INTERPRETATION

春学期

木内 裕也

Written from the mitten

 ミシガン州立大学の春学期が始まって約1ヶ月が経ちました。今学期はScience and Technologyと呼ばれる授業を3つ担当しています。これは1年生や一部の2年生向けに開講されている授業の1つで、科学やテクノロジーが私たちの生活やアイデンティティーにどのような影響を与えているのかを考察する授業です。先学期に同じ授業を2つ担当していましたが、少し内容を変えて教えています。

 この授業はWriting, Rhetoric, and American Culturesという学部の授業です。MSUの学生は皆、Tier One Writingと呼ばれるライティングの授業を履修しなければなりません。この授業を履修して、合格点をもらわないと、卒業ができない規則になっています。多くの学生は1年次や2年次に履修しますが、中にはF(落第点)をもらったまま際履修せずにいて、3年生や4年生になって急いで履修している学生もいます。

 今学期は写真にあるように、それほど大きくない教室で25名の学生が履修しています。まずは「テクノロジーとは?」という定義から授業は始まります。David Nyeという学者がTechnologyを”modified surrounding environment”と定義しています。この定義によれば、野原に枯葉を集めて火を作ることもテクノロジーになります。多くの学生はAdvancement、Progress、Electricityなどをキーワードに定義していましたから、それよりももっと多くのものが実際にはテクノロジーに含まれます。

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 またScreen Activitiesという名前のアクティビティーも行います。これは数時間のうちに、どのようなメディアを使ったかを記録するものです。多くの学生はTVをつけながら、パソコンで宿題を行い、その間に音楽を聞き、数十通の携帯メールを送受信します(学生によっては2時間で100通を超える場合もあります)。そうすると例えば2時間であっても4時間以上のScreen Activityを行っています。またPC上ではメールをしたり、SNSのサイトをチェックしたり、IMというサービスで友達とチャットをします。そう考えると、「最近の若者はパソコンの前に座ってばかりで、人との付き合いをしない」という見方が必ずしも正しくないことが分かります。実際には数十年前の若者がただTVを見つめていたのに対し、今の若年層ではスクリーンの前に受動的に座っている時間が大幅に減少しています。

 携帯メールを使ったアクティビティーでは、数百通の携帯メールの受信元や送信先を一覧化し、それを地図上に表示します。すると、地理的にどこからメールが届いたのか、送信したのかが視覚的に分かります。送受信されたメール数に比例する形で矢印を大きくすれば、どこに住んでいる人を中心にメールのやり取りが多くされているのかも分かります。例えば私の場合は携帯メールの半分以上は自宅から半径10キロ以内とやり取りがあります。また90%以上が5人の友人とのやり取りです。メールのやり取りで同じようなアクティビティーをしてみると、携帯メールよりも多様な人々とコミュニケーションをしていることが分かります。この比較だけでも、携帯メールをPCメールの基本的な違いが見えてきます。

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木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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