INTERPRETATION

今こそ体のメンテナンスを

柴原早苗

通訳者のたまごたちへ

 昨年元旦から始めたジョギング。当初は2009年の間に100回継続できれば目標達成ととらえていましたが、お陰さまで100回以上続けることができ、雨の日以外はほぼ毎日走ることができました。生まれて初めてのハーフマラソンにも出場し、ストレスや肩こりからもおさらばし、体重は減り、健康を手に入れ、と私にとっては良いことづくめのジョギングです。

 中でも大きかったのは、今まで頑として減らなかった体重が自己記録でベスト体重になったことです。高校時代はバドミントン部に所属しており、ハードな練習と遠距離通学だったこともあって、すっきりした体型でした。ところが大学入学後は運動から離れてギターアンサンブル部に所属。社会人になってスポーツクラブに入会はしたものの、「今日は雨だから」「仕事で疲れたから」と何かと言い訳をしては通うことを避けていったのです。太りすぎになったわけではありません。けれども社会人数年目のこと。久々にあった英語仲間の男性から「ひょっとしてふくよかになられましたか?」と言われたことは大いにショックでした。「ふくよか」という婉曲表現でも、十分グサッと来たのを覚えています。

 その後は出産で自己最多体重を記録し、ベスト体重などはるか過去のことになっていたのです。半ばあきらめもありましたし、「ま、いっか」と投げやりになっていた部分もありました。それが昨年来のジョギングと筋トレによって、体質自体に大いなる変化が見られていったのです。

 人間の骨密度や筋肉は、40代あたりからどんどん低下していきます。一見、健康な人でも、肉眼では見えない骨密度や筋肉における低下は避けることができません。これを防ぐには栄養や運動など、トータルな面での体のメンテナンスが求められます。何もしないままでは、カクンと衰える日をじっと待つようなものです。

 「通訳者になるには、何が必要ですか?」という問いを私は頻繁に受けます。たいてい私は「知識力」「語学力」「度胸」と答えていますが、それに加えて欠かせないのが「体力」です。むしろ、「先に体力ありき」と言っても過言ではありません。なぜならば、健康だからこそしっかりとした仕事の準備ができるのであり、業務日当日にベストコンディションで臨めるからです。

 最近は何ごともパソコンを介して済ませられるようになりました。本当に便利になり、ありがたい世の中です。けれども、その一方で過剰な栄養摂取や栄養に関する知識不足、そして運動の欠如なども指摘されています。アメリカでは国民の3分の2が肥満とも言われており、一方の日本も中年男性の3人に一人が肥満とされています。

 毎日元気に仕事ができること。実は人生においてこれほどありがたいことはありません。だからこそ意識的に体の調子を整え、自分の体のために行動することも、大いに求められていると私は思っています。

 (2010年2月8日)

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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