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やりなおし英語道場

本当に読めますか?

10月も半ばになり、秋から心機一転英語をやるぞ!と英語の勉強を始めた方や通訳学校に通い始めた方も少なくないのではないでしょうか?

先日、ある外部講座で英語の勉強の仕方ということで2日間、講義をしてきました。これまでもこういう講座は何度か担当したことがあるのですが、その中で“皆さんが一番伸ばさないといけないと感じているスキルは何ですか?”という質問をクラス全体で考える時間を設けることにしています。

人によって答えは変わってくるのですが、多くの方が“リスニング”“スピーキング”を一番に挙げ、その次に単語・文法がきて、最後にライティングやリーディングがきます。おそらくほとんどの方が、この質問を“伸ばしたい”スキルと置き換えて答えられた結果が表れており、こういう答えは初級者や中級者に多くみられます。“聞く”と”話す“というのは”読む””書く“と違って、その場で瞬間的に反応する必要があり、うまく行った時は英語でコミュニケーションができた!という達成感も得やすく、英語が話せたり、聞けたらかっこいいという憧れもあるのでしょう。

そういう方たちにどういう勉強をしているか聞いてみると、多いのが映画をDVDでみる、外国人と話す、英語のCDを聞き流すといった方法です。”リーディングはどうですか?“と聞くと、“辞書を引けば何とかなるので、それよりも聞いたり、話せるようになりたい”という答えが返ってきます。

もちろん、“辞書を引いて何とかなっている”という人たちは本当にリーディングができるわけはありません。英語で書かれた記事を1時間も2時間もかけて読むというのは本当の意味では(解読はできたかもしれませんが)読めていません。英語が読めるというのは、我々が日本語を読むようなスピード・理解度に近いレベルで読めることだと思います。
実際、“何とかリーディングはできる”といった人たちのTOEICのスコアをみると、多くの場合リーディングスコアの方がリスニングよりも低いのです。

英会話学校が“日本の英語教育が読み書き偏重だから、日本人は読み書きできるのに、聞けない、話せない”ということをまことしやかに言ってきたために、多くの人が“自分の課題は、リスニングとスピーキングで、リーディングはもう十分やってきた”と考えているようです。

また子供は文字から入らず、音から入り、それを真似て話すようになり、その後でリーディングやライティングを学ぶから、やはり順番としてはリスニング→スピーキングそれからリーディングやライティングを学ぶべきだという人もいます。
Practice makes perfectというように、伸ばしたいスキルをたくさん練習していくことが上達の近道だから、リスニングとスピーキングを重点的にやるという主張もあるでしょう。

どれもそれなりに正しいとは思いますが、私は単なる観光や買い物といったシーン別英会話ではなく、大人がビジネスで英語を使う、ある程度内容のある会話を英語ですることを考えると、これらの考え方に少し違和感を覚えます。

ですから、今週と来週にかけて、最近感じている”リーディング“について書いていきたいと思います。


資料は通訳者の敵か味方か?

通訳者と資料の関係は時には味方、時には敵のような微妙な関係にあると思います。通訳者というのはわがままで、エージェントの担当者には申し訳ないですが、資料が多すぎても多すぎると文句を言い、少なすぎても情報がなさすぎと文句を言うことが多いように思います。

資料が大量に来る場合は、“とりあえず”的な参考資料が多く、そういう資料に限って前日とか直前にどさっと宅急便で届き、どこまでが参考で、どこまでが今回の仕事のものかを振り分けていくだけでもかなり時間を取られ、日付が変わってからやっと読み始め、寝不足のまま現場へということも珍しくありません。

最近では企業内で英語のできる方がプレゼンを翻訳したものも一緒に送られてくることが増えてきました。社内用語や業界用語を両言語で確認できるので非常に助かります。ただ翻訳の質があまりよくないケースが問題になることもあります。

事前にプレゼンを確認でき、訳を訂正できる場合は直前に会場で訂正してもらうこともあります。当日初めてプレゼン資料(パワーポイント)を見ながら通訳をする場合、聴衆は英語がわからず通訳の日本語とプロジェクターで映し出される日本語を見ながらスピーカーの話を追っていくわけですが、スピーカーが言っていることとパワーポイントで書いていることが違っている場合、通訳が間違っていると思われるのではとひやひやすることがあります。

先日、“プレゼンを効果的に行う方法”という内容の通訳をした時のことです。そのとき、オリジナルの英語版の中の”The art of presentation…”という表現が、日本語の資料では“プレゼンの芸術”となっており(正しくは“プレゼンの技術”)、これはさすがに日本語で見ても変だなと思える間違いなので、通訳が間違っているとは思われないと思いますが、紛らわしい間違いもあります。同じトレーニングで、プレゼンで避けるべきポイントの説明の中で使われていた”Avoid passive voice”という表現が“消極的な声は避ける“と訳されていました。”よわよわしい声ではなく堂々と話せ!“なのかと日本語だけみると思えますが、正しくは”受動態は避けた方がいい“という意味です。さすがにここを訳した時は、”受動態なんて書いてないじゃないか・・・“という表情で話を聞いている方もいて、“プレゼンの日本語が間違ってるのに・・・!と説明したいところでしたが、それもできず淡々と訳していきました。

本来、通訳者を助けてくれるはずの資料が場合によっては、貴重な睡眠時間を奪ったり、会場から“この通訳間違ってるんじゃない?”という厳しい視線の中通訳をするはめになったりと、足をひっぱる存在になることもあります。

とはいえ、もちろん資料が無いよりはあった方がいいには決まっていますので、これからもエージェントの皆さん資料よろしくお願いします!


聞く技術

こんにちは。今回のコラムで100回目を迎えます。最近では入稿のペースが遅く、本当は夏くらいには100回目の原稿を書くことを目標にしていたのですが、秋になりようやく100回を迎えることができました。途中何度か原稿が遅れてしまった時も、109の皆さんや私のスタッフに案をもらいながら、何とか今日100回という区切りを迎えることができました。これまでこの英語道場を支えてくださった皆様にこの場を借りて“ありがとう!”を伝えたいと思います。また最近では、お会いする方に”コラム読んでいます“と言って頂いたり、国内外の方からもメールを頂いたりと、読んで頂いている方からの反応を感じる機会が増えたことも100回まで書き続けられた1つの要因です。これまで読んで頂いた皆様、本当にありがとうございました。これからも私が日々、通訳や教えるという仕事や人との出会いで感じたことを素直に書いていけたらと思います。

さて、そろそろ通訳学校の秋の講座が始まります。AOCでも通訳訓練のコースが来週末から始まるため、現在、体験講座や1対1での体験レッスンを行っています。他の学校で通訳訓練を受けた方も多くお越しになりますが、通訳訓練を受けたことがないという方もお越しになることもあります。

通常、体験講座では、サイトラと英日、日英の逐次を中心に説明をしていきます。サイトラは初心者の方でもある程度こういうものかという感覚はつかんでもらえるのですが、逐次となるとなかなかそういうわけにはいきません。初めての方は特にそうですが、“通訳とは自分が今まで経験したことのない全く新しいスキルだ”と感じ、どうしていいのかわからなくなるようです。

確かに“訳す”という部分は、新しいスキルかもしれませんが、その前段にあるプロセスつまり情報を理解することは何も目新しいスキルではありません。通訳プロセスの中で重要なこの“理解する”というプロセスですが、通常のコミュニケーションでの“理解する”とはかなり違います。普段のコミュニケーションでは、自分にとって必要な情報かどうか、好きか嫌いかといった“自分”をベースにして主観的に情報を処理していきます。聞いたことがあまりわからなくても、自分にとって必要ないと判断できれば、その部分は無視してもいいわけです。もっと言うと、わからなかったとしても、話し手のせいや体調のせいにしてしまってもいいわけです。通訳訓練を始めると聞いたことを過不足なく客観的に捉えるということがいかに難しく、負担の大きな作業かということ気付くとともに、いかに自分がこれまで周りの情報を主観というフィルターにかけて、適当に処理してきたのかがわかります。

情報を過不足なく捉えるための手段として、通訳訓練ではメモ取りの練習も行います。授業の中で、基本的なメモの取り方は説明しますが、最終的にはその方独自のメモ取りのスタイルに落ち着いていきます。通訳で一緒に組んだ人のメモを見せてもらっても、私がメモに書く量は多くありませんし、かなりのなぐり書きです。本当はもう少し多く、しかもきれいに書きたいのですが、通訳をしている時は聞くことに全神経を集中させ、メモを取ること自体にはほとんど神経を使いません。ロジックを追い、伝える内容を自分で納得・確認し、一気に訳していくので、メモをどう取るのかとか、何を書くのかを考える時間は通常、自分にはありません。

メモ取りについては以前もコラムで書きましたが、メモはあくまでも補助であり、通訳プロセスではありません。それよりもいかに理解力を上げるかの練習をした方がはるかに通訳力を上げることができますし、そうなれば自然とメモが取れないと言うことはなくなるはずです。この秋から通訳訓練を始める方、またはやり直したい方は、まずは日本語でいいので、ある程度まとまったものを聞いて、客観的に情報を過不足なく捉えられるかどうかの練習をしてみてください。通常の“理解する”を通訳者の“理解する”に変えることができれば、通訳の質が格段に上がります。頑張りましょう!


最初の第一歩

皆さん、ご無沙汰しています。いろいろな方に“コラムはまだですか?”と言われ、書かないとという気持ちはあったのですが、今流行りのインフルエンザにかかり、治るのと同時に仕事が立て込み、一ヶ月以上もコラムをお休みする結果となってしまいましたが、やっとコラムを書く余裕ができました。

さて、皆さんの中にはまだ通訳の勉強をされている方も多くいらっしゃると思います。他の通訳者の話を聞くと、自分にチャンスが与えられれば、自分だって・・・と思ったことがある方もいるのではないでしょうか?駆け出しの頃には、私も同じようなことを考えたことがありました。経験者でないと仕事をもらうのは難しいと言われ、仕事をもらえないのにどうやって経験を積めばいいんだろうと思ったこともありました。特に今年は去年よりも仕事の量が一時減ったこともあり、そういう気持ちを持った方も少なくなかったのではないでしょうか?

実績があまりない場合には、ボランティアでもいいですし、私も駆け出しの頃やりましたが、通訳とはちょっと違うかなと思うような英語関係の仕事でもどんどん引き受けていくことで、ネットワークが広がってきます。自分が動けば、周りも変わってきます。知らない人からAさんから紹介されて連絡しましたというような形で仕事がくることも珍しいことではありません。最初は大変ですが、とにかくいろいろなところに顔を出し、通訳していますと周囲に売り込むことから始めてはいかがでしょうか?私の最初の仕事も意外なところからの紹介でした。

自分の生徒さんが社内通訳に応募する時に、経歴書をチェックすることがあるのですが、仕事を取りたいのか、自分は経験がありませんとアピールしたいのかどっちなんだろうと思うような経歴書に出会うことがあります。具体的に話を聞くと、いろいろとアピールできるポイントが出てきて、最初の経歴書と全く違うものに変わることも珍しくありません。こんなことわざわざ経歴書に書いてもと思うことでも、書き方を少し変えるとアピールポイントに変わるものです。謙虚さはもちろん美徳でありますが、相手がどういう人材を求めているのかを意識して、それに応えるような書き方をする必要があります。

それから通訳学校に行っている人で、自分はまだ〜クラスだから仕事はまだ早いとおっしゃる方もかなりいます。特に学校に長くいる人はそういう傾向が強いような気がします。最初の仕事がもらえないのは、自分の実力がないからで、〜クラスに進級しないとダメだと強く信じているのです。本当にそうでしょうか?マーケットにはさまざまな種類の通訳の仕事がありますので、今の自分のレベルでもできる仕事は見つかるはずです。最初は“通訳”とは言えなくても、英語が使えビジネスが学べる仕事から始めてもいいでしょうし、簡単な翻訳から入るという手もあります。大切なのはそういう仕事を早く始めて、経歴書にかけるような実績を実力と同時に積み上げていくことです。いきなり自分のやりたい通訳の仕事はできないかもしれませんが、“まず始めてみる“ことは通訳学校で勉強するよりも大切だと思います。通訳を目指す限り勉強は続きますから、仕事を始めたからと言って通訳学校をやめる必要はありません。むしろ働き始めて初めて通訳訓練の意味や価値がわかることもよくあります。

どんな仕事でも必ず学ぶことがあります。仕事から学ぶこともありますし、人から学ぶこともあります。こんな仕事なんてやる価値ないと思わず、進んで引き受ける気持ちが次につながり経験を積むきっかけになっていくと思います。先輩通訳を見ていても、時間が合えば基本的にはどんな仕事でも引き受けるという方が案外いらっしゃいます。そういう姿を見習い私も仕事を選り好みせず、できる仕事であれば引き受けるようにしています。

最初の仕事のきっかけをつかむのは容易くはありませんが、今活躍をしている通訳の多くも同じような悩みを駆け出しの頃に持っていたはずです。大きなきっかけをつかむための小さな実績を積んでいってください。


最強の勉強方法

このコラムを読んでくださっている多くの方は通訳訓練を経験された方または現在進行形で通訳訓練を受けている方が多いと思いますので、通訳訓練とはどういうものかお分かりだと思います。一般の方からすると“通訳”訓練というと通訳になるための訓練なので、高度な訓練というイメージがあるかもしれません。しかし実際にはインプットにアウトプットを組み込んだコミュニケーションの最強強化訓練方法と言えると思います。通訳がコミュニケーションのスペシャリストであるということを考えれば当然のことなのですが、どうも何か高度なことをやっているような秘密めいた感じがするのかもしれません。

一般的な英語学習はインプット重視で、例えば、「単語をひたすら覚える」、「CDをひたすら聞く」、「とにかく読む」、「問題を解く」といった練習が多く、インプットを増やしていけば、いつの日か英語でコミュニケーションができるようになるという考え方です。ただコミュニケーション力を強化していくためには、実際に使ってみるつまりアウトプットが不可欠です。インプット(知識の蓄積)だけでは、コミュニケーション力は強化されませんが、アウトプットだけでもコミュニケーションの幅や深みを増すことはできません。理想の訓練はインプットしたものを忘れてしまう前にアウトプットすることです。そういう意味では通訳訓練は理想的です。

通訳になるつもりがなくても、ディクテーション、シャドーイング、サイトラといった訓練は非常に有効で、それぞれインプットされたもの(音声または文字情報)を即座にアウトプットしていくことで、知識の定着率が大幅に向上し、単なる知識を使える英語に変換し、コミュニケーション力を強化していくことができます。

実際に私自身、英語力が付いてきたと実感したのは通訳訓練を行ってからでした。それまでは紙上での英語の知識はあると感じていても、いざ使うとなるとどう知識を使っていいのかわからず、英語でのコミュニケーションのスピードや精度に欠けるという時期がありました。通訳訓練を受けてしばらくすると、自分のできないところが嫌というほどはっきりと見せつけられ、やるべき課題もクリアになっていきました。元々通訳になろうと思って通訳訓練を始めたわけではなかったのですが、結果的には英語力を大幅に伸ばすことができました。こういったこともあり、通訳を目指さない人にも是非通訳訓練を受けていただきたいと思っています。

逐次訓練も実は通訳を目指さない人にとっても有効で、英日逐次であればできたかどうかをしっかりと確認でき、曖昧な点を残さずに弱点を集中的に学習することができます。また日英の逐次もこれまで蓄積してきた知識を使っていくので、今の自分の語彙で何が足りないのか明確にできますし、これまで自分が表現してこなかったことをあえて英語で表現することにより、表現の幅を広げることができます。また文法知識を実際の文脈で使ってみることで、英語の総合力を強化することができます。

ただ一つ難点が、一般の方でもできるような通訳訓練(通訳という名前もいけないのかもしれません)を受けられる場所がないということなのです。部分的に授業の中にディクテーションやシャドーイングを取り入れている学校はあるようですが、サイトラや英語⇔日本語への通訳訓練(厳密な通訳ではありませんが)まで提供しているところは多くはありません。通訳学校だと入学レベルが高すぎて、誰もが練習できるわけではありません。通訳訓練を一部の人たちだけにしておくのはもったいないので、小さな規模ではありますが、少しずついろいろな人に体験してもらえる環境を提供していきたいと思っています。

(2009年7月21日)



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プロフィール

上谷覚志

上谷覚志(かみたにかくじ)さん
1992年大阪大学経済学部卒業後、南イリノイ大学言語学部に留学し、特許事務所翻訳者・英語講師を経て、97年にオーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士課程入学。99年同大学院の修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律、商談、セミナー等幅広い分野で活躍するとともに大手通訳学校での講師も勤める。2006 年に英語力を生かして仕事で活躍できる人材を養成するAccent on Communicationを設立。後進の指導にも力を注いでいる。