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Training Global Communicators

原不二子先生は通訳の先駆者として活躍される傍ら84年に通訳・翻訳会社、ディプロマットスクールを設立。併設スクールでは、21世紀、世界レベルで活躍できる人材育成を目指し「グローバル・コミュニケーション・スキルズ」という新クラスを開講し、後進の指導にも大変力を入れていらっしゃいます。著書に『通訳という仕事』『通訳ブースから見た世界』(ジャパンタイムズ)、英訳書に『尾崎咢堂自伝』(プリンストン大学出版会)、『笹川良一研究』(イーストブリッジ出版社)などがあります。

第3回 グローバル・コミュニケーション・スキル

今、一番いいことをしよう

今 一番いいことをしよう
  将来に不安や心配事があっても
将来がやってきたら
  そのとき
     一番いいことをすればいい
あのとき
   『ああすればよかった』と
           思うことはやめよう
あのとき
  一番いいと思ってやったのだから・・・

昭和59年4月17日
          山崎 房一」

 書類を整理していたら、この句が書かれたはがきが出てきました。昭和59年と言えば25年前(1984年)です。ちょうど女性のエンパワーメントの必要性が盛んに指摘されていた時代でした。私自身は通訳者としての経験を積んできた時期でもあり、後輩を育てたいという気持ちも強くなってきた頃です。「異文化間コミュニケーションの橋渡しをする人を育て、それぞれの能力にあった仕事を提供しよう」と、教育と仕事の提供という2つの目的を掲げ、1年後に株式会社ディプロマットを設立した経緯があります。あのとき「一番いい」と思ったことをしたのです。通訳の仕事は、あくまで補助的な役割が強く、「サービス精神」をとれば、それは眼の欠けた龍のようなものだと思います。「心」の入った通訳ができる通訳者を養成したい。通訳とは「人を生かして自分も活かされる」仕事なのです。

2011年1月14日記  原 不二子


第2回 グローバル・コミュニケーションの源泉

 グローバル・コミュニケーションは、単に英語能力を身につけることではなく、むしろ、足もとの関係づくりから始まるのではないでしょうか。ビートルズの「すべての孤独な人」という歌があります。「ああ、すべての孤独な人、どこから来たのでしょう?ああ、すべての孤独な人、どこに属するのでしょう?」と言った歌詞です。ふと、今の日本の状態と重なりはしないか、と思いました。子が生みの親に手をかけ、母が我が子を虐待の上死に追いやってしまう。仕事に就けず衝動的に電車に飛び込んでしまう。為すべきことができずに揺らぐ政治の状況。そのような報道を毎日のように目にします。夫婦、親と子、師弟、上司と部下、すべての関係において、お互いに思いやりの気持ちを通わせるところからコミュニケーションが生まれ、ますます小さくなるように見える地球上での異文化間コミュニケーション、グローバル・コミュニケーションが円滑に機能するようになるのではないでしょうか。
 
 「異文化間のコミュニケーションとは何か」と問われれば、「すべての個を認め合いながらお互いに理解し得る接点を見つけること」と答えたいと思います。すべての個人はミクロの意味での「文化」だと思うからです。誰もが自分の立場を認めてもらいたい、自分の主張を相手に受け入れてもらいたい、と思う。その接点を対話の中で求めていく。それが政治であり、ビジネスの交渉であると思います。私の好きな言葉に「すべての人は幸せになる権利がある。ただし、他人にも同じ権利を認めるという条件においてである。」というのがあります。その気持ちこそが、足もとのコミュニケーション、ひいてはビジネス、グローバル・コミュニケーションを円滑にする鍵となるように思います。異文化が触れあう地球上では、相手の言い分を聞いた上で自分の立場を丁寧に言葉で説明しなければならない。「あ・うん」の呼吸という概念が通じないのが異文化間のコミュニケーションです。 

原 不二子


第1回 グローバル・コミュニケーション

 いま最も大事なことは、一人ひとりが率先して他者とのつながりを造り、それを育てていくことではないでしょうか。グローバル・コミュニケーションとは異なる言語や違う文化をもつ人とのつながりを求め、育てていくことで、根本は同じです。英語ができれば自然にグローバル・コミュニケーションができるということではありません。双方が相手に関心をもち、いろいろなことを打ち解けて話し合い、相手が夢や苦労を語ってくれるようになった時、心が通じ合う関係が築かれていくのです。所詮、言葉は気持ちを伝える道具でしかありません。

 言葉は文化でもあります。例えば、英語はフェアプレイ、コモンセンスなどに代表されるように開放的でバランスのある文化を象徴します。一方で日本語は、年齢、組織や社会の上下関係により話し方が変わるため、若い人が年上、目上の人に気持ちを伝えるのは難しい場合があります。どちらかというと日本では、目から入る文章がコミュニケーションの主体であり、話をしたり、演説をしたりすることが疎まれた時代がありました。反論すると相手の人格を攻撃しているように受け止められてしまうためです。
 
 グローバル・コミュニケーションの第一歩は、日本語で自分の意志をきちんと伝えることなのかもしれません。他人は自分と異なる考えをもっているという前提で話し合い、お互いに納得いくまで話し合うことができるようになれば、ビジネスや外交上の交渉にも応用できるようになります。
 
 私たちが食べるもの、着るもの、使うもののすべてが世界中から運ばれてくるほどグローバリゼーションが進んでいます。異文化間の理解を深め、互いの文化を尊重し合ってコミュニケーション・スキルを身につけていかなければ、個人も国も生き残れないのが21世紀の現実です。コミュニケーションは、相手を慮る気持ちや、問題の多い世の中を少しでも良くする役に立ちたい、と思う真摯な気持ちの延長線上に成り立つのではないでしょうか。
来年から、ディプロマットスクールでは「Global Communication Skills」という新しいクラスにおいて世界レベルで活躍できる人材の育成を目指していきたいと思っています。
原不二子



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プロフィール

原不二子

原 不二子さん
上智大学外国語学部国際関係史研究科博士課程修了。 祖父は「憲政の父」と呼ばれた尾崎行雄、母は「難民を助ける会」会長の相馬雪香。母の薫陶により幼い頃からバイリンガルで育ち、21歳の時MRAスイス大会で同時通訳デビュー。G7サミット、アフガニスタン復興会議、世界水フォーラムなど数多くの国際会議を担当。AIIC(国際会議通訳者協会)認定通訳者で、スイスで開催される世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)、ILO総会の通訳を務め、最近では、名古屋における生物多様性(COP/MOP)会議、APEC女性リーダー会議、アジア太平洋諸国参謀総長会議、ユニバーサル・デザイン(IAUD)会議、野村生涯教育センター国際フォーラム等の通訳を務めている。