HOME > 通訳 > マリコがゆく 第46回〜第50回

マリコがゆく
覗いてみませんか?、あなたの知らない通訳者の世界。
普段、表では「語られないかも」しれない通訳の実態、 要望、ホンネ、ときどき不満を現役通訳者マリコがお届け。時に過激に、時に優雅に。通訳者マリコは今日もゆく!
 
通訳の敵!万国共通・オヤジギャグ
 

通訳をしていると、「国や文化が違っても、人間って基本的なところは変わらないのね」としみじみすることがありますよね。

特にその思いを強くするのは、「外国人がオヤジギャグを放ったとき」です。

「オヤジギャグが好きなのは、日本人だけじゃないのね・・・」

しみじみしながら、ちょっと肩を落としてしまいます。

たとえば、社内通訳をしていたときのある男性上司。ミーティングから戻ってきた彼は、"Oh, you are back!(ああ、帰ってきたのね)"と声をかけられてこう答えていました。

"No, this is not my back. This is my front.(僕の背中じゃないよ。こっちは前だよ)"

・・・わかります?backに「背中」の意味があるのを、かけているんですね。そのあと後ろを振り向いて、"This is my back.(背中はこっちだよ)"とわざわざギャグの解説までしてくれました・・・。

この上司、あまりにみんなから「オヤジギャグが寒い、寒い」と言われるので、そのうちオヤジギャグを放った後に日本語でこう訊いてくるようになりました。

「サムイデスカ?」

「はい、凍えるほどに」。そう心の中で答えておりました。

こんな上司ですから、当然ミーティングの場でも度々オヤジギャグを放ちます。そして通訳のわたしは、それを訳さなきゃいけないんですよね。もう、寒さ2倍です。しかも、わかりにくい場合はオヤジギャグの解説までしなきゃいけないんですから・・・。

「わたし、一体何やってるんだろう?」

訳しながらうつむいていってしまうのでした。

通訳泣かせのオヤジギャグ。困っている通訳者は多いはず。なんとかしてオヤジギャグを追放できないものでしょうか?エージェントさんからお客さまへの注意事項の中に「オヤジギャグはご遠慮ください」と盛り込んでもらうとか?それでもきっと出てくるオヤジギャグを撃退するには、どうすれば?

効果的なオヤジギャグ撃退法をお持ちの方、ぜひ伝授してください!

 
通訳は季節労働者
 

通訳者のみなさん、「わたしって季節労働者みたい」と思ったことはないですか?

通訳者の稼ぎ時といえば、やっぱり秋ですよね。学会やセミナーが集中するこのシーズンはお仕事も増えます。来日ついでに観光などをしていくお客さまも多いせいか、全体的に需要が高まりますよね。

そして、春。気候がいいせいもあるのでしょうか、お仕事の話もぼちぼち増えてくる時期ですよね。

逆にオフシーズンといえば、夏と冬。業界全体がこの時期はしぼんでいくような感じがしませんか?「秋にはあんなに仕事の依頼があってお断りするのが大変だったのに、どうなっちゃったの?」という経験をみなさんもされたことがあるでしょう。

「じゃあ、春と秋にしっかり頑張っておかなくっちゃね」ということになるわけですが・・・ここで問題発生です。

春といえば・・・そう、花粉症。御多分に洩れず、わたしも春はティッシュが手放せないのです。鼻の皮がむけて、その状態で化粧をしたらすごい事態になったり。鼻のかみ過ぎで鼻の下が赤いのもこの時期はデフォルトです。

おまけに声変わりはするは、メモをとるのに下を向いたら鼻が止まらなくなるは、肝心の集中力なんてあるわけないは・・・もう、商売の邪魔もいいとこです。

ティッシュで鼻を押さえながら涙目で通訳をしているのって、どうなんでしょう?プロのプライドも何もあったもんじゃありません。「もう何でもいいから、とにかく鼻かませて!」という感じです。社内通訳だったら、「ちょっと待って」とばかりに通訳の途中に何度も「鼻をかんでリセットタイム」が入ります。

トドメを刺すように、最近は新たな問題が・・・そう、秋の花粉です。ひどい年なんかは、秋にもティッシュの箱を抱えて移動していました。

秋の花粉が問題になってきたのは、猛暑のせいでした。それも元はといえば、異常気象を起こした温暖化のせい。ということは・・・

地球環境を守らないと、通訳者までが絶滅危惧種になっちゃいます!

 

 
 

こんな話し方をするお客さまって、結構多いと思いませんか?

「このロールを決めて、リソースをアサインしなきゃいけないんだよね。あと、ここのポジションはハイヤリングするから。ジョブ・ディスクリプションをファイナライズして、アプルーバルもらおう。クリティカルなイシューはやっぱりコスト・リダクションのとこだね。ディテールをつめてプロポーザルを仕上げないと」

こんなお客さまのことを、「カタカナさん」とわたしは呼んでいます。外資系企業だと、これぐらいならまだ「普通」の領域かもしれませんね。「なにもそこまで」っていうくらい、カタカナを連発する人の多さに驚きます。

そこまでやるなら、自分で英語でしゃべれば?

通訳する身としてはごく自然にそんな感想を抱いてしまいます。でも、不思議なことにみなさん、英語で話すわけではないんですよね。話せそうではあるんですが、通訳を使うことにこだわる方が多いのです。

カタカナさんの通訳をしていると、なんだか、「用語指定」されている感じなんですよね。そのまま英語の発音にしていけばいいので、たいていの場合は楽といえば楽なんですが。

でも、ときどき「このカタカナは英語だとしっくりこないから別の言葉を使いたい」っていうときもありますよね。なのに、「カタカナさん」に限って、妙に用語指定にこだわりがあるんです。「この言葉を使って訳してほしい」というのがビンビン伝わってくる感じです。用語指定された言葉を使うごとに「+1点」とカウントされていくような・・・。

別の言葉を使って訳してしまうと、「どうしたんだ!?俺の指定した用語を使ってないじゃないか~!」という気配を感じ、こちらも「だからその用語指定じゃ伝わらないのよ!わかって訳してるのよ!」というオーラを発して対抗します。そんなひそかな心理戦を繰り広げることもあるんですが、これって結構体力消耗するんですよね・・・。

言ってもいいですか?

「や、やりにくぅ~!」

 

 
 

みなさん、『ドラゴンボール』は詳しいですか?

わたしは結構詳しかったりします。なぜって、浪人時代を支えてくれたのが『ドラゴンボール』だったんです。一日中勉強して、頭がショートしてくる頃にちょうどアニメで『ドラゴンボール』が放送されていたんです。戦う悟空の姿に励まされ、浪人時代を乗り切ったわたしです。(ちなみに「マリコ浪人時代・夜の部」はバーボンと中島みゆきが支えていました・・・。」)

そんなわたしなので、なんでも『ドラゴンボール』に結びつけて考えてしまいます。もちろん、通訳のことも・・・。

通訳は、サイヤ人です!

サイヤ人は、死にかけてから復活すると格段にパワーアップします。通訳にも同じことがあてはまると思いませんか?

同時通訳を一日やりまくって。アタマの中に字幕が流れ出して。脳細胞が死に絶えていくのをひしひしと感じて。休んでも休んでも疲れがとれなくて。

そんな修羅場を乗り越えると・・・いつの間にかちょっと違う次元に移行しているのです。

もちろん、適量の通訳(1日2-3時間程度)をゆったりしたペースで続けるのも実力がつくんですが。それよりも、「このままじゃ殺される!」という危機感を感じるくらいの無茶な通訳を一時期集中してやるほうが、早く別次元に移行できるようです。

『ドラゴンボール』の中でも、「強敵と戦うため短期間で戦闘力をアップさせなきゃいけない」という場合、何度も死にかけることで大幅なパワーアップをするシーンがありました。ということは、「大きな仕事を控えて短期間で通訳力をアップさせなきゃいけない」場合は、その前に過酷な通訳をするといいのかも・・・?

以前、「どうやったら同時通訳ができるようになるんですか?」という新人通訳者の疑問に答えて、ある通訳者が「ビッグ・バンがあるんです!」と答えていました。「はあ、ビッグ・バンですか・・・」としか反応のしようがありませんが、今なら言わんとしていたことがわかるような気がします。

ビッグ・バンは、スーパーサイヤ人になることですね!

・・・ということは。

逐次通訳者=サイヤ人

同時通訳者=スーパーサイヤ人

じゃあ、スーパーサイヤ人2とか3は??

 


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プロフィール

寺田真理子

寺田 真理子さん
幼少時から中学までを、メキシコ、コロンビア、ベネズエラにて過ごす。東京大学法学部卒業後、国際会議コーディネーターを経て、通翻訳者デビュー。その後、数社にてインハウス通翻訳を経験し、2004年にフリーランス通翻訳者として独立。出版翻訳も手がける。