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ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

ビジネス・経済・金融などの分野の翻訳や通訳でよく出てくる表現をイギリスのメディアから取り上げてお届けします。

第56回 交渉に関する表現 その2 

皆さん、こんにちは。今回は大阪からお届けしています。覚悟はしていましたが、やはり暑いですね......。でもせっかくの機会なので、山登り、川遊び、海水浴、花火大会など日本の夏を満喫しました!
では今回も引き続き交渉に関する表現を紹介します。

1.ZOPA
ZOPA(ゾーパ)とは、Zone of Possible Agreementの略で「合意可能領域」や「交渉可能範囲」などと訳され、交渉当事者の双方が合意できる範囲を示します。
例えば、AさんとBさんがパンの売買をすると仮定します。売り手のAさんは、最低でもパン1個100円で販売したいと思っています。一方、買い手のBさんは1個300円を超える場合は購入するつもりはありません。この場合、100円から300円がZOPAとなります。300円に近い額で交渉が成立すればAさんにとって有利な交渉で、100円に近ければBさんにとって嬉しい結果となります。
ただし、実際の交渉では値段だけではなくて数や納期など他の条件も加わり、もっと複雑になります。

2.win a concession: 譲歩を勝ち取る
Aさんの要求すべてにBさんが譲歩して合意してくれれば
→ A won all the concessions from B.

3. wide-ranging discussions: 様々なことについて話し合う
「〜について色々と話し合った」と言いたければ
→ We have had wide-ranging discussions about...


以上、交渉に関連する表現を取り上げました。休暇中のため、短めのコラムで失礼します。皆様も残り少ない夏、夏バテに気を付けながらどうぞお楽しみください。


第55回 交渉に関する表現 その1 offer

皆さん、こんにちは。先週はイギリスでも連日30度を超える暑さとなりました。イギリスでは「蒸し暑い」ときhot and stickyと言います。イギリス人はToo hot/sticky to sleepと文句を言っていましたが、朝方には20度未満にまで気温が下がるので日本の夏に慣れた人には快適な暑さです。

では今回から数回に分けて、商談の場で役立つ表現を紹介します。

1. counter-offer/ counteroffer: 対案、カウンターオファー
交渉の際に、相手側に出された案に納得できないときに出す別の案。ただし、カウンターオファーを出した時点で、元の案は拒否したことになるので要注意。「オファー」という言葉は「申し出・提示」という意味で日本語でも浸透していると思いますが、英語のofferは動詞でもよく使われます。
offer ~ in return だと、「見返りに~を提供する」

2.fallback position: (希望が叶わない場合の)代案
「交渉の準備段階で代案を考えておくべきだ」
→ You should prepare a fallback position before starting any negotiation.

3.final offer: 最終提示条件
「これ以上は交渉の余地がないから、この条件で受け入れられなければやめてくれ」と強気に出るときに使う慣用表現は
→Take it or leave it.
そのようなオファーをtake-it-or-leave-it offerと言います。

4. give ground 譲歩する/ gain ground 立場が改善する
交渉の過程で譲歩することをgive ground in negotiationと言います。
gain groundだと、前より状況がよくなること。交渉で弱い立場から逆転して優勢になったときに使われます。
ちなみに、紛争地でgain groundというと進撃して陣地を得ること。
「過激派ISがシリアでの陣地を広げた」
→IS gained ground in Syria.

政治の話なら、支持率が上がること。
「スコットランドでの保守党の支持率が上昇した」
Tories gained ground in Scotland.

5.pull out of a deal: 取引から手を引く
pull outには「引き抜く、取り出す」以外に「取りやめる、撤退する」という意味もあります。pull out of a businessだと「事業から手を引く」ですが、pull out of a recessionだと「不景気から抜け出す/脱する」。 

以上、お役に立てれば幸いです。商談と言えば、先週のビジネスニュースで「ポケモンGO」に続いて最も話題を呼んだのはソフトバンクの英ARM買収でしょう。3.3兆円という巨額な買収取引の交渉をたったの2週間で行ったというのも驚きです。ただし孫社長は10年間にわたり密かにARM社の買収を夢見てきたとのこと。ブレグジットで悲観的な見方が多い中、イギリス経済に期待をかける大変うれしいニュースでした。今後のARM社とSoftbankの発展に注目です。


第54回 イギリス、Brexit体制整う

先週の原稿を提出した直後にイギリスの政界で急速な展開が繰り広げられ、ハイキャリア通信が配信される水曜日(7月13日)には内容が古くなっていて申し訳ございませんでした。もう皆さんご存知の通り、イギリスの新首相にテリーザ・メイ氏が就任し、大混乱状態にあったイギリスの政界、世界の金融市場が落ち着きを取り戻しています。そこで、今週も引き続き、Brexit関連の表現を取り上げます。

1.Brexit means Brexit and we're going to make a success of it.
国民投票の結果が出た後、Regrexiters(第52回参照)が続出し、再投票を求める署名が400万以上集まり、「イギリスは本当にEUを離脱するのか」について多くの疑問の声が上がっていました。その疑問に対するメイ首相の答えです。「~を成功させる」を英訳するときの表現としてmake a success of ~。使えるようになるといいですね。
メイ首相のもとで、残留派と離脱派が一体となり、イギリスが困難を乗り越えて発展していけるというイメージが現実化してきました。

2. British humour? UK's new foreign secretary is Boris Johnson.
新首相に就任し、早速組閣に着手したメイ首相。キャメロン内閣では首相の右腕として目立っていたオズボーン前財務大臣を更迭するなど、注目点がいくつかありましたが、最も意表を突いたのはボリス・ジョンソン氏が外務大臣に起用されたことでしょう。今までジョンソン氏はオバマ大統領を含む有名政治家に対し失言を繰り返すなど外交手段に長けているという実績はなく、同氏が外務大臣なんてイギリス流の冗談(British humour)じゃないかと世界の政治家から失笑もされていて、どんな顔で交渉の場に現れるのか、今後の動きに関心が寄せられています。就任早々、ニースでのテロ事件、トルコでのクーデター未遂など大きな事件が相次ぎ、執筆時現在(7月18日)ジョンソン外相は初めてEU外相会議に出席しています。
ところで、ジョンソン氏に加え、David Davisという離脱派のベテラン政治家にEU離脱担当大臣(Brexit minister)という新しいポストが与えられたことで、新政権がEU離脱に本気で取り組む姿勢が示されています。
日本の外務大臣はMinister for Foreign Affairsと訳されますが、イギリスではforeign secretaryと呼ばれます。米国ではSecretary of State(国務長官)が同等の職務を担当。ただ、複数の外務大臣を言及するときはforeign ministers。少しずつ違うので要注意。

3.Target of balancing the budget by 2020
前述のオズボーン前財務大臣は、2020年までに財政赤字をなくすことを目標に掲げ、緊縮財政政策(austerity measures)を実施してきました。それにより、多くの公務員が職を失い、生活保護の打ち切りにより貧困層の生活が苦しくなったことも今回の国民投票の結果につながったようですが、メイ首相がオズボーン氏をクビにした理由の一つは、新政権と緊縮財政を切り離すことだったと考えられています。早速上記目標は撤回され、インフラへの公共投資が期待されています。
balanceは、「(重さを)量る、相殺する、収支を合わせる、埋め合わせる」などの動詞用法と「はかり、残高、安定、平衡」などの名詞用法がある多義語なので、文脈に応じて適訳をつけるのが意外に難しい語。「バランス」と訳せるときもあるけれど、そうでないときの方が多いかもしれません。

以上、やっと先が見えてきたイギリスの様子についてお伝えしました。

個人的には、昨日地元の10キロレースで無事完走しました! 走るときのつらさと達成感は同時通訳と似ているといつも思いながら走っています。体力と精神力の両方が必要。これからもカメさんのようにマイペースであきらめずに頑張ります。


第53回 イギリス、国民投票後 その3

すみません! またこの話題です!
実は、今週は別の話題にする予定で、「交渉に関する表現」と題して既に原稿もある程度まとめていました。でも、先週の通訳業務においてやはりBrexitの話題がかなり出たので、通訳者としてBrexitの知識を持っておくことの重要性を再認識しました。
というわけでこの一週間で気になったBrexit関連の英語表現を取り上げます。

1.stand aside/ stand down/ step down 辞任する、引退する、退陣する
Q: キャメロン首相の辞任表明、ボリス・ジョンソン前ロンドン市長の首相レース不出馬に続き、先週辞任表明をしたのは誰でしょう? 
A: 前回「a liar」として紹介した英独立党(UKIP)党首のナイジェル・ファラージ氏。
EU離脱派の中心人物だったファラージ氏ですが、「自分が政治家になった目的は果たせた」「今は自分の生活を取り戻したい (I want my life back)」という理由で辞意を表明しました。投票結果は出たものの、これから実施という段階での辞任は「無責任だ(irresponsible)」とあちこちで批判されています。
「辞任する」はresign, quitの他に上記の句動詞も覚えておくと役に立つでしょう。

2.UK's 2nd female Prime Minister イギリスで2人目の女性首相
Q: キャメロン首相の後任者選びが始まりました。首相レースには5人が出馬しましたが、議員による投票で選ばれた二人の政治家とは誰でしょう?
A: テレサ・メイ内相とアンドレア・レッドソム エネルギー担当閣外相
投票前は、有力政治家のメイ内相とマイケル・コーブ司法相が残るものだと思われていましたが、コーブ司法相の裏切り行為は不信感を煽ったようです(前回記事参照)。その結果、離脱派からは政治家としてあまり経験のないレッドソム・エネルギー担当閣外相が決選投票に進むことになりました。今後は保守党の一般党員およそ15万人による投票で9月9日までにどちらかが選ばれます。どちらが勝ったとしても、次のイギリスの首相は女性になることが決まりました。マーガレット・サッチャー氏以来、25年ぶりの女性首相 (first woman prime minister since Margaret Thatcher) の誕生となります。来年のG7サミットは女性首脳が3人となる可能性大です。ヒラリー・クリントン氏は2008年の大統領選では"we were not able to shatter that highest and hardest glass ceiling (一番高く、最も硬いガラスの天井を打ち砕くことができなかった)」と言って撤退を表明しましたが、今回は打ち砕いて青空に手を伸ばせるといいですね。

3.Oustria/ Italexit/ Czech-out/ Departugal
EU最大の懸念事項は、Brexitそのものではなく、BrexitがきっかけとなりEU自体が崩壊することです。28加盟国の中には既にEUに懐疑心を抱いている国々があり、それぞれ造語が作られています。第51回で紹介した語に加え、Oustria (Oust + Austria), Italexit (Italy +exit), Czech-out (the Czech Republic + out), Departugal (Departure + Portugal)など。EU離脱を望む最大の理由は、移民・難民問題です。自由に人が移動できることによるメリットは大きいものの、テロリストも簡単に国外逃亡できるという欠点もあります。
一方、残留派の国を示す造語ではRemania (Romania + Remain) があります。

4.Bremigration/ Brexodus
こちらはBritainにemigration(国外への移住)、exodus (集団脱出)を加えた造語で、企業や個人がイギリスから大陸のEU諸国に引っ越すことを意味します。英語圏にとどまりたい人はカナダへの移住を考えていて、Canadexit(Canada + exit)という造語も生まれています。なぜ米国ではなくてカナダかというと、ドナルド・トランプ氏の台頭している国を避けるためです。ただし、私見になりますが、イギリスが単一市場に残る可能性もあり、EUの将来も不透明な現状(上記3参照)で、Bremigrationを実行するのは先走りしすぎじゃないかと思います。

以上、今週もブレグジットの話題でお送りしました。お役に立てば幸いです。


第52回 イギリス、国民投票後 その2

皆さん、こんにちは。引き続きイギリスEU離脱関連です。金融市場は落ち着きを取り戻しつつある一方、イギリスの政治は与党も野党も大混乱。まだまだ先が読めない状況です。「もうBrexitの話はたくさんだ!」という方に便利な表現は、"I'm BrexSick!"  どうぞこの先はお読みにならないでください。 
BrexSickでない方は、続けてお読みください。

1.cherry-picking いわゆる「おいしいとこ取り」。えり好み。
ドイツのメルケル首相はイギリスに対しUK can't cherry-pick EU privilegesと警告しました。イギリスは単一市場(the single market)へのアクセスは強く望む一方、自由なヒトの移動(the free movement of people)は拒んでいるために、「EUのおいしいとこ取りは許さない」と厳しい態度を見せています。pick and chooseもcherry-pickと同様の意味で使われます。

2.Regrexit/ Bregret ブレグジット(Brexit)という言葉はもう日本にも浸透しているようですが、投票結果が出た後、Leave(離脱)に投票した人の中で「まさか勝つとは思わずに投票したのに...」と後悔している人が少なくないようで、regret(後悔する)との造語でRegrexitやBregretという言葉が生まれました。Brexitに入れて後悔している人がRegrexiters。一方、離脱派に囲まれていて本心を語れなかったSilent Remainers(隠れ残留派)も少なからずいたようです。

3.a liar 「嘘つき」と言えば、英語でこんなジョークがあります。
Q: How can you tell when a politician is lying?
A: When his lips move.
政治家の話に嘘が多いのはイギリスだけではないし、今に始まったことでもありません。でもその度合いが許容範囲のこともあれば、あまりにひどくて「ぜったいに許せない!」と全国民の怒りを買う場合があり、今回は完全に後者です。誰のどんな嘘でしょう? 
今回a liarと呼ばれたのは英独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージ党首。投票日直前まで "Let's give our NHS the £350 million the EU takes every week(毎週EUが取り立てている3億5千万ポンドを英国民医療制度に使おう)" と訴えていたのに離脱派の勝利が決まった24日にその数値は間違い(a mistake)だったと認めたのです。3億5千万ポンドは確かにイギリスがEUに支払っている額ですが、EUから受けている補助金などを相殺すると純支払額は1億ポンド程度です。これはキャンペーン中からmisleading(誤解を招きやすい)と批判を受けていたにもかかわらず訂正していませんでした。投票結果が出たその日に突然誤りに気が付くということはありえないので、a liarと呼ばれている政治家の筆頭はUKIPのファラージ氏です。ただし、他の離脱派政治家も皆勝利確定以来、決まり悪そうな態度をとっています。

4.stab ~ in the back/ treachery/ betrayal 裏切る・裏切り行為
次の首相争いで大混乱が続くイギリスの政界ですが、先週「裏切り者」と呼ばれた政治家は誰でしょう? 上記3と4の答えに正解したあなたはBrexit通です!
EU残留を訴えていたキャメロン首相は、投票結果が出て数時間後には辞任表明を行いました。その時からABB(Anyone But Boris)という、「次首相にはボリス・ジョンソン氏以外なら誰でもいい」というキャンペーンが保守党内で繰り広げられる中、離脱派主導者の一人でありジョンソン氏の盟友、マイケル・ゴーブ司法相は自らが首相になる意思を完全否定していて、ボリス・ジョンソン元ロンドン市長をサポートするものだと誰もが思っていました。ところが首相レース立候補の届け出締め切り直前に自分が出馬するという驚きの発表を行い、ジョンソン氏は次期保守党首選を断念。このゴーブ司法相の行動は、裏切り行為だと批判されています。

5.sell-off, rally, rebound, depreciation, appreciation
投票結果が出た24日(金)はsell-off(セルオフ)が発生しました。これは大量の売りによって生じる株価急落のことです。ただし、週明けにはrally/rebound(反発、下がった相場が値上がりに転じること)。確かに金融市場に影響が出ましたが、「想定内」との専門家の意見もあり、先週の動きではリーマンショックのような大混乱というわけでもなさそうです。外為市場(foreign exchange market)ではポンド安(the pound has fallen/ depreciation of pound/ a weaker pound)、円高(the yen's appreciation/ Yen surges/ The Japanese yen soared/ strong yen)となりました。通貨安・高の英語表現は動詞・名詞・形容詞を使って上記以外にも色々あるので、ぜひ英字新聞で確認してください。

6.Brexit 「またBrexit?」と眉をひそめられたかもしれませんが、別の意味でのBrexitが懸念されています。ここではbrain exitを合わせた造語。brain drain(頭脳流出)とも言われる現象です。イギリスの大学・研究施設では多くのEU市民が科学の分野で活躍しています。イギリスが移民の数を管理することにより、優秀なEUの科学者が英国大学からいなくなることや科学研究へのEUからの補助金がなくなることが心配されています。

7.Breturn/ Breversal
上記、1、2、3、4のような状況下、離脱派が選挙期間中に約束していたことは実現不可能であり、EUとの離脱交渉を率いる次の首相の顔も見えないことから、Breturn/ Breversalの可能性も高まってきました。つまり、結局は国民投票の結果を無視して、EU、あるいはEEAに残るということです。EEA(European Economic Area 欧州経済領域)という選択肢はNorwegian optionと呼ばれています。つまり、一応EUは離脱したことになりますが、単一市場へのアクセスを認められる一方、EUからの移民を無制限に受け入れ、EUの規制に従い、高額の負担金を支払う必要があるだけでなく、議会での発言権がなくなるので、「それだったらEUに残った方がましじゃないか」という流れでEUに残る可能性が十分にある、ということです。

以上、いつもより長くなりましたが、この一週間で使われた表現の一部を紹介しました。Brexit関連の話題でお役に立てば幸いです。



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プロフィール

グリーン裕美

グリーン裕美さん
結婚を機に1997年渡英して以来、フリーランス翻訳・通訳として活躍。ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。二児の母。ビジネス会議、国際会議、法廷、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)など様々な通 訳経験ある一方、翻訳では、実務翻訳以外に、ビジネスマネジメント論を説いた『ゴールは 偶然の産物ではない』を始め『GMの言い分』『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。 向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに喜びを感じる。 グローバル社会の発展に貢献するために自分ができることを日々僅かながらでも実行している(つもり)。
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