INTERPRETATION

サービス業はむずかしい

柴原早苗

通訳者のたまごたちへ

 「時間がない。自分よりもプロに頼んだ方が結局は時間の節約になる」。そのような状況の時、私は迷わずプロのサービスを頼りにしています。たとえば私はアイロンがけや複雑な洗濯が苦手なので、季節の変わり目にはクリーニング店のお世話になりますし、エアコンフィルターの掃除も業者さんに来ていただいています。金額だけに目を向ければ確かに出費にはなります。けれども、自分で悪戦苦闘してイマイチの結果になるよりも、これは自分にとっての必要経費と割り切ることも、時には必要なのかなと思っています。

 そんなわけで今年も窓や浴槽の大掃除を業者さんに頼むことにしました。毎回頼んでいるお店は決まっているのですが、担当者の愛想が今一つであることがずっと気になっていました。それで今回は別の業者にお願いすることになったのです。

 電話での応対も見積もりで来宅した時の雰囲気も明るく好感が持てました。早速日時を決めて来ていただき、掃除の仕上げもとてもよいもので満足がいくものとなりました。

 けれども、これは個人個人の好みにもよるのでしょうが、私の場合、あまりにも追加サービスをその場でPRされるとどうしても引いてしまうのです。今回も掃除中に「ご一緒にトイレの換気扇もやりましょうか?」と言われ、掃除後もわが家のエアコンの中身をわざわざ開けて、「うーん、かなり汚れていますねえ。これだと病気になってしまいますよ」と警告される始末。こちらにしてみれば今回は「試運転」的に必要最低限の掃除をお願いしたわけですので、あまりにもあれこれ言われてしまうと、「もうここには頼まない」という気分になってしまいます。

 しかも今回の業者さんは、浴室においてあったわが家の水滴取りをうっかり持ち帰ってしまったのです。翌日になり、「あれ?水滴取りがない」と気付いて連絡したところ、担当者に連絡がとれたのは何と数時間後。「本日中にお持ちします」とのことだったので、「留守がちなので不在時はポストの中か玄関に引っかけておいて下さい」と私が伝えたところ、夕方には本当に「むきだし」で置いてありました。

 うーん、確かにすぐに戻してもらえたのはありがたいのですが、せめて気持ちとして袋に入れるとか、メモ書きでも良いので一筆添えるなどしてほしかったなあというのが本音です。

 サービスというのは奥が深く、むずかしいもの。まずはサービスや商品を積極的に宣伝する前に、「ミスをしないこと」「マナーを守ること」が大前提になると改めて思った出来事でした。

 

(2010年7月26日)

Written by

記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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