3つの点から考察しました。次は、イギリス人にとってEUの何が不満なのか、を考えてみたいと思います。



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プロフィール

グリーン裕美

グリーン裕美さん
結婚を機に1997年渡英して以来、フリーランス翻訳・通訳として活躍。ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。二児の母。ビジネス会議、国際会議、法廷、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)など様々な通 訳経験ある一方、翻訳では、実務翻訳以外に、ビジネスマネジメント論を説いた『ゴールは 偶然の産物ではない』を始め『GMの言い分』『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。 向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに喜びを感じる。 グローバル社会の発展に貢献するために自分ができることを日々僅かながらでも実行している(つもり)。
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