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「職業倫理」

トナカイ

通訳・翻訳者リレーブログ

情報収集や研修などの機会を確保するため、こちらで同業者団体に加入しています。先日、その一つから来た機関紙に「質の高い翻訳者とは?」という記事がありました。

記事によれば、質の高い翻訳者とは、単に翻訳の質のことだけをいうのではないとのこと。確かに、私たちはどうしても技術的に向上することにばかり注目しがちですし、その努力なしには成立しない仕事でもあると思います。
しかし、特に翻訳会社とフリーランス翻訳者との間の関係を考えるとき、翻訳者の総体的な質と職業倫理は同義語である・・・つまり、翻訳者が「仕事を絶やさずに」活動していく上で一つの鍵となるのが、翻訳者としての職業倫理なのだと書いてありました。

ある意味、どんな仕事に就いていようと、職業倫理が存在しない職業などありえません。ですから、翻訳者の職業倫理について改めて考えてみることも決して無益ではないのではないかと思います。

記事には、言語や翻訳分野に関する専門性にプラスして、納期や指示の厳守、円滑なコミュニケーション、スキルやツールへの投資、ミスへの対応、誠実さ、責任感、柔軟さ、新しい事柄へのオープンネス・・・など複数の要素が挙げられていました。これらがそれぞれ互いに補完し合って翻訳者の生業が形成される、ということになるのでしょう。

現地事情をはさんで言うならば、国語が2つあり、学校では数ヶ国語を学ぶ機会があり、グローバル化と国際間のコミュニケーションが進みつつある、いわば外国語を操り理解できる人が相対的に多い社会で、あえて翻訳業に従事するということは何を意味しているのか?ということでもあると思います。そして、そんな社会の中で求められる翻訳とは・・・

外国人として欧州に住み、日本の方との仕事もある自分には、上記とはまた違った事情があります。しかし、例えば「自分が選択した専門用語や文法に責任を持つ」ことが職業倫理の一つだとすると、にわかに背筋が伸びてくる一方で、特に「責任を持つ」という部分など、自分の仕事を発展させていく上で大いに役に立つ視点のようにも思います。
他にも「翻訳者の誠実さってなに?」「柔軟になるってどういうこと?」などなど、いろいろと想像力を広げてみる余地がありそうです。

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記事を書いた人

トナカイ

フィンランド・ヘルシンキ在住の多言語通訳・翻訳者。日本で金融機関に勤務の後、ヨーロッパへ。留学中に大学講師を務め、フィンランド移住後は芸術団体インターンなどを経て現在にいたる。2児の母。

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