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通訳・翻訳者リレーブログ
投稿者:仙人 の記事

I'm Going Home

[2007.04.26]投稿者:仙人

ついに来たかー。Sanjaya’s going home.アメリカン・アイドルを見ていない人には何のことかわからず、見ている人には三週分アメリカのほうが早いのでネタバレとなり——最低ですね。ふん。で、アメリカン・アイドルです。今になって毎週欠かさず見てることをカミングアウトするのって、恥ずかしいんですけど、徹底的に「ミーハー」ですから。
今シーズン、いちばんの注目だったSanjaya君は、歌が下手、君が出てきて楽しみなのは(毎週変わる)髪形だけ、とくそみそに言われ続けたのにトップ7まで残ってしまって、でも、あまりにかわいくて、私は結構好きだったんです。オフィシャルサイトの掲示板でもインド系だから非難するんでしょ、人種差別だわと擁護するファンと、何でも人種問題にすり替えるな、という批判派がいたのですけど、私はこんなにかわいい「アイドル」がここまで歌えるんだからすごいじゃん、と思っていました。ミーハーのアイドル評論家としては、ダイアナ・ロスがmentorの回に、”Sanjaya is Love”と言っていたのが印象的で、愛さずにはいられないキャラみたいな天性のものがあるんだと思います。そんな彼がついに落ちてしまったというのが前回だったわけです。
音楽シーンで売れるのはただの運だ、という議論を昔したことがあって、だってマドンナは世界一歌がうまいわけじゃないだろう、と言う人に、確かにそうだけど、世界一魅力のある歌手のひとりでしょ、と私は反論しました。どこがどうとは説明できないんだけど、私は”She’s got an Umpf”と言ってました。アメリカン・アイドルではときどき“Yo-Factor”と審査員のランディが言い、まあそれに似たことですね。彼は「ものすごく歌が上手」というときに使っていますが。字幕では「『すっげー』と思うところ」と出ます。この字幕、結構好きです。Yoは番組でしょっちゅう出てきて、君らしい輝きが戻ってきたね、というのは”You have ‘Yo’ back in”とかね。いや、こんなの特に何かの勉強になるわけでは全然ないんですけど。
タイトルの”I’m Going Home”は今シーズンのアメリカン・アイドルの敗者のための曲なんですけど、私のブログも今回で終了させていただくことになりました。○○しなければ、というよりも、何かが好き、と強い感情を持つことがどんなことでもいちばん大切だと思っている私のブログは、ひとりよがりで、何のことだかよくわからない内容も多かったと思いますが、そういうのが、強い意見を持っているため、ぶつかることも多い方の励ましになっていれば、と思います。では。


知的財産について

[2007.04.19]投稿者:仙人

知識や、創作されたストーリー・画像は人間だけが所有できる財産です。他の動物でも獲物となるもの、自分の領土、さらには異性の所有権まで主張しますが、知的な財産はそもそも人間にだけ許された贅沢です。財産であるがゆえに、他人の財産を享受させてもらう場合には対価を支払わねばならず、それを怠るのは財産を無断で奪い取ること、つまり泥棒と同じです。この原則を理解しているにもかかわらず、知らないうちにその泥棒行為をしてしまうことがあります。最近映画館でも、啓発CMが映画上映前に流れますね。安いからと海賊版のDVDなどを買うと、著作権者に本来支払われるべき対価が渡らなくなってしまうからです。本に関しても同じで、書籍が、知的創作物の楽しみを享受する人(読者)の手に渡るとき、販売された代金には著作権料が含まれ、著作権者に支払われるようになっています。創作世界を楽しませてもらっている代金です。
中古の本では、この著作権料が支払われません。つまり基本的には、中古本は海賊版DVDを買うのと同じ、著作権侵害にあたります。例外として古書店などで、その著作権が消失しているような古い本、さらには著作価値の再発見ができる「目利き」店主の存在という条件のもと、最初の購入時に対価が支払われ、その中古本の出所が確認されているときなどはこの限りでないこともあります。この場合の絶対条件は、その本がもう新品では手に入らない状態にあるということです。しかし、大規模に展開するような中古本ショップチェーンでは、あきらかに万引きされたものが売られたとしか思えない、たとえばハリー・ポッター本など、現在確実に売れている本が一度もページを開かれたこともない状態で、しかも発売当日に山積みされているようなこともあります。こういった場所で中古本を買うのは、知的財産の泥棒行為だと、私は思います。
小うるさいことを、硬い言葉で書き連ねて申し訳ありません。通翻訳という「言葉」を職業にする私たちは、知的財産の侵害とはできるだけ遠い場所にいるように、ふと気づかぬうちに、そういった犯罪行為に加担するようなことにならないよう敏感でいましょう——そう感じてしまった今週でした。過剰反応でしょうか。


新学期に

[2007.04.12]投稿者:仙人

マリコさんが、しばらく前に「ぶっちゃけ」というような言葉を使いたくないと書いておられました。同感です。しかし、自分がきちんとした日本語を使えているかと考えると、ふと不安になるときもあります。文字になって残る翻訳についてはなおさらです。
最近の英語フィクションは、どんどん書き言葉と話し言葉の違いが少なくなってきています。読んでいるだけだと、そのほうがしっくり来るというか、楽しいと思います。もちろん日本語に比べると、もともと英語は書き言葉と話し言葉の差が大きくないのは、おわかりだと思いますが、昔風の、セミコロンやダッシュもなしに延々と何ページも主人公の心の動きがモノローグで続く文章より、今風のcrispというのか、てきぱき、短いセンテンスで、たたみかけるような文体は、読みやすく感じます。ところが訳すときには、そのスリリングさが罠をかけるように待ち構えています。今風の英語でも「壊れた」言語への進行度は日本語より緩やかであるからではないかと考えているのですが、正確な訳とスピード感を損なわないことにだけ気を取られていると、読み返したときに、ずいぶん訳文が「壊れて」いて、はっとします。
それで、テンポよく、なおかつきちんとした言葉にしようと思うと、ときどき格調高い日本語に接する必要性を感ずるようになります。何年か前に「声を出して読む」べき日本語がはやったことがありましたよね。あの当時は、言葉の切り取り、文章の断片だけを読むことを少し疑問に思ったりもしたのですが、声を出して美しい日本語を読みたいというコンセプトには賛成で、私も実は同じようなことをしています。
私の秘密兵器は、中島敦の小説です。高校の教科書に載っていた『山月記』などの短編がいくつか入った文庫は、仕事をするコンピュータのすぐ横に置いてあって、『山月記』や同じく漢詩に題材をとった『李陵』など、文章の歯切れのよさが声を出して読むのが気持ちよくて、訳に詰まって頭をどこかにぶつけたい気持ちになるとき、たまに何ページも続けて、アナウンサー気分で読み上げます。そのあと、最後まで読むと、その内容に深く自戒させられ悲しい気分になるのですが、あまり不快な悲しさにはならないのも不思議です。簡潔で歯切れのよい日本語に触れたいときに、ちょっとおすすめです。


スカボロー・フェア/詠唱

[2007.04.05]投稿者:仙人

『明日に架ける橋』が大ヒットしていたとき、レッド・ツエッペリンのほうが絶対かっこいいと主張し続けるロック少女だった私は、同年代の人の中では比較的、サイモン&ガーファンクルへの思い入れは強くありません。でもポール・サイモンの才能はすごいと思うし、有名な曲は今でもほとんど歌詞を見ずに歌えます。ただ、好きなのは『僕とフリオと校庭で』とか『僕のコダクローム』みたいなポップな曲です。
まるで関係ないところから入ってしまいましたが、また選挙騒音に悩む日々です。前に選挙活動への苛立ちをここで話したとき、タイトルを”The Sound of Silence”にしてしまって、今回は『スカボロー・フェア』。理由はですね——ラウドスピーカーの絶叫に会議などが中断し、日本にそれほど慣れていない外国の人から「あの音は何?」と聞かれることも多くあり、答えるわけです——「選挙です」「何を叫んでいるのか?」「基本的に候補者の名前と……」ここで『スカボロー・フェア』が関係するんです。私の中でだけの話ですが。
S&Gのアルバムを買った当時、中学二年生だった私は、歌詞カードの対訳の「そこに住む人たちによろしくと言ってくれ」という言葉で、初めてremember me to (somebody)という言い方を覚えてしまったため、「よろしく」でつい、”remember me to one who lives there”と頭の中に浮かぶのです。
選挙騒音に話を戻します。世界中、こんなひどいことになる国ってあるのでしょうか? ここまで選挙騒音がひどい原因のひとつに、日本語には「よろしくお願いします」という言葉自体には意味を持たない文章が存在するからではないかと思っています。英訳では「よろしくお願いします」は、無視する文の代表ですが、他の言語、とくに他のアジア系言語、たとえばタイ語とかベトナム語には、似た表現はあるんでしょうか? あったらきっとその国では選挙騒音がひどいに違いないぞ! しかしですね、通常は訳さない「よろしく」ですが、選挙カーの「よろしくお願いしまーす!」って本来の意味通り、Remember meだと思いません? よろしく伝えるではなくて、心に留めて、覚えてねという意味で。


努力の源泉

[2007.03.29]投稿者:仙人

何十年か昔のことですが、自分の「訛り」をとても悩んだ時期がありました。アメリカの観光地で見知らぬ子供が日本語と英語を混ぜて話していたのを耳にしたのがきっかけでした。おそらくその子はずっとアメリカで過ごしてきた日本人の子供だったのでしょう。まったく訛りのないアメリカ英語——それに比べて、普通の公立中学に入るまで英語と接したこともなく、初めて外国に行ったのも大学に入ってからの私。自分の英語はひどく「訛って」いて、誰が聞いても、英語が第二言語であることがわかる。なんだか愕然として、毎日詩を大声で読んだり、読んだのを録音して何度も修正したりしました。会社勤めのときには自分用のボイスメールのメッセージが気に入らず、何十回と録音し直したこともあります。”I’m unavailable at the moment”の発音がどうがんばっても不愉快、 ‘unavailable’が上手に舌が回ってない感じです。”I cannot take your call at the moment”に変えると今度はtの音が多いため、子音の弱い日本人特有の音になります。それでも、北米で仕事をする同僚には、英語が第二言語である人も多く、カナダでは当然フランス語系の人もいるし、ラテン系、インド系、中国系のそれぞれに「訛った」人たちと一緒に仕事をしていくうちに、なんとなく気にしなくなっていきました。
しかし言語が最終目的である仕事ではなかったから気にせずにすんだので、翻訳の仕事を再開、それにともなって時々また通訳をする機会ができてからは、悩みがひそかに再燃していました。特に最近は幼少時から英語圏で教育を受けた「完璧にバイリンガル」な人が通訳だけでなく、お客様の中にも多いのに、私ははっきりと「英語の知識のある第一言語が日本語の人」です。
ところが先日一緒に通訳をした方が、いわゆる帰国子女で本当にきれいな英語を話されるので、いいなあと思っていたのに、彼女から、「外国語としての英語を高等教育で学んだことがわかる言葉遣い」が羨ましいと言われました。彼女は子供として身につけた英語がビジネスの場でぽろっと出てしまっているのでは、さらには子供の頃アメリカにいただけの何の努力もしていないバカでしょ、と思われてるような気がいつもするのだということで、種類は違うだけで、どんな人も、いろいろなコンプレックスや悩みをひそかに抱えているんだなあと思いました。
結局、悩みがあることで、よりよくなろうと努力していくんですね。私も訛りよりも、他にもっと問題となるところがあるはずで、気にしていない問題点というのが本当はいちばん怖いです。いや、訛りはそれでも気になりますけど。



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プロフィール

すーじー

すーじー
1998年春、研究留学する夫に同行して渡米。大の苦手だった英語をイチから学びなおすことに。現在はシカゴ在住のフリーランス英日翻訳者として、マーケティングから金融・経済まで幅広い分野のビジネス案件にたずさわる。最近、興味があるのは、DIYと健康になること。[2016年1月start!]

いぬ

いぬ
幼少期より日本で過ごす。大学留年、通訳学校進級失敗の後、イギリス逃亡。彼の地で仕事と伴侶を得て帰国。現在、放送通訳者兼映像翻訳者兼大学講師として稼動中。いろんな意味で規格外の2児の父。[2008.4.1 start!]

アース

アース
田舎の翻訳者。外国留学・在留経験ナシ。都会生まれの都会育ちだが、現在はド田舎暮らしで、ネットのありがたさにすがって生きる日々。何でも楽しめる性格で、特に生き物と地球と宇宙が大好き。でも翻訳分野はなぜか金融・ビジネス(英語・西語)。宇宙旅行の資金を貯めるため、仕事の効率化(と単価アップ?!)を模索中。[2015年12月終了]

ぺこたん

ぺこたん
高校までをカナダと南米で過ごす。現在は、言葉を使いながら音楽や芸術家の魅力を世に広める作業に従事。好物:旅、瞑想、東野圭吾、Jデップ、メインクーン、チェリー・パイ+バニラ・アイス。[2007.6.1 start!]

みなみ

みなみ
英日をメインとする翻訳者。2001年からニュージーランドで生活。家族は、夫(会社員)、娘(小学生)、ウサギ(ロップイヤー)。[2007.5.1 start!!]

さるるん@ロシア

さるるん@ロシア
米系銀行勤務後、米国留学中にロシア人の夫と結婚。一児の母。我が子には日露バイリンガルになってほしいというのが夫婦の願い。そのために日本とロシアを数年おきに行き来することに。現在、ロシア在住、金融・ビジネス分野を中心としたフリーランス翻訳者(英語)。[2013年7月終了]

トナカイ

トナカイ
フィンランド・ヘルシンキ在住の多言語通訳・翻訳者。日本で金融機関に勤務の後、ヨーロッパへ。留学中に大学講師を務め、フィンランド移住後は芸術団体インターンなどを経て現在にいたる。2児の母。[2010年10月終了]

昼顔

昼顔
外資系金融、在ジュネーブ日本政府代表部での勤務を経て、外務省職員として採用。帰国後は民間企業にてインハウス通訳者としてキャリアを積み、現在は日英仏フリーランス通訳者として活躍中。昨年秋からはNYに拠点を移す。趣味は数年前から再び始めたバレエと映画鑑賞と美味しいモノの食べ歩き。[2010年3月終了]

フレッヒ

フレッヒ
高校時代をドイツで過ごし、日本の大学を卒業後、再び渡独。ドイツでの日本企業勤務を経て10年前よりフリーランスドイツ語通訳者として活躍。車関係全般・ジュエリー・スポーツ関係・整形外科分野を得意とする。普段はワイン・焼酎をこよなく愛し、庭で取れたハーブやジャガイモで主人や友人達とBBQしながら休日を過ごすのが大好き。そして大の八重山諸島フリーク。[2009年2月終了]

パンの笛

パンの笛
幼少時に英国に滞在。数年の会社勤めを経て、出産後の仕事復帰を機に翻訳を本格的に学習。現在はフリーランスの在宅翻訳者。お酒好きで人好き、おしゃべり好きの一児の母。[2008年4月終了]

かの

かの
幼少期を海外で過ごす。大学時代から通訳学校へ通い始め、海外留学を経て、フリーランス通訳デビュー。現在は放送通訳をメインに会議通訳・翻訳者として幅広い分野で活躍中。片付け大好きな2児の母。[2008年3月終了]

まめの木

まめの木
ドイツ留学後、紆余曲折を経て通翻訳者に。仕事はエンターテインメント・芸術分野から自動車・機械系までと幅広い。色々なものになりたかった、という幼少期の夢を通訳者という仕事を通じてひそかに果たしている。取柄は元気と笑顔。[2007年11月終了]

the apple of my eye

the apple of my eye
日本・米国にて商社勤務後、英国滞在中に翻訳者としての活動を開始。現在は、在宅翻訳者として多忙な日々を送る傍ら、出版翻訳コンテスト選定業務も手がけている。子育てにも奮闘中![2007年5月終了]

仙人

仙人
大学在学中に通訳者としての活動を開始。卒業後は、外資系消費財メーカーのマーケティング分野でキャリアアップ。その後、外資系企業のトップまでキャリアを極めた後、現在は、フリーランス翻訳者として活躍中。趣味は、「筋肉を大きくすることと読書」[2007年4月終了]

ガットパルド(gattopardo)

ガットパルド(gattopardo)
伊・仏・英語通翻訳、ナレーション、講師など、幅広い分野において活動中のパワフルウーマン。著書も多数。毎年バカンスはヨーロッパで![2006年8月終了]

Hubbub from the Hub

Hubbub from the Hub
幼い頃から英語に触れ、大学在学中よりフリーランス会議通訳者として活躍、現在は米国大学院に籍を置き、研究生活と通訳の二束のわらじをはいている。[2006年8月終了]

雛


大学在学中に通訳デビュー。外資系企業勤務を経て、フリーランス通訳者に。会議はもちろん、音楽、舞台、映画などの分野でもひっぱりだこ。クライアントからの指名率も高い。[2005.11月末終了]

とと

とと
大学卒業後、数年のサラリーマン生活を経て、フリーランス翻訳者に。技術系から出版物と、幅広い分野で高い評価を得ている。趣味は音楽。ただいま子育て奮闘中。[2005.11月末終了]

背番号8

背番号8
イギリスに長期留学後、インハウス通訳者として数社に勤務。現在は、フリーランス通翻訳者として活躍中。若手通訳有望株の一人![2005.11月末終了]