INTERPRETATION

Vol.37 「飛びこむ勇気」

ハイキャリア編集部

通訳者インタビュー

【プロフィール】
結城ヘンリエッタさん Henrietta Yuki
Skidmore College古典・考古学学科(米国)在学中より翻訳業務を開始。大学卒業後、日本帰国、米国スポーツ番組放送局の日本関連企業に勤務。その後、ロンドンにてローカライズ業務に携わり、現在はフリーランス通訳・翻訳者として活躍中。クリエイティブ関連を得意としている。

言葉に興味を持ったきっかけは何ですか。
母親がスウェーデン人なので、子供の頃から日本語、英語両方話すように育てられました。インターナショナルスクールに通っていたこともあり、世界には複数の言語があるんだということを幼い頃から意識していたように思います。こういった環境から、自然に言葉に対する興味が芽生えたのかもしれません。実は、10歳頃から通訳のようなことをやっていたんですよ。父親は全く英語を話さないため、海外とビジネスをする場合は、いつも私が通訳担当だったんです。不思議に聞こえるかもしれませんが、私自身、通訳や翻訳を仕事というよりも、もっと日常的なこととして捉えていたような気がします。

高校卒業後に米国留学を?
インターナショナルスクールでは、ほぼ英語で教育を受けていたこともあり、米国大学への進学を決めました。初めての海外長期滞在に加え、多感な時期だったということもありますが、今思い出してもあの頃は本当にわくわくするような毎日でした。いろんな意味で自由だなと感じる反面、すごく実力主義だなという印象を受けました。語学面での不安はありませんでしたが、文化面においてはカルチャーショックを受けました。一番驚いたのは、食生活。毎日がハンバーガーのような濃い食事だったので、慣れるのには苦労しましたね。また、アメリカ人の積極性には最初戸惑ってしまいました。それから、私は幼稚園から18歳までを女子校で過ごしましたが、ここに来ていきなり共学! かっこいいお兄さんがたくさんいて、ここは外国、そして周りは皆外国人という状況下では、最初のうち授業に集中するのも一苦労でした(笑)。合計4年滞在し、在学中にはイタリアにも短期留学しました。振り返ってみると、米国での経験は、私にとって通訳・翻訳者になる上での重要な基盤を作ってくれたような気がします。

大学卒業後の進路は?
日本に戻り、米国スポーツ番組放送局の日本関連企業に就職しました。大学卒業後もそのままアメリカに残りたかったのですが、ビザの関係上難しかったこと、また私は一人娘なので両親の傍にいたいという気持ちがありました。
語学を生かせる仕事に就こう! と考えていたわけではありませんが、働いているうちに、「君、英語できるよね? じゃあこれやって」と言われることが多かったように思います。新入社員の私は、「よぉし、これからバリバリ働くぞ! 」と鼻息も荒かったのですが、元来がんばりすぎてしまう性分のため、だんだん自分にプレッシャーをかけすぎて体調を崩してしまいました。そこで、一旦会社を辞めフリーランスで活動することにしました。在宅でビデオゲームの翻訳をメインにやっていたところ、イギリスのゲーム関係企業から契約社員として働かないかと声をかけられて、2年間ロンドンにてローカライズ業務を行いました。そして、その後またフリーランスに戻って現在に至るというわけです。

お仕事で苦労したことは?
数え切れません(笑)。今思えばかなり無謀だったんですが、雪山でのスノーボードイベント通訳は忘れられません。海外から約50名のライダーが参加し、通訳は私だけ。10日間ずっと私は彼らについて通訳をするわけですが、体力的に相当きつかったです。例えば、夜中の2時半にいきなり携帯が鳴って、何事かと慌てて飛び起きると、「鍵を亡くして部屋に入れない! 」とのこと……。何だそんなことかと思いたくもなりますが、相手が外国で言葉ができずに困っている様子を想像すると、放っておけず、大急ぎでメイクをして現場に向うということの繰り返しでした。

一番印象に残っているお仕事は?
スティービー・ワンダーの通訳です。’August in Hiroshima’という野外イベントで、1週間彼について通訳することになりました。子供の頃から大ファンだったので、まさかこのようにして本人に会えるなんてと緊張しっぱなしでしたが、あの1週間は最高の思い出です。

フリーランスで働くことのメリットは?
なんといっても、時間が自由に使えることでしょうか。会社勤めを経験しているからこそ思うことかもしれませんが、ラッシュアワーの電車や、定時に帰れないと嘆くこともありません(笑)。また、いろんな分野を経験できるというのもいいですね。不思議に、フリーランスになってからの方が、仕事を楽しむ余裕もでてきた気がします。

翻訳は、主に日英を? 通訳・翻訳の比率は?
基本的には日英しか請けないことにしています。普段日本語で話し、通訳する分には苦労しませんが、文章となるとまだそこまで自信が持てませんので。通訳・翻訳の比率は、半々でしょうか。通訳が毎日入っている時もあれば、翻訳が大量にきて自宅に缶詰めになることもあります。フリーランスは仕事が確約されているわけではないので、急に何日か仕事がない日があると不安になりますが、だからこそ上を目指してがんばろうと思えるのかもしれませんね。個人的には、通訳も翻訳もどちらも好きなので、今後もうまく平行して続けていければと思っています。

ヘンリエッタさんの強みは?
体力です。かなりタフなので、多少の無理はなんともありません。それから、英語も日本語も大体同じレベルで使うことができるということでしょうか。文化間の差も理解できるので、クライアントが外国人の場合は特に喜んで頂けることが多いかもしれません。

ストレス発散法、ご趣味は?
キックボクシングです! 仕事上、ストレスを抱えることが多いので、そんなときは外に出て身体を動かすのが一番です。母娘でスタジオに通っているんですよ。かなりハードですが、このくらいやらないと、がちがちに固まった頭を柔らかく戻せないんです。
 趣味は、ドライブと映画。それから、自分から何かを発信することが好きです。アドレスは秘密ですが、ブログも書いているんですよ。童話や脚本も書いていて、将来何か形になるといいなと思っています。

将来のキャリアプランは?
何かを発信していくようなことができればと思いますが、通訳・翻訳はこれからもずっと続けていくつもりです。子供ができても、いつまでも続けることができるというのがいいですよね。更にスキルアップを目指しつつ、幅広い分野で活動できればいいなと思います。

もし、通訳・翻訳者になっていなかったら?
本を書いていたかもしれません。他にもやりたいことはたくさんあって、例えば、サーカスに入団したいなとも思うんです。もしくは、何でもいいので身体を動かす仕事!

最後に、これから目指す人へのアドバイスをお願いします。
今後、「英語ができる人」の数はますます増えると思います。だからこそ、付加価値を身につけて頂きたいです。ただ単に、英語ができますとか、バイリンガルということでは通用しません。そこに何かプラスアルファがないと。
それから、できることなら仕事は楽しく。勉強はもちろん大事ですが、あまり頭ががちがちになりすぎないようにすることも必要だと思います。なんといっても、「やったもん勝ち」です。いいのでしょうか、ここまで言い切って(笑)? でも、こういう度胸が一番大事なんですよ。もしかしたら、これだけが私の取り得なのかもしれませんが?!
7つ道具。

編集後記
ヘンリエッタさんが入ってきた瞬間に、ぱっと部屋が明るくなりました。自然体で気さくなお人柄に加えて、リズム感あふれるトーク、まさにコミュニケーションの達人! 最後に、言葉ができるだけではだめなんだとおっしゃっていた姿からは、プロとしての顔がうかがえました。

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テンナイン・コミュニケーション編集部です。
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