HOME > 通訳 > Training Global Communicators > 第11回 社会制度は正義に、思考は真実に基づくべし

Training Global Communicators

原不二子先生は通訳の先駆者として活躍される傍ら84年に通訳・翻訳会社、ディプロマットスクールを設立。併設スクールでは、21世紀、世界レベルで活躍できる人材育成を目指し「グローバル・コミュニケーション・スキルズ」という新クラスを開講し、後進の指導にも大変力を入れていらっしゃいます。著書に『通訳という仕事』『通訳ブースから見た世界』(ジャパンタイムズ)、英訳書に『尾崎咢堂自伝』(プリンストン大学出版会)、『笹川良一研究』(イーストブリッジ出版社)などがあります。

第11回 社会制度は正義に、思考は真実に基づくべし

「社会制度は正義に、思考は真実に基づくべし」20世紀のアメリカの代表的な政治・道徳の哲学者ジョン・ロールズ(John Rawls)の言葉を書き留とめてあったノートを見つけました。

現在の福島第一原子力発電所の問題ひとつとっても、正義や真実がどこにあるのかと思わずにはいられません。国策という大義名分の下、いつのまにか電力供給の多くを原子力に依存することを決定し、原子力発電推進派が原子力安全・保安院管轄の下、同時にその安全確保をも任されています。一部では核爆発ではなかったかと指摘される爆発が起きても、水素や水蒸気の爆発であったと曖昧な発表を続けました。炉心が溶け、「メルトダウン」という最悪の事態が起きても、その言葉はタブーとされ「溶解」や「崩壊」などという表現が使用されています。事態を「収束させる」という言葉を使いますが、「収束」とは何を意味するのでしょう。英語に訳しようのない表現のひとつです。これは、そもそも自分たちの文字を持たない私たちが隣国の「漢字」を安易に借用しているからではないかと思います。単体で意味を成す漢字と漢字の組み合わせは真実をごまかすのに都合が良い言葉と言ってはいいすぎかもしれませんが、真意を伝えにくい、伝わりにくいことには違いありません。

今回の原発事故は福島や日本だけの問題ではありません。人類全体に対する大きな過ちであると思います。申し訳ないという謙虚な気持ちで他国の英知を借りなければなりません。現実を直視して初めて解決への道が開けるのだと思います。

原 不二子


Training Global Communicators


↑Page Top

プロフィール

原不二子

原 不二子さん
上智大学外国語学部国際関係史研究科博士課程修了。 祖父は「憲政の父」と呼ばれた尾崎行雄、母は「難民を助ける会」会長の相馬雪香。母の薫陶により幼い頃からバイリンガルで育ち、21歳の時MRAスイス大会で同時通訳デビュー。G7サミット、アフガニスタン復興会議、世界水フォーラムなど数多くの国際会議を担当。AIIC(国際会議通訳者協会)認定通訳者で、スイスで開催される世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)、ILO総会の通訳を務め、最近では、名古屋における生物多様性(COP/MOP)会議、APEC女性リーダー会議、アジア太平洋諸国参謀総長会議、ユニバーサル・デザイン(IAUD)会議、野村生涯教育センター国際フォーラム等の通訳を務めている。