INTERPRETATION

第162回 カバン変遷ふたたび

柴原早苗

通訳者のひよこたちへ

通訳者の仕事道具と言えば電子辞書や筆記具、メモパッドやタイマーなどが挙げられますよね。さらに欠かせないのがカバンです。仕事では大量の資料を事前に配られますので、A4書類が入るビジネスバッグは不可欠です。私もこの仕事に携わるようになってから、ずいぶんたくさんのカバンを使ってきました。

ただし私の場合、単に紙類が入れば良いというわけにはいかないのが実情です。肩こりになりやすいため、なるべく風袋の軽いもの、持ちやすいものが前提条件となります。重いものを入れて持ち歩くヘビーユーザーですので消耗も早く、今までも短いサイクルで取り替えてきました。

先日まで使っていたのはナイロン製の軽量タイプ。持ち手が少し長めなので、薄着であれば肩にかけることもできます。ショルダーベルトでも良いのですが、そうすると重心が下がったままですので、もっぱら直に肩にかけてきたのです。

しばらく活躍してくれたこのカバンですが、とうとう破れてしまったため、買い換えることになりました。今回選んだのは最初からショルダーで使う形です。就職活動で女子学生が肩にかけているタイプと言えば想像しやすいかと思います。先のナイロン製のようにぐにゃっとすることなく型が保たれるので、中身が探しやすく、気に入っています。

とは言え、ナイロンタイプに比べれば重さはあります。そこでこのたび大々的にカバンとの付き合い方を見直すことにしました。

私は左肩にビジネスバッグ、右手には小型バッグを腕に下げてこれまで使ってきました。後者にはお財布や定期入れ、ポーチなどこまごまとしたものが入ります。もう何年もこのようにして「重さ分散型」で過ごしてきました。

荷物を二つに分けられる長所は大いにあります。しかし、常に「たくさん持ち歩いている感」は否めず、肩がくたびれた状態が続いていました。そこで小型カバンを思い切って廃止しようと決めたのです。

まずは小型カバンの中身を見直しました。名刺入れや予備の筆記具など、減らせるものが結構あるのですよね。名刺入れの場合、会合などがある日だけ持参し、万が一の予備としては手帳のポケットに数枚入れるだけにしました。筆記具も予備1本で十分です。かさばっていたプラスチック製の歯磨きセット一式は、中身だけをジッパー付き袋に入れ替えました。エコバッグも「帰りにスーパーに立ち寄る日」にだけ持ち歩くことにしたのです。

こうして整理してみたところ、ビジネスバッグ1つで十分対応できることが分かったのですね。出勤時にA4カバン一つになってみると、これほど身軽になれるのかと改めて驚いています。さらにこれまで左肩だけにかけていたカバンを時々右肩にも持ち替えられるようになりましたので、疲労の面でも助かっています。

当たり前と思って続けてきたことも、少し見直してみると色々と改善できるのですね。またさらなる「見直し期」が来るまでは今の方法を続けようと考えています。

(2014年5月5日)

【今週の一冊】

「日経MJ」

日本経済新聞社

今回ご紹介するのは「日経MJ」という週3回発行の新聞。日本経済新聞の系列紙だ。かつての「日経流通新聞」が名前を変えたものである。

私は紙の新聞が好きで、旅先では地元の新聞をよく手に入れる。首都圏にいるときも、思い立っては普段読まない新聞を駅の売店で買うことがある。活字や紙面のレイアウトなども見慣れたものと異なる分、新鮮な気分になる。

日経新聞の中ほどのページには「日経MJ」と「日経産業新聞」の予告がある。その日発行される2紙の見出しが出ているのだ。流通やマーケティング、あるいは産業の世界において何が今話題となっているのかがわかり、見出しを眺めるだけでも楽しい。

5月2日金曜日発行の日経MJで第1面を飾ったのはキッチン雑貨の話題。計量みそマドラーや魚調理に便利なトングなどがカラー写真入りで紹介されている。なるほど、世の中にはこれほど工夫が施されたグッズがあるのかと参考になった。それと同時に、なぜこうした商品が今ブームなのかも専門的な観点から解説がなされており、マーケティングの勉強にもなる。

この日は他にもコンビニ店内の販売レイアウトに関する工夫や、シニア向け販売戦略など、多様な題材が取り上げられていた。日経本誌よりもむしろ肩ひじ張らずに読める紙面構成だ。専門紙ではあるが、日常生活に密着したトピックが盛りだくさんなので、幅広い世代が楽しめると思う。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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