INTERPRETATION

とにかく細分化!

柴原早苗

通訳者のたまごたちへ

 10月12日のこのコラムで、「最近は作業時間を45分間ずつにしている」と書きました(第79回「まだまだ続く、時間術への探求」)。かつての私は集中力が続く限り、長時間続けて仕事をしていたのですが、集中力が途切れるやドッと疲れが出てしまい、その後はぼーっとして過ごすという状況になってしまったのです。そのため、改善策として15分ずつタイマーで区切って仕事をするようにしたのですが、逆に15分ではあっという間に時間が過ぎてしまい、タイマーが鳴っても中断せずに続けてしまうという、元の木阿弥に陥ったこともありました。現在の「45分は仕事、その後の15分は家事」と決めて以来、在宅ワークは格段にはかどるようになっています。

 特に注目すべき点は、「15分間の家事時間」の使い方です。以前の私は仕事が多忙になればなるほど、家のことがおろそかになってしまい、その一方で家じゅうのホコリや汚れが気になって仕方がなかったのです。「掃除機かけなきゃ」「窓ガラスが汚れてる!」「衣替え、いい加減に早くやらないとな〜」と頭の中で常に「警報」が鳴り響いている状態でした。けれども忙しさにかまけてなかなか取りかかることが出来ず、ズルズルと先延ばしにしていたのです。ちなみに英語では先延ばしにすることをprocrastinateと表現します。

 そこで最近は、とにかくやるべきことを細分化するよう、心がけています。たとえば夕食で野菜炒めを作る場合、次のような工程に分けることができます。

1.野菜を冷蔵庫から出す

2.野菜を洗う

3.野菜を細かく切る

4.ソース(味付け)を作る

5.フライパン、木べら、サラダ油を出す

6.野菜を炒める

7.人数分のお皿を並べる

8.盛り付ける

 「15分間の家事時間」で私が日中に取り組むのは1から5までです。6から8は食べる直前の作業となります。ただし、1から5も一気には行いません。日中、45分間の仕事をしたら、目を休める意味でもパソコンの前から立ち上がり、「野菜を冷蔵庫から出す」「野菜を洗う」だけをやります。そしてまた45分間、仕事に取り組んだのちに「細かく切る」作業を行うのです。こうすることで、食材の水分を切ってからまないたで細かく切ることになり、いざ、後で炒める時も油がはねずに済んでいます。

 ソースも私はあらかじめ作ってタッパーに入れておきます。炒め始めてから調味料をいちいち出すとあわただしくなりますが、事前に作っておけば、あとは容器からフライパンに注ぎ入れるだけで済むのです。こうして細かく作業を分解することで、労力を分散化できることになります。

 他にも掃除機がけの際は「掃除機を出す」「コンセントにコードを差し込んでおく」「丸ブラシをかける」「床を掃除する」という風に細分化しています。一見大変そうな作業も、細かく分けることにより、心理的な負担がかなり減るはずです。ぜひみなさんも試してみてくださいね。

 (2009年11月16日)

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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