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知的財産について

仙人

通訳・翻訳者リレーブログ

知識や、創作されたストーリー・画像は人間だけが所有できる財産です。他の動物でも獲物となるもの、自分の領土、さらには異性の所有権まで主張しますが、知的な財産はそもそも人間にだけ許された贅沢です。財産であるがゆえに、他人の財産を享受させてもらう場合には対価を支払わねばならず、それを怠るのは財産を無断で奪い取ること、つまり泥棒と同じです。この原則を理解しているにもかかわらず、知らないうちにその泥棒行為をしてしまうことがあります。最近映画館でも、啓発CMが映画上映前に流れますね。安いからと海賊版のDVDなどを買うと、著作権者に本来支払われるべき対価が渡らなくなってしまうからです。本に関しても同じで、書籍が、知的創作物の楽しみを享受する人(読者)の手に渡るとき、販売された代金には著作権料が含まれ、著作権者に支払われるようになっています。創作世界を楽しませてもらっている代金です。
中古の本では、この著作権料が支払われません。つまり基本的には、中古本は海賊版DVDを買うのと同じ、著作権侵害にあたります。例外として古書店などで、その著作権が消失しているような古い本、さらには著作価値の再発見ができる「目利き」店主の存在という条件のもと、最初の購入時に対価が支払われ、その中古本の出所が確認されているときなどはこの限りでないこともあります。この場合の絶対条件は、その本がもう新品では手に入らない状態にあるということです。しかし、大規模に展開するような中古本ショップチェーンでは、あきらかに万引きされたものが売られたとしか思えない、たとえばハリー・ポッター本など、現在確実に売れている本が一度もページを開かれたこともない状態で、しかも発売当日に山積みされているようなこともあります。こういった場所で中古本を買うのは、知的財産の泥棒行為だと、私は思います。
小うるさいことを、硬い言葉で書き連ねて申し訳ありません。通翻訳という「言葉」を職業にする私たちは、知的財産の侵害とはできるだけ遠い場所にいるように、ふと気づかぬうちに、そういった犯罪行為に加担するようなことにならないよう敏感でいましょう——そう感じてしまった今週でした。過剰反応でしょうか。

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記事を書いた人

仙人

大学在学中に通訳者としての活動を開始。卒業後は、外資系消費財メーカーのマーケティング分野でキャリアアップ。その後、外資系企業のトップまでキャリアを極めた後、現在は、フリーランス翻訳者として活躍中。趣味は、「筋肉を大きくすることと読書」

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