INTERPRETATION

本当に読めますか?

上谷覚志

やりなおし!英語道場

先日、ある外部講座で英語の勉強の仕方ということで2日間、講義をしてきました。これまでもこういう講座は何度か担当したことがあるのですが、その中で“皆さんが一番伸ばさないといけないと感じているスキルは何ですか?”という質問をクラス全体で考える時間を設けることにしています。

人によって答えは変わってくるのですが、多くの方が“リスニング”“スピーキング”を一番に挙げ、その次に単語・文法がきて、最後にライティングやリーディングがきます。おそらくほとんどの方が、この質問を“伸ばしたい”スキルと置き換えて答えられた結果が表れており、こういう答えは初級者や中級者に多くみられます。“聞く”と”話す“というのは”読む””書く“と違って、その場で瞬間的に反応する必要があり、うまく行った時は英語でコミュニケーションができた!という達成感も得やすく、英語が話せたり、聞けたらかっこいいという憧れもあるのでしょう。

そういう方たちにどういう勉強をしているか聞いてみると、多いのが映画をDVDでみる、外国人と話す、英語のCDを聞き流すといった方法です。”リーディングはどうですか?“と聞くと、“辞書を引けば何とかなるので、それよりも聞いたり、話せるようになりたい”という答えが返ってきます。

もちろん、“辞書を引いて何とかなっている”という人たちは本当にリーディングができるわけはありません。英語で書かれた記事を1時間も2時間もかけて読むというのは本当の意味では(解読はできたかもしれませんが)読めていません。英語が読めるというのは、我々が日本語を読むようなスピード・理解度に近いレベルで読めることだと思います。

実際、“何とかリーディングはできる”といった人たちのTOEICのスコアをみると、多くの場合リーディングスコアの方がリスニングよりも低いのです。

英会話学校が“日本の英語教育が読み書き偏重だから、日本人は読み書きできるのに、聞けない、話せない”ということをまことしやかに言ってきたために、多くの人が“自分の課題は、リスニングとスピーキングで、リーディングはもう十分やってきた”と考えているようです。

また子供は文字から入らず、音から入り、それを真似て話すようになり、その後でリーディングやライティングを学ぶから、やはり順番としてはリスニング→スピーキングそれからリーディングやライティングを学ぶべきだという人もいます。

Practice makes perfectというように、伸ばしたいスキルをたくさん練習していくことが上達の近道だから、リスニングとスピーキングを重点的にやるという主張もあるでしょう。

どれもそれなりに正しいとは思いますが、私は単なる観光や買い物といったシーン別英会話ではなく、大人がビジネスで英語を使う、ある程度内容のある会話を英語ですることを考えると、これらの考え方に少し違和感を覚えます。

ですから、今週と来週にかけて、最近感じている”リーディング“について書いていきたいと思います。

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記事を書いた人

上谷覚志

大阪大学卒業後、オーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律を中心としたビジネス通訳として商談、セミナー等幅広い分野で活躍中。一方、予備校、通訳学校、大学でビジネス英語や通訳を20年以上教えてきのキャリアを持つ。2006 年にAccent on Communicationを設立し、通訳訓練法を使ったビジネス英語講座、TOEIC講座、通訳者養成講座を提供している。

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