HOME > 通訳 > マリコがゆく 第66回〜第70回

マリコがゆく
覗いてみませんか?、あなたの知らない通訳者の世界。
普段、表では「語られないかも」しれない通訳の実態、 要望、ホンネ、ときどき不満を現役通訳者マリコがお届け。時に過激に、時に優雅に。通訳者マリコは今日もゆく!
 
 

1年以上にわたる長期連載となった『マリコがゆく』も、今回が最終回となりました。

連載中は読者の通訳者・通訳志望者のみなさまから温かいメッセージをいただき、励まされました。そして、ハイ・キャリアさんの丁寧なサポートのおかげで、楽しく連載を続けることができました。みなさま、本当にありがとうございました!

連載を終えて、マリコもほっと一息・・・ついてません!マリコのイラストそのままに、必死の形相で走ってます!

これまでずっと通訳の話をしてきたので、最後にそれ以外の「知られざるマリコ」の活動をご紹介しましょう。

まずは、認知症の介護関連の活動。Hi careerライブラリでもご紹介いただいた『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』マリコが「自分で訳して、自分で読んで、自分で感動して泣く、一粒で三度おいしい本」です!)に引き続き、2冊目の翻訳書となる『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』をこの8月に出版しました!

この分野はライフワークになりそうなので、これからも定期的に翻訳書を刊行していくことでしょう。講演などもやらせていただいているのですが、講演録も本としてまとめる作業が進行中です。『真摯なマリコ』を知りたい方は、この分野の活動をチェックです!

「忙しいよ~」が口ぐせになりながらも、仕事の合間を縫っては仏教や万葉集、古典、心理学その他もろもろの講座に通っています。その勉強の甲斐あって何とか務めさせていただいているのが、人間学の雑誌『致知』の英訳です。『実は真面目な努力家マリコ』がお好きな方は、こちらをチェック!

そして、今年の秋には、著者デビューが決まりました!ソフトバンククリエイティブ社から、「うつ」をテーマに自らの体験談をエッセイにして出版します。『シリアスなマリコ』を知りたい方はこちらをチェックです!

著書には『幸運を呼びよせる 朝の習慣』『いい明日がくる 夜の習慣』が大ヒットの佐藤伝氏が監修という形でバックアップしてくださるほか、「日本一企業顧問数の多い心理カウンセラー」として著名な衛藤信之氏が寄稿してくださいます。そう、あとはマリコがしっかり書くだけです!

というわけで、机にしがみついて残暑を過ごしているマリコなのでした。

これからも、あっちに、こっちに...マリコがゆく!

 
 

使い方のわからないものがあったら、取扱説明書に目を通しますよね?

通訳の仕事をしていると、通訳者の使い方を知らないお客さまに悩まされることが多々あります。事前に「通訳取扱説明書」をお渡しして、眼を通していただきたいと思ってしまうのですが。たとえば、こんな「通訳取扱説明書」はいかがでしょう?

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1.たくさんお水をあげましょう

10人いたら、10人分しゃべるのが通訳です。

2.資料をきちんとあげましょう

資料は通訳の肥料です。通訳者は、あなたのことも、あなたのお仕事のことも知りません。ちゃんと通訳してほしいなら、事前にきちんと勉強させましょう。

3.快適な音環境を整えましょう

ウィスパリングをしているそばで私語なんて、もってのほか!

4.ちゃんと休憩させましょう

通訳は脳も体力も激しく消耗するもの。このお疲れ顔見たら、わかるでしょ?

5.早口禁止!

あなたは勝手にしゃべればいいけど、こっちは訳してるんです!他人にわかってほしいなら、適度なスピードで。

6.オヤジギャグお断り!

通訳者のほうで不要とみなして処理させていただきます。

7.風邪をひいてる人、近寄らないで!

通訳はノドが命なんですから。

8.通訳者とお世話係を間違えないように

言葉ができるからって、何でもかんでも頼めると思ってはいけません。

9.意地悪チェック願い下げ

言葉がわかるあなた。意地悪な目で通訳をチェックするのはやめましょう。言葉がわかるのと通訳するのは別物です。

10.まともなこと、しゃべってください

編集料金はもらってないんですから。通訳したものがおかしかったとしたら、それはあなたの発言がおかしいせいです。

11.議事録作成はいたしかねます

このメモは通訳するためのもの。仕事が済んだら内容は忘れてしまいます。

12.機材扱いお断り!

そもそも通訳者も人間である」との前提で取り扱いましょう。

13.お食事つきで

通訳者も、おなかがすきます。目の前でおいしそうに自分たちだけ食べないでください。通訳者にもきちんと食事を!できれば糖分補給のために、甘いものなんかもいただきたいものです。

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無茶なお客さまにお困りの通訳者のみなさん。どうぞご自由にプリントアウトしてお使いください。みなさんの快適な通訳環境を応援しています!

 
 

「通訳」というのが、似合わなくなってきた。

そう感じることがあります。

洋服のように、「通訳」という服がよく似合って、ずっと定番で着てきたけれど、似合わなくなってきた。だけど、気に入っているから、捨てたくない。

だったら、アレンジして着こなせば?

スーツだったら、ジャケットだけ使って別のパンツと組み合わせたり。アクセサリーを変えてみたり。ひとつの着方にこだわらずに、自分なりにアレンジしますよね。

そんなふうに、「通訳」も自分に似合うように着こなしていけばいいと思うのです。

「通訳、かくあるべし」

通訳学校だと、まるで洗脳のように、「通訳っていうのはこういうもんなのよ!」と刷り込まれがちです。 常に通訳のことを考えて、何事も通訳つなげなければなりません。

かくいうマリコも、以前は「24時間、なんでも通訳に関することをしてなくちゃ」と思い込んでいるタイプでした。通訳以外のことをしていると、妙な罪悪感を覚えてしまうほど・・・。

でも、そうして生きていると、どんどん人間の幅が狭くなっていっちゃうんですよね。得られるものよりも、人として大切なものが、すごく損なわれてしまうんです。

通訳の仕事上、通訳スキルのことにばかりどうしても目がいきますよね。他の仕事よりも、人間的なスキルを育てることに目を向けなくてすむかもしれません。

でも、お客さまの身になってみたら、「ガツガツ通訳の腕ばかり磨いているけど、髪振り乱して雰囲気が険悪で、協調性がなくて一緒に居たくないタイプ」にわざわざお仕事を頼もうとは思わないですよね?

通訳の勉強も、仕事も大変です。でも、そこにはまり過ぎて「自分がどんなふうに生きていきたいのか」「自分がどんな人になりたいのか」を見失ってしまったら、もったいないですよね。

「教え込まれた通訳像」に、みんなが合わせることはないでしょう?

もっと一人ひとりが「通訳」を自分に似合うように着こなしていけたらいいなあと思うのです。

 

 
 

「い、いま、リテンションが効かなかった!」

居並ぶ通訳者たち、レストランで愕然!

あれ?でも、今ってリテンション効かせるところじゃないのでは・・・? 

そう、だって今は仲間内でのランチタイム。

「本日のデザートは、ショートケーキ、季節のタルト、アーモンドプリン、ティラミス、抹茶アイス、チーズケーキの中からお選びいただけます」

そんなデザートのご紹介で、リテンションなんて効かせなくてもいいですよね。なのに、ついついやってしまう。これは立派な職業病?

まあ、大御所の通訳者でも、通訳の勉強を始めた頃は何がなんだかわからず、レストランのメニューを覚えるという「勘違いリテンション」を訓練していたって言いますし・・・。意味のないところでおかしな頑張り方をする必要はないんですけどね。

普段からリテンションの訓練をしていると、仕事と関係ないところでもついやってしまうんですよね。

でも、通訳者のみなさん、リテンション能力は隠しておかなくちゃ!

だって、ただでさえ「通訳は辞書」と思って活用してくる人が多いんですからその上に「通訳は何でも覚えてる」と思われたら、大変です。

たとえば、お酒を飲んで楽しくなってきたときに・・・。

「ここのお店って、やっぱりくつろげるよね~。店長の気配りも行き届いてるし・・・あ、気配りが行き届いてるって英語でなんて言うの?

「ねえねえ、さっきのワインリスト、おいしそうなのがいっぱいあったよね。どんなのだったっけ?どこの産地でどんな味って、お店の人が説明してくれたよね。なんて言ってたか、もう1回全部教えて

・・・楽しくありません!

「通訳は飲みに行っても飲めない」なんて、新たな通訳の特質ができてしまいかねません。

通訳者のみなさん、リテンション能力はくれぐれも内密にお願いします!

かくいうわたしは、通訳者として忘却力を鍛えまくった結果、その忘却力がリテンション能力にまで影響しているような気がしてなりません・・・。

 

 
 

「LとRの発音の研究に1年を費やした」

そんな話を聞いてびっくりしたことがありました。この方、なにも言語研究をお仕事にしてるとかいうわけじゃないんですよ。ただ、英語が好きで勉強してて、発音につまずいたそうなんですが...。うーん、すごいです。その熱心さがあれば、世の中たいていのことはできるのでは?というより、その1年でもっといろんなことができる気がしてしまいます...。

韓国では、LとRの発音ができるようにするために、子供のうちから舌を切るという話も聞いたことがあります。なんだか壮絶です。

「LとRの区別に、そこまでの価値があるわけ?」

語学を生業としているとはいえ、まっとうな神経を保っているつもりのマリコとしては突っ込みたくなります。

でも、世の中には「LとRさえ美しく区別できたら、あとはどうなってもいい!」みたいな宗派の方々が結構いるようなのです。

そんなことにこだわらなくても、「めっちゃジャパニーズ・イングリッシュ!」の通訳者陣が活躍しているのは、みなさんご承知の通りです。LとRの発音にとらわれて先に進めないよりは、どんどん英語を使ったほうがいいと思いませんか?そのほうが、絶対上達も早いし、世界も広がっていくはずです。

あまり発音にこだわらないのは、私の英語が南米訛りだからでしょうか......。

そもそも現場では、インド訛りやら中国訛りやらで、LもRもありませんものね。間違えたって、そんなのは死活問題じゃないですよね。

あっ!でも、これだけは!

ElectionとErection。

こ、これだけは間違えないで頑張っていただきたいところであります!

 


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プロフィール

寺田真理子

寺田 真理子さん
幼少時から中学までを、メキシコ、コロンビア、ベネズエラにて過ごす。東京大学法学部卒業後、国際会議コーディネーターを経て、通翻訳者デビュー。その後、数社にてインハウス通翻訳を経験し、2004年にフリーランス通翻訳者として独立。出版翻訳も手がける。