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Training Global Communicators

Vol.19 「ことばが私の原動力」

【プロフィール】
高橋美佐さん Misa Takahashi
明治大学文学部仏文科卒業後、大手アパレルメーカーに勤務。6年間の勤務を経て、フランスに渡る。2年間の滞在中、パリ・安田火災ワールドアクセスセンター、米国系コンサルティング企業に勤務。帰国後、国際間コーディネーターとして独立、主に芸術分野の日/伊/仏/英通訳者として活躍する傍ら、ナレーション、翻訳、仏語講師など、枠にとらわれない活動を展開中。著書に、『はじめてのイタリア語』、『絵でわかるイタリア語基本単語』(明日香出版)、『しっかり学ぶフランス語』(ベレ出版)がある。

外国語との出会いは?
小さい頃、外国=アメリカというイメージがあり、どんな国なのかなぁと漠然と思っていたんです。英語の勉強という意味では学校のThis is a pen.から入ったんですが、これは向いているかも! と思いましたね。フランス語は、フランスポップス歌手のミッシェル・ポルナレフを好きになったのが始まりです。私の中学生時代のアイドルで、この人のお嫁さんになるんだ! と思っていたんです(笑)。本格的に勉強を始めたのは、大学生になってからなのですが。イタリア語を勉強し始めたのは、フランス滞在を終えてからです。もう1つ何かできると強みになるかもしれないと感じたこと、フランス語と似ているので効率もいいかなと思っただけなんですが、思いの外うまく進んで今では仕事の半分がイタリア語なんです。
パリに渡ったきっかけは何だったんですか?
企業で6年働いたんですが、とにかく毎日忙しくて気が付いたら結構お金が貯まっていたんです。年齢的なこともあって、30才になる前に新境地を! と思ったんですよ(笑)。何となくこのままではダメなんじゃないかと感じていました。中学生の頃からパリの街に恋こがれていて、一体どんなところなんだろうって常々思っていたんですが、ただ観光で訪れるようなことはしたくなかったんです。フランスという国に対して敬意を示したかったというと大げさかもしれませんが。街について勉強し、言葉もある程度できるようして、「この街や文化が好きで、子供の頃から勉強していました」と胸を張って言えるようになってから行きたいと思っていたんです。
そんなわけで、28年間の片想いを経てパリに渡りました。
帰国後、国際間コーディネーターとして独立されたと伺いましたが。
最初は知り合いの紹介でお仕事を頂き、徐々にフリーランスとしての活動を始めました。イタリア語の勉強を始めた頃でもあったので、通訳を目指すというよりは、イタリア語を日本で一番できる人になろう! と思っていたんです。もう挫折しましたけれど(笑)。昼間働き夜学校に通う生活を1年半続け、とにかく自分で自分のお尻を叩かないとと、無理矢理名刺にイタリア語もできますって書いちゃったんです。30才になっていたので、このままでは実績も作れないまま時間だけが過ぎていくんじゃないかと焦燥感を覚えたんですよ。それからイタリア語の仕事が来るようになったんですが、今考えるとかなりの冒険でした。
「3ヶ国語単語帳」
舞台通訳の魅力は?
「普通」じゃない人達に会えることだと思います。一番印象に残っているのは、新国立劇場でのオペラ通訳です。振付家に付いて通訳するのですが、最初は通訳するタイミングがうまく掴めず本当に大変でした。分厚い脚本を見ながら進めていくので、例えば「何ページのこの歌の部分の、この歌い出しのところで躍り手さん動いて下さい」、と振付家が言うのをそのまま通訳しても何だか変な感じなんですね。私自身オペラに関する知識が全くありませんでしたので、正直自分でも満足のいくパフォーマンスではありませんでした。すごくくやしくて、次に同じ仕事が来たときは1ヶ月前からCDと台本を付き合わせて必死に勉強したんです。3時間分の台詞を全部調べ、有名なアリアはCDで覚えるなどして徹底的に予習して行きました。練習が始まって、振付家が「楽譜何ページ何小節目のところから」と言ったとき、私は「テノール歌手の『光が』という台詞から」と通訳したんです。通訳時間もぐんと短縮されるし、日本人出演者にも的確に伝わったようで、大変感謝されました。私自身もすごく達成感があって、初日舞台終了後打ち上げのビールのおいしかったこと! 大変だったことなど全て忘れて、本当に嬉しかったです。それ以後もリピートを頂いていますが、甘んじることなく毎回同じように勉強しています。この5年でかなりオペラに詳しくなりましたが、お金を頂きながら知識を増やしていけるなんて、本当にありがたいことだと感謝しています。
多言語が話せるのを「強み」と感じるのはどんな時ですか?
例えばいろんな国の方を交えて英語で会議をしたときに、私一人でイタリア語・フランス語・英語・日本語がカバーできるので、お客様には重宝がられますね。微妙なニュアンスの確認を取りたいときに、「高橋さん、今のをちょっとフランス語で聞いてもらっていいですか?」と頼まれることもあります。翻訳では、VOGUE NIPPONというファッション雑誌の翻訳を長い間担当させて頂いております。各国からいろんな面白い記事を集めてきて日本に紹介することが多いのですが、例えばアメリカ版VOGUEの中に、フランス語やイタリア語がファッションのキーワードとして出てくることがあるんです。そういうときには、重宝されているようですね。
新しい単語は、3言語関連づけて覚えるのですか?
無意識にやっているところがあります。例えばフランス語で何か新しい言葉に出会ったら、これってイタリア語だとどうなんだっけ? と、頭が自動的に反応するんです。そうなると、ついでだから英語も調べておこうかという気になるんですよね。アフリカの言語、韓国語、ランス語とかだと、違うかもしれませんが、ヨーロッパ言語ということで、関連づけて覚えられる利点はあります。
「困った時のお助けメモ」
プロとして心がけていることはありますか?
健康管理のため、サプリメントを毎日飲んでいます。コラーゲン、緑黄色野菜、フルーツ(笑)。こういう仕事をしていると食事が偏りますし、バランスよく食べてよく寝る!、なんてなかなか難しいんですよね。私の自慢は基礎体力と、やれと言われたらやれるという根性、それを裏付けるためにきちんと食べて必要な栄養を摂ることです。月に2回はプールで泳ぐようにもしているんですよ。
1週間のスケジュールは?
今週のスケジュールをお話しましょうか。月曜はこのインタビュー後に渋谷でお買い物。帰宅すると、インタビュー原稿のテープ起こしが待っています。ちなみに納期は明日までなんですけれど(笑)。火曜日は、午前中に語学学校で教えて、木曜は語学教材作りに関する打ち合わせと、ビジネス関係のディナーがあります。金曜はプールで泳いだ後、日頃お世話になっているオペラ団体の公演を観にいきます。今週は割と穏やか且つバラエティ豊かなんですが、週によってはテレビ通訳が1週間続き、舞台通訳で缶詰になっているときもあります。
ワイン関係のフランス語講座も担当していらっしゃるんですね。
日本ソムリエ協会さんからのご依頼で、1年に3回講座を行っています。最近、世界大会に出場したいという人が増えてきているんです。ワインにまつわるフランス語を勉強したい方も多いので、ワインのコメントの仕方などについて授業を行っています。最初お話を頂いた時は、真っ青になりました。色合いがどうとか、泡の具合がどうとか、とりあえず全部頭に詰め込んで、授業に挑んだのを覚えています。どうなるかと思いましたが、やってみたら好評でもう6年目になるんです。ハッタリが効いたんでしょうか......。本人は結構どきどきしながらやっていたんですが(笑)。
休日はどのようにお過ごしですか?
友人や業界仲間と会って情報交換していますが、何かしら連絡が入るので、朝から晩まで100%休日! はなかなか難しいですね。たまに1週間ヨーロッパに行くんですが、思いっきり遊べばいいのに、何となく情報収集している自分がいて、何やっているんだと思うこともあります。
クラッシックバレエを25年やっているんです。「バレエをやっています」と言いたいが為に、必死で体重を維持しているようなところもありますが(笑)。先日仕事先の方に、何気なく「バレエをやっている」と話したところ、「高橋さんに対する見方が変わった」と言われたんです。コツコツ子供の時から努力を続けている姿勢を頼もしく感じたらしいのですが。時々言うといいかもしれませんね(笑)。言うからにはバレエを続けておかないといけませんが!
今後も通訳者として?
通訳という仕事を続けるかどうかは正直なところ分かりませんが、言葉にはこだわっていきたいと思っています。外国語に限らず、日本語に対しても、もっともっと深く理解できるようになればいいですね。外国語を使う時には、日本語に対する理解力が一番重要になってくると思うんです。そういう意味でも、言葉に対する勉強は一生続けていきたいです。

編集後記
たくさんのエネルギーをありがとうございました! 美佐さんとお話していると、私もどんどんポジティブになっていく気がします。目標実現までの努力、常に前へ前へと進んでいく姿勢、とにかく圧倒されっぱなしの1時間でした!
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Vol.18 「自分の言葉で伝える喜び」

【プロフィール】
小谷みゆきさん Miyuki Kotani
幼少時代をドイツにて過ごす。高校卒業後ベルギー、フランスに滞在。帰国後、上智大学外国語学部比較文化学科入学。在学中より、英会話講師、通訳のアルバイトを経験。卒業後、英会話講師、フリーランス通訳翻訳業を経て、現在はボーダフォン株式会社国際市場営業部所属のバイリンガルスタッフ(スーパーバイザー)としてボーダフォンショップ八重洲北口店に勤務。
バイリンガルサービスを提供する傍ら、スタッフ教育も担当しており、後輩からの信頼も厚い。

海外での生活が長いようですが、小さい頃から語学に対する関心は強かったのでしょうか?
そうかもしれません。ドイツ語が母国語のようなところもありますし、家ではドイツ語と日本語の両方で会話していました。私にとっての外国語とは、教科書で勉強するものではなく、直接耳で聞いて覚えるものでした。今は英語が一番得意な外国語ではありますが、ドイツ語もフランス語も「勉強して習得した」という自覚はそれほどありません。

学生時代から、通訳翻訳や英会話のお仕事を?
大使館などからご依頼を頂き、本当にいろいろと勉強させて頂きました。通訳翻訳には昔から興味がありましたし、もともと話すことが好きなので、毎回楽しかったという印象しかありません。英会話も教えており、卒業後も継続して働くことになったので、何となく就職活動のタイミングを逃してしまったような感じでしたが(笑)。

現在のお仕事は、未経験分野へのチャレンジだったと伺いましたが。
エージェントの方からこのお仕事を紹介して頂いたときは、正直驚きました。接客の経験もありませんし、自分にできるのかと不安でしたが、実際始めてみたら、もしかしたら向いているかもしれないと思いました。

具体的なお仕事内容を教えて頂けますか。
携帯購入サポートから、品質管理、外国人を含むお客様への応対、資料の翻訳、新人スタッフのフォロー、他支店でのスタッフ教育などです。イベントを行うこともあり、先日はインターナショナルスクールを訪問しました。スタッフ教育も担当することになったので、店頭に出る時間も少なくなりましたが、デスクワーク、メールのやりとり、翻訳などやる事が山積みです(笑)。仕事の枠を超えて、いろんな形で動けるのが楽しいですね。

やりがいを感じる瞬間は?
「ここへ来れば、英語でも分かってもらえる!」とおっしゃって頂くことがあり、そういう時はこの仕事をやっていて本当によかったと思います。お客様からの反応が直接返ってくる仕事だけに、やりがいもあります。何度も通って下さる方も増えてきました。通訳は人の言葉や意思を伝える仕事ですが、今は自分の言葉、自分のサービスによって、お客様に感謝して頂けることに喜びを見出せました。そのことを嬉しく思っています。

他支店で教育指導もされていると伺いました。
バイリンガルスタッフ導入は、八重洲北口店が初めての試みでした。パイオニアとおだてられながら入ったのですが、その後は横浜、名古屋、渋谷店でもバイリンガルサービスをスタートし、だんだんと人数も増えてきました。各店舗での情報共有が必要になり、たまたま私が選ばれました。面接段階から同席させて頂いておりますが、一番重要視するのは接客に向いているかどうかです。海外経験やTOEICの点数も考慮に入れますが、英語だけではなく、仕事に対する姿勢、一緒に働きたいと感じる雰囲気も大切なことです。

気をつけていることは?
直営店ということで、他支店で解決できないトラブルがあると、最終的にこちらで対応することになります。何か聞かれた時に、自分で100%確信が持てないときは、必ず周りに確認してからお客様に答えるようにしています。直営店の意見=ボーダフォンを代表することになりますので。
サービスも日々新しくなっています。社名変更もあり、いろんな変化を常にアップデートしていかないといけません。毎日覚えることばかりですが、お客様に聞かれたときに、きちんとお答えできるようベストを尽くしています。

皆さんとても仲がいいようですね。
誰かがミスした時は皆でフォローし、お互いに助け合いながらやっています。雰囲気もとてもいいですし、こういうところで働けること自体、大変嬉しく思っています。他のスタッフには、ママと呼ばれており、よくお昼休みには晩御飯の相談をされます(笑)。英語に興味がある方が多いので、Today's Englishと題して、時間がある時にミニレッスンを行っています。例えば、外国人のお客様がいらっしゃった時に、いきなりバイリンガルスタッフにバトンタッチではなく、「これから英語を話すスタッフを呼んで来ます」と言えるよう、フレーズを覚えてもらったり。皆さんできることはやりたいという気持ちがあります。電話がかかってきた時には、'Hold on, please'と言えるようにしておくなど。無言で他の人に変わるのとは、随分印象も違いますよね。その他場面ごと対話集も作ってあるので、時間のあるときに皆で練習しています。英語を覚えていこう! という雰囲気がある店なので、私もいろんな意味で触発されます。

もともと携帯には詳しかったんですか? 
機械音痴ではありませんが、携帯に関しては、話せればいいかなぐらいの気持ちでした。電波基準や技術的なことに関しての知識は皆無でしたので、最初は覚えることばかりで本当に大変でした。今も新製品が出る度、説明会に必ず参加します。

ご趣味は?
サッカー観戦が好きです。スタジアムに行けないときは、欠かさずテレビを見ます。ワールドカップの時は海外まで応援に行きます! オリンピック日本代表が決まったときも見に行ったんですよ。お客様ともサッカーの話題で盛り上がることもありますし、私にとってはサッカー観戦がストレス解消になっているのかもしれません。

語学を生かした仕事に就きたいと考えている方へのアドバイスをお願いします。
何が自分に合っているのかを、見つけてください。私自身は海外経験が役に立って、英会話講師、通訳翻訳を経て現在の仕事に巡り会いました。まだまだ自由に英語を操れる人は、それほど多くないので、いくらでも需要はあると思います。ただ「話せる」だけではダメなので、人間としての勉強もして頂きたいですね。

今後の目標は?
仕事面では、今後全国どこでもバイリンガルサービスが受けられるようになったらいいなと思います。プライベートでは、最近海外に行く時間がないので、ゆっくり旅行に行きたいです。再来年はドイツワールドカップですし!

編集後記
近未来的な制服が、とっても素敵でした。私の携帯を見て、「これは古すぎます! 2タイプ以上前の型ですよ」と小谷さん。お勧めのものがありますから、とご案内頂きましたので、近々八重洲店にお邪魔しようと思っております。
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Vol.17 「Just Carry On」

【プロフィール】
Stirk坂本三千代さん Michiyo Sakamoto Stirk
静岡大学人文学部人文学科英文学専攻卒業後、英語教諭として県内の高校へ赴任。退職後、エセックス大学Department of Languages and Linguistics(英国)に留学、Post Graduate Diploma in Applied Linguistics課程修了。2年間の英国滞在後帰国、インハウス通訳翻訳者を経て1983年にフリーランス会議通訳者に。政治、経済、金融、投資、科学技術、法律、知的財産、保険、環境、医学、社会、教育、
文化関係など、多くの国際会議にて活躍中。

高校の先生から通訳者へ転向されたと伺いましたが。
高校では約7年間教えていましたが、これまで読み書き中心に勉強してきたので、英会話は苦手だったんです。何か違うこと、新しい仕事をしたいと考えていましたし、英語力もこのままではいけないという気持ちもあって、イギリス留学を決めました。
2年間の留学後、ある会社の通訳訓練コースが大阪で始まることを知りました。通訳には昔から興味があって、もしかしたら何か新しい糸口になるかもしれないと入学を決めまました。

すぐにお仕事を始められたんでしょうか?
学校で6ヶ月間勉強しましたが、自分があまりにも物事を知らないことに愕然としました。英語教授法や「語学」に関する勉強はしてきたものの、通訳者になるには政治、経済、社会といった「世の中」に対するさまざまな知識が必須だということを痛感しました。
当時は通訳者の数も少なかったので、あらゆるチャンスに恵まれていたと思います。通訳者として必要な知識や技術は、実際に仕事をこなしながら現場で身につけていきました。先輩と組ませていただくことも多く、その都度いろんなことを教えて頂きました。今思うと、非常に恵まれていたと思います。

通訳者としての修行時代は?
企業の社内会議、レセプション、製品の売買、文化交流、提携や特許侵害に関する話し合いなどの通訳を担当しました。まだ仕事を始めたばかりの頃、ある外資系証券会社の担当者に随行してまわったことがありました。その時はじめて証券や投資に関する本を買って準備をしましたが、非常に難しかったです。初めて同時通訳のブースに入ったときも、すごく緊張して、普段できることもできなくなったのを覚えています。最初の数年は、仕事に行っても自分の力不足を感じることばかりでした。

緊張をほぐす方法は?
事前準備をすることです。準備ができていれば、当日ゆったりした気持ちで臨めます。準備不足の時は、「あ、ここはあまりよく分かってないな」と思うことで、余計に緊張しますから。今は本当に便利になって、インターネットでいろいろな資料を容易に入手できるのでありがたいです。検索すればするほど無限に情報が出てきますから、いかに効率的に探すかが大事だと思います。

印象に残ったお仕事はありますか?
長く続けている仕事の1つに、エネルギー関係の契約交渉通訳があります。もう15年になるでしょうか。多くのことを勉強させて頂きました。国全体のエネルギー環境など、本当に様々な問題が絡んできます。利害の対立で決裂しそうになったこともあります。話し合いの中にいると、問題が起きたときの対処の仕方から、最終的に合意に到るまでの過程を身近に見ることができます。世の中でビジネスがどのように行われているかを幾分なりと知ることができました。

この仕事をしていて、困ることは?
困る、というかとにかく思いがけない事が起こります。シナリオ通りにいかないのが、この世界の特徴だと思います。打ち合わせに演者が来ない、用意していた資料と全然違う内容の話しをする、機材不良で雑音が激しい、この部分は通訳しなくていいと言われていたのに、突然「やっぱり訳してください」と言われる、午前中で終わると聞いていた会議が夕方まで延びてしまうなど。いちいち数えあげることができないくらいです(笑)。どうこう言っていても仕方がないので、状況に応じてその場を切り抜けることが必要だと思います。私たちの仕事は裏方で、表面には出ません。会議を主催する人、聴衆、講演者が主役であって、その裏でいろいろと不測の事態が起こっても、会議が滞らないようにしなくてはなりません。とにかく皆さんに、この会議はうまくいったと感じてもらえるよう、できる事を精一杯やるのが私たちの仕事だと思っています。

通訳でよかったと思う瞬間は?
通訳の仕事を続けられることを、自分自身とても幸せだと思っています。人間が考えることの基本は言葉にあると思いますので、言葉に直接関わる仕事ができることが嬉しいんです。この仕事は、常に自分の前に乗り越えなくてはならないハードルが置かれるようなものかも知れません。ハードルを跳び越えながら一歩ずつ前に進んでいく仕事とでもいいましょうか。例えば、非常に難しい資料を読まないといけない、調べることがたくさんある、準備の時間がいつもいつもたくさんあるとは限らない、短時間で用語を覚えないといけない、きついスケジュールでつめて仕事をすることもある、睡眠時間が足りない等、すべての通訳が等しく経験していることだと思います。後で振り返って、自分で満足いくようなパフォーマンスができたと思うことは、ほとんどありません。毎回こうすればよかった、あの時の言葉はこう訳すべきだったと考えてしまいますから。通訳の仕事って、後で取り消したり、やり直しがきかないからいわば後悔の連続なんですが、だからこそいつも目標が持てるわけです。そのことを幸いだと思っています。

スキル維持の秘訣は?
普段使う言葉に気を付けるようにしています。日本語、英語問わず、毎日話す言葉は仕事の基本です。そして、「読む」こと。いろいろなものを見たり、人と会うことも大事ですが、言葉は本質的に読むことで培われると思うんです。

1週間のスケジュールは?
春秋は会議シーズンなので、結構ぎっしり埋まっています。オフシーズンはもう少しゆとりがあります。春と秋はとにかく忙しいですね。その代わりといっては何ですが、主人が毎年夏には国に帰りたいと言うので、私も休暇をとって、一緒にイギリスに行きます。休暇のあいだ、毎日山を歩きます。こう言うと優雅に聞こえるかもしれませんが、1年間一生懸命働いたあと、英気を養い、また一生懸命働くためです。

ご趣味は?
読書、映画、音楽です。自宅で本を読んだり、音楽を聴いたり、ケーブルテレビで映画を見て過ごすのが大好きです。
実は今、ジャズを習っているんです。本当に難しいんですよ。つくづくリズム感がないなと思います......。いつかジャズのスタンダードナンバーが歌えるようになれたらと思っています。

通訳を目指す人へのメッセージをお願いします。
自分にいつも課題が与えられるので、非常にやりがいのある仕事です。それだけに難しい仕事でもありますが、本当になりたいと思っているのであれば、諦めないで続けてください。JUST CARRY ON! 私の好きな言葉です。向かないなと思ったら、早めに切り上げるほうがいい、でもそれでもやりたいと思うのであれば、どんなことがあっても続けて頂きたいです。道が開けるかどうかは、運も左右しますが、とにかくこれだ! と思ったのなら是非とも追求してください。

編集後記
言葉の端々から、この仕事に対する愛情が伝わってきます。このコーナーでは、毎回人生勉強をさせて頂いている気がします。スタークさんや皆さんを目標に、私自身も道を切り開いていく努力を続けていきたいと思います。
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Vol.16 「趣味は勉強?」

【プロフィール】
島田彩子さん Ayako Shimada
関西学院大学社会学部卒業後、松下電器産業株式会社入社。出産を機に退社、通訳の勉強を始める。通訳学校在籍時から通訳の仕事を開始、在阪テーマパーク建設プロジェクト、大手メーカー社員研修セミナーでの通訳をこなす。2002年通訳技能検定準1級合格。現在は、フリーランス通訳者として活躍する傍ら、コングレ・インスティチュートにて講師も務める。


通訳を目指そうと思ったきっかけは?
大学生の頃、就職活動するのに何か一つくらい特技があった方がいいかなと思って、英語の勉強を始めました。卒業後、メーカーに国際要員として採用されたものの、実際にはあまり英語を使う機会がなくて。出産退職後、子育てだけだとノイローゼになりそうだったので、何かやろう! と通訳学校に通い始めました。仕事として具体的に考え始めたのはそれからですね。
英語は昔から得意だったのかと聞かれるんですが、実は恥ずかしい話、大学生の時に初めて受けたTOEICの点数が580点でした。本格的に勉強を始め、社会人になってから再受験した結果、930点。読み書きはできても、会話はままならず、外国人を見たらいつも逃げ出していました(笑)。

通訳学校では常に優等生だったと伺いましたが。
当時は入学テストも読み書きのみだったので、同時通訳科を薦められたんです。さすがに無理だろうと思って本科1に入れてもらいました。いざ授業が始まったら、本科1でもアップアップでした。とにかく先生に誉めてもらいたい一心だったんです。宿題を完璧にこなすわけではなかったのですが、衛星放送を毎日聞いて、逐次通訳の練習をしました。先生に「いいですね」なんて言われるとすっかりその気になって、おだてられたというか......(笑)。

分娩室に辞書を持ち込んだというのは本当ですか?
とにかく英語を何とかしたかったんです。妊娠中もずっと勉強を続けていて、出産当日は大学生の頃から作っていた単語帳を一冊握りしめて陣痛室に入りました。陣痛の間も暇になったら困るなぁと思って。実際のところ、すぐに生まれたので見る時間もなかったんですが。もともとアバウトな人間なのですが、英語だけは例外でした。いろんな表現を吸収して、どこかでうまく使えた時が嬉しいんですよ。

仕事の前は緊張しますか?
あまり緊張はしません。同時通訳のブースも入ってしまえば、やるしかありませんから! 前日は心臓バクバクです(笑)。できるだけの準備をして仕事に臨むよう心がけています。帰国子女ほど耳がいいわけでもないし、通訳技術もまだまだだと思っています。だからこそ、事前準備で誠意を尽くしたいんです。資料は出ないことが多いので、インターネットで情報を集めたり、例えばその企業のHPがなくても、同業種の会社を調べて使えそうな単語をリストアップします。

今だから言える失敗談は?
いろいろあります。固有名詞を取り違えて見当違いな訳出しをしてしまったことがあります。「松下」を「マサチューセッツ」とか! 気を使ってか、どなたも指摘して下さらないと、自分で立ち直るしかないというか......(笑)。おそらくこういったことは、通訳者なら必ず経験しているのではないでしょうか。

プロとしてこころがけていることはありますか?
睡眠をとることです。集中力をキープするために夜10時半には寝ます。朝4時半に起きて、6時半に子供を起こすまでが勉強時間です。『朝2時起きで、なんでもできる!』という本に影響されて2時に起きてみたんですが、お昼の12時ぐらいから眠くて眠くて(笑)。いろいろやってみた結果、私には4時半が一番合うようです。この生活はもう5年ぐらい続いています。

もう外国人を見ても、逃げませんか?
いえ、逃げます(笑)。通訳はできても、フリートーキングは今でも緊張気味です。楽しそうにお喋りしている仲間をみるとうらやましいんですが、会議に入ってからが勝負と考えるようにしています。長いプロジェクトになると、みんな仲良くなって世間話をするんですが、私はあまり率先しては加わらないほうですね。

ご趣味は?
仕事です(笑)。平日子供がいなくて、仕事も入っていない時は、明け方プラス朝の9時から夕方4時まで勉強しています。不思議と嫌にならないんですよ。もちろん一日中通訳練習をしているわけではなくて、新聞や本を読んだり、ニュースを聞いたりと、いろんなことをしています。自分でもバカみたいだなぁと思うんですが......。

現在は、通訳学校で教えていらっしゃると伺いましたが。
皆さんいろんな事情があるとは思いますが、「半期休んで、次のタームから来る」のは本当にもったいないと思います。英語や通訳の勉強は、毎日続けないと維持できないので、半年休んでしまうと次が大変です。それまで勉強してきた事が無になってしまいますから。「半年前までやっていたから!」と思っていても、知らない間にレベルが落ちていたり、以前分かった単語が分からなかったりというショックで、ストレスをためることになると思うんです。
継続は力なりだよといつも授業で話しているんです。通訳になるのは「諦めなかった人」です。誰でもスランプ、結婚、転勤などいろんな状況があると思います。学生ではないので、勉強だけしていればいいというわけにもいきませんよね。勉強を続けるのが困難な理由は100も200もあると思いますが、それでも「続けたい!」と思える人だけが、通訳になれるのではないでしょうか。


編集後記
今回は大阪でのインタビューでした! 毎回、お会いするたびに「太ったの」とおっしゃいますが、私の半分ぐらいにしか見えません。趣味は勉強という話を聞いて、成功する人は、皆さん本当に努力しているんだなぁと再確認しました。
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Vol.15 「1%のひらめきと99%の努力」

【プロフィール】
伊藤実和子さん Miwako Ito
平安女学院短大英文科卒業後、株式会社クボタ入社、鉄工海外輸出部に勤務。社内初の海外出張を経験し、同時期から通訳学校に通い始める。1998年通訳学校同時通訳コース卒業と同時に、フリーランス通訳者として活動を開始。現在、国際会議トップ通訳者として第一線で活躍中。

語学はもともとお得意だったんですか?
いえ、もともと英語は嫌いだったんです。きっかけは高校1年の時なのですが、当時私は貧血がひどくて入院することになってしまい、それまで熱中していたバレーボールをやめなければならなくなったんです。さてどうしようかと思っていた時に、偶然NHKラジオのテキストを見かけて、これでもやってみるかなぁと軽い気持ちで始めました。やっているうちに面白くなり、朝晩必ずテキストを開いて勉強しました。短大でも英文科に入ったんです。帰国子女でもなく、全て日本で勉強したので、英語に対するコンプレックスもあったんですが。

通訳を目指そうと思ったきっかけについて教えて下さい。
クボタでは、エンジンやトラクターを海外に輸出している部署で、北米輸出業務を担当しました。英語を使ったのは、海外から電話があった時に取りつぐぐらいでした。総合職ではなかったんですが、上司が大変理解のある方で、いろんな仕事を任せて頂き、海外ビジネスに関しても勉強させて頂きました。その頃から、ビジネス英語を勉強するようになり、上司の薦めもあって海外出張にも行かせて頂きました。

仕事自体は非常に面白かったんですが、仕事に対するチャンスは男性に比べて閉ざされているなと感じたんです。それなら、企業の中で上に進んでいくよりも、手に職をつけようと思い通訳学校に通うことにしました。会社に行きながら、夜学校に通う生活を続け、卒業と同時に会社を辞めて通訳者として生きていく決心をしました。

通訳者としての最初のお仕事は?
米国系テーマパークでのプロジェクト通訳です。エージェントからの派遣で、9ヶ月間仕事をしましたが、最初は本当に大変でした。建築家に付いて通訳をすることになったものの、当時建築の事なんて何も知らないし、ゼロからのスタートでした。いくら通訳学校で勉強したとは言え、生きた英語は全然違うんです。聞いた事は全て書き留めるようにしました。先輩に「こんなことも書いてるの?」とびっくりされたこともあります。その甲斐あってか、周りにも認められ仕事が楽しくなってきたことを覚えています。
七つ道具
(パソコン・ストップウォッチ・双眼鏡・
イヤフォン・付箋・のど飴・ペン)

英語に対するコンプレックスがあったと伺いましたが。
最近までありました。小さい時に海外で生活していなかったので、英語に関しては入ってくる情報源が限られていたんですよね。最近ようやくコンプレックスから解放されたんですが、多分それは毎日英語を使っていることと、国際結婚をしているという理由からかもしれません。以前は、外国人とはビジネス間では親しくなっても、個人的に仲良くなることはあまりありませんでした。国際結婚をして、夫の両親や友達と頻繁に会い、プライベートで海外に行くことも多くなったんです。日常的に英語を使う比重が多くなるにつれ、自然とコンプレックスもなくなりました。

特に印象に残ったお仕事は?
あまりにも仕事をしすぎて思い出すのが難しいんですが、IC発明者であるジャック・キルビー氏(テキサスインスツルメンツ社名誉顧問)の通訳をさせて頂いた際のエピソードが印象に残っています。ノーベル賞を受賞されていて、周りの人も神様のように接していましたが、ご本人は本当に謙虚な方なんです。「どうすればそのような素晴らしい発明ができるのですか?」という質問に対して、エジソンの言葉を引用され、「1%のひらめきと99%の努力」とおっしゃったんです。それを聞いて、あぁ彼のように偉い人でも、そんな風に考えているんだなと感動しました。私も今まで、努力すれば何とかなると思ってやってきたので、本当にお会いできて光栄でした。通訳の醍醐味は、こうやっていろんな方に会えることだなぁと思った瞬間でしたね。

得意な分野は?
その時々で変わるんですよ。建築から入ったこともあり、どちらかというと技術系が得意です。原子力関係では、よく出張にも行きました。結婚出産を機に出張を控えてからは、通信・半導体を中心に仕事を受けています。最近は本当に多様化していて、一時は環境問題、今は経営や経済、投資が多く、時代とともに請ける通訳内容も変わります。好きな分野についてよく聞かれるんですが、どの分野も分かってくると面白くなるんですよ。スピーカーの意図をくみ取り、自分の言葉で訳せるようになると本当に楽しいです。

プロとして心がけていることは何ですか?
できるだけ前もって勉強することです。簡単な内容でも、事前に勉強しておくと、当日のパフォーマンスが格段に違います。無駄な努力になるかもしれませんが、自分でベストを尽くしたと思えば、「後はもうやるだけ!」という気持ちになれます。事前準備が当日の自信になるんです。それから、状況に応じて通訳をすること。お祭りのようなイベントの時は、正確さよりも、言葉を少々割愛しても場を盛り上げるよう通訳できればいいなと思いますし、逆に技術的なものは落とさないようにします。録音が許可される会議では、自分の通訳パフォーマンスを録音することにしています。自分の英語・日本語の出し方がどうだということだけでなく、マイクを通した声が聞きやすいかどうか、変な「あの、その」が入っていないかが確認できます。今後のパフォーマンスにつながり、非常に役に立ちます。

家事とお仕事の両立はどうされていますか?
ベビーシッターさんをお願いしているので、彼女との連携さえうまくいっていれば、その他の家事は何とでもなります。仕事と両立するようになって、難しいなと思うのは事前の勉強です。昼間は子供と過ごし、夜に睡眠時間を削って勉強するのは体力的に無理なので、「勉強しながら子供と一緒にいる」ことがうまくできればいいのですが。

今後のキャリアプランは?
もともとプランを立てないタイプなので、行き当たりばったりです。面白い! と自分が感じることに力を入れてきたので、もし運命があるとしたら、その風が吹いてくると思うんです。そのまま方向転換すれば、別のキャリアが待っているかもしれないし、通訳を続けるとしたら、自分が満足できるまでやりたいと思っています。

編集後記
インタビュー後、米国移住されたとのお便りが届きました。米国でも通訳者としてご活躍されていること間違いなしだと思います! NHKテキストの効果的活用法の秘訣は、「ラジオの声をリピートすること。自分の声を録音してみること」だそうです。毎日やらないといけませんよ! とアドバイスを頂き、私も早速スペイン語テキストを購入しました。現在1ヶ月続いております!
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