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Training Global Communicators

原不二子先生は通訳の先駆者として活躍される傍ら84年に通訳・翻訳会社、ディプロマットスクールを設立。併設スクールでは、21世紀、世界レベルで活躍できる人材育成を目指し「グローバル・コミュニケーション・スキルズ」という新クラスを開講し、後進の指導にも大変力を入れていらっしゃいます。著書に『通訳という仕事』『通訳ブースから見た世界』(ジャパンタイムズ)、英訳書に『尾崎咢堂自伝』(プリンストン大学出版会)、『笹川良一研究』(イーストブリッジ出版社)などがあります。

第37回 マヤ族の予言

仕事で米国に出張しました。オリンピックの興奮から醒めた米国では、泥の塗り合いと化している米国大統領選挙の話題でもちきり。西部のワシントン、アイダホ、コロラドなど10州では 高温気象による凄まじい勢いの山火事が発生し、100戸に近い家を焼き、大勢の避難民を出しています。 アジアでも、豪雨や地震で多くの人の命が奪われています。
まさに2012年は、マヤ族の予言による、「この世の終わり」を象徴するかの様相を呈しています。仕事仲間の通訳者の間でもこのことが 話題になりました。
「その読み方は間違っているわ。マヤの人たちは、いつかの時点で必ず、従来の考え方や生き方を変える必要がでてくる。このままではこの世はもたない、と戒めたのよ。」と、お姉さん格のスペイン語通訳者カルメンが言います。
マヤ族は、紀元前4世紀頃から興隆してピラミッド神殿を造り、象形文字を使う等、高度に発展し栄華を極めながら、9世紀を境に没落してしまったそうですが、ラテン系の人たちは、朗らかで物事を良い方向に捉えるように感じました。

                                                         原 不二子


第36回 「ソーシャル・ファーム」

これは、まさに未来を先取りした概念です。日本語のカタカナで「ファーム」と書くと、「農家」とも「企業」とも読めますが、ムハマド・ユヌス氏の言葉を借りれば、「ソーシャル・ファーム」とは、お金を儲けるためではなく、世の中の課題を解決する目的で行う事業を指すのだそうです。

2006年にノーベル平和賞を受賞されているユヌス氏は、バングラデッシュ出身の経済学者で、大学での講義中、窓の外の骨と皮だけに痩せ細った貧しい人々の姿を見て、世界から貧困をなくすことを自身の天命として、マイクロクレジットのグラミン銀行を創設されました。

私が理事を務め、民主政治の健全な発展や世界平和の実現に貢献している人や団体を顕彰している尾崎行雄記念財団からも、1998年、同氏へ第3回咢堂賞を授与しています。

ユヌス氏の志をついで、日本では恩賜財団済生会理事長の炭谷茂氏が貧困、失業、病気、社会の孤立から人を救うため、2000のソーシャル・ファームを目指して頑張っておられます。 

―7月23日昭和女子大学人見講堂での通訳業務より―

原 不二子


第35回 ミャンマーから目が離せません。

20年余の自宅軟禁から解かれたアウンサン・スーチー女史がタイ、スイス、ノルウェー、英国などの世界各地で祖国の民主化に向けた努力を支えて欲しいと訴え、感動をよんでおられます。
1948年、連邦国家として英国の統治下から独立したビルマは、135に上る少数民族を束ねることが困難であったことから軍が政治に介入した結果、軍事主導の政治体制が長く続くことになりました。その間も絶え間なく、ビルマの人たちを支え続けた日本財団の笹川陽平会長は、このほど、日本政府から「ミャンマー少数民族福祉向上大使」に任命されました。
その日本財団からの支援により設立された笹川平和財団からの依頼を受け、ディプロマットは、2014年にASEAN議長国を務めるミャンマーで、同国内における同時通訳官養成の大役を任されることになりました。
「武力・金力等の権力で政治を支配する時代は過去の遺物。21世紀は、対話とコミュニケーションで問題を解決していく時代。通訳官の役割は大きいので、そのつもりで能力を発揮して欲しい」ことをミャンマー国内の各省庁エリート事務官に訴え、通訳官養成に向けた一歩を歩み始めました。                 

原 不二子


第34回 平原の1本の草

 今年で第101回目を数えた国際労働機関(ILO)の年次総会も残すところあと数日となりました。今年の話題のひとつはビルマ・ミャンマーでした。軍事政権下で市民や子どもたちまでもが荷役や道路建設等の労役を強いられていたことが、同国も批准した「強制労働に関する条約(第29条)」に対する違反行為であると毎年のように取り立たされていたのですが、今年は選挙による大統領選出や政治犯の恩赦など、民主化への道を歩み始めたことが好感されました。総会最終日には、同国の民主化運動指導者アウン・サン・スーチー女史の政治活動再開後初となる国外での演説も予定されています。また、2014年には、ミャンマーがASEAN首脳会議の議長国を務めることも決定しています。
 
今年のILO総会では、若年層の失業率が成人の3倍にも達することが報告され、公正なグローバリゼーションをどのように達成するかが大きな課題になりました。
 
今回一緒に仕事をした若い通訳者 から受け取った手紙の一部を紹介しようと思います。
「久しぶりのILO総会で、三者三様の立場と主張がぶつかり合う場面に直接触れ、今日の世界が抱える課題の複雑さを改めて感じました。若い人たち、子どもたちが希望を持って生きてゆける世界であって欲しいと心から思います。通訳としての私の仕事は広大な平原の1本の草のように微小ですが、異なる立場の人々が、話し合いで互いを理解し、受け入れ合い、暴力や戦争を防ぐことに少しでも役立ちたいと思いながら、これからもこの仕事を続けようと思います。」
 私も改めて、このような気持ちで仕事をしたいと思いました。 

原 不二子


第33回 異文化との出会い

 振り返ってみると、母が私に残した大きな遺産は、異文化への誘いにあったと思います。
戦後、満州から引き上げてきた先で、カトリックの尼僧たちが営んでおられた小さな英語スクールに入れてくれたこと、高校1年の夏に、英国に行く機会を与えてくれたこと、大学を中退してでも世界を肌で感じる機会を勧めてくれたこと、などが今の私をつくったと思います。
若いうちに異文化に触れることで、心の窓が1つ大きく開き、それが新しい出会いにつながったからです。

 自身の経験に基づき、昨年の東日本大地震、福島での東京電力第一原発事故により、今までの生活が失われた被災地の青少年が、この先より広い世界に目を向け、夢を大きく膨らますきっかけになれば...との思いから、この夏、留学支援を視野に入れた英語強化合宿を北海道の地で開催したいと思っています。青少年が元気になることが、故郷の復興、日本の元気につながると思うからです。


原 不二子



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プロフィール

原不二子

原 不二子さん
上智大学外国語学部国際関係史研究科博士課程修了。 祖父は「憲政の父」と呼ばれた尾崎行雄、母は「難民を助ける会」会長の相馬雪香。母の薫陶により幼い頃からバイリンガルで育ち、21歳の時MRAスイス大会で同時通訳デビュー。G7サミット、アフガニスタン復興会議、世界水フォーラムなど数多くの国際会議を担当。AIIC(国際会議通訳者協会)認定通訳者で、スイスで開催される世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)、ILO総会の通訳を務め、最近では、名古屋における生物多様性(COP/MOP)会議、APEC女性リーダー会議、アジア太平洋諸国参謀総長会議、ユニバーサル・デザイン(IAUD)会議、野村生涯教育センター国際フォーラム等の通訳を務めている。