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Written from the mitten

木内裕也さんのアメリカレポート。2005年春-2006年夏まで、Hubbub from the Hubのニックネームで通翻訳者リレーブログを担当して頂きました。2009年5月にミシガン州立大学(MSU)博士課程を修了、博士号を取得された木内さんから見た、現地での生活やハプニング、大学のことなど、アメリカの今を発信します。 通訳・翻訳の話をまじえながら、幅広いテーマに沿ったレポート、毎週月曜日更新です!どうぞお楽しみに!

アメリカの都市

 日本の小学生が都道府県の場所と、都道府県庁所在地を覚えるのと同じように、アメリカの子供たちも州の場所と州都の場所を覚えます。興味深いのは、それぞれの州で一番大きかったり、有名だったりする街が州都であることが少ないこと。その筆頭となるのがニューヨークでしょう。ニューヨーク州は、一般的に私たちが想像するマンハッタンのあるニューヨーク市から、ナイアガラの滝があるカナダとの隣接部まで広がる大きな州です。その州都はニューヨーク市にあると思いがちですが、実際にはAlbany市が州都。自動車でニューヨーク市の中心部まで3時間くらい掛かる場所にあります。私の住むミシガン州も、デトロイトが非常に有名です。今では自動車業界の衰退によって産業は成長していませんし、ここ数十年は治安もそれほどよい場所ではありません。しかしミシガン州で最大の街であることは確か。それでも州都は私の住むEast Lansing市の隣にあるLansing市です。このように、あえて州都を中心都市からずらしてあるのは、産業や経済の一極集中を避けるためであるとも言われています。

 またアメリカの都市を訪れて感じるのは、都市がある意味で使い捨てになっていること。日本のように敷地が限られているわけではなく、どんどんと次の開拓地域を求めることのできる国土の広さがあります。ボストンやニューヨークのように発展してしまうと別ですが、そこまでではない場合、数十年間の発展を見た地域が次第に人口を失い(若い人がより大きな都市部に引っ越すなど)、産業も勢いを失って、廃墟のような様子を持った街が沢山あります。それらの地域は大小さまざまですが、それをあえて復興させようとするのではなく、その地域を諦めて次の場所を求める傾向もあります。

 デトロイトも20世紀中ごろに勢いを失って、廃墟と化した場所がたくさんあります。それを復興させようという流れはほとんどありませんでした。マイナスの流れを止めようという努力はされていましたが、なかなかその地域に投資する人もいなくて、デトロイトの中心部だけは近代化されたものの、少し離れると相変わらず昔のままであったりします。これは非常に残念なことです。

 都市部の治安が悪くなると、一層人がその地域を離れる傾向にあります。ビジネスも、住民も、観光客もその地域を避けるためです。その結果、地元の住民や観光局が協力して治安維持の努力がなされます。私は今、ノースカロライナ州にあるRaleighという街に学会で来ています。ここも夜になるとあまり人が歩いていない場所です。ジョージア州のアトランタでも感じましたし、アメリカの様々な街で感じることですが、街のいたるところに治安維持のための住民や職員が立っています。観光客にとっては、迷子になりそうになったらすぐに質問できるのでありがたいです。またある程度治安維持にもつながっています。ただ特定の地域の治安だけ守られていて、問題の根本的解決にはなっていないとも感じます。ニューヨーク、サンフランシスコ、ボストンなど大都市と呼ばれる地域ではない場所を訪れると、都市の発展、観光の促進、そして治安維持が、地域の住民にとってある意味で住みにくい環境を生み出しているようにも感じます。


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プロフィール

木内裕也

木内 裕也さん
フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。