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カンタン法律文書講座 第三回 契約書に登場する代表的な条項とその特徴 (1)

江口佳実

カンタン法律文書講座

英米法によるカンタン法律文書講座
第3回契約書に登場する代表的な条項とその特徴 (1)

第3回目の今回は、様々な種類の契約書の中でよく見られる、共通の条項とその役割や特徴をお話します。

第1回では契約書のおおまかな形式と、頭書、WITNESSETH、Whereas条項、NOW,
THEREFORE、そしてIN WITNESS WHEREOFといった、よく見られる共通の表現やそれぞれの役割をご紹介しました。

契約書の各条文、「第1条 ……」などの部分でも、それぞれの契約書固有の内容もあれば、契約書の種類や当事者を問わず、わりと多くの契約書でよく見られるお決まりの条文もあるのです。

では、具体的に見ていきましょう。
それぞれの例文の番号をクリックしてください。ポップアップで解説が表示されます。

※(1)~(4)の数字の部分をクリックしてください。説明が出ます。

(1)
Article I. Definitions
In this Agreement, the following words and expressions
shall have the following meanings:

“Products” shall mean any and all computer
software products which are manufactured and
sold by Company.
“Territory” shall mean……
……
“Effective Date” shall have the meaning given
to such term on Schedule A hereto.
……

訳:
第 I 条 定義
本契約において、以下の文言および表現は、以下の意味を有するものとする。
「本製品」とは、会社が製造および販売するあらゆるコンピュータ・ソフトウェア製品をいうものとする。
「契約地域」とは、……
……
「発効日」とは、本契約の付属明細書 A においてかかる用語に付与された意味を有するものとする。
……

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(2) 
Article II Tem and Termination
1. Term
This Agreement shall be effective for a period
of two(2) years from Effective Date and shall
continue thereafter unless and until earlier
terminated by either party as provided hereunder.

2. Termination
Either party may terminate this Agreement at
any time if any of the following occurs.
(i) The other party commits any material breach
of this Agreement and fails to cure such breach
within ninety (90) days following written notice
thereof.
(ii) The other party enters into bankruptcy,
liquidation, or reorganization, whether compulsory
of voluntary, or has a receiver appointed as
to all or any part of its assets, or takes or
suffers any similar action in consequence of
debt.


第 II 条 期間および解除
1. 期間 
本契約は、発効日から開始して、2年間有効であるものとし、その後、本契約に定めるとおり、一方当事者によって早期に解除されない限り、そのときまで、継続して有効であるものとする。

2. 解除
いずれの当事者も、以下のことのいずれかが発生した場合、いつでも本契約を解除できる。
(i) 他方当事者が本契約の重大な違反を犯し、かつ、かかる違反の通知が書面でなされた後90日以内にこれを是正することを怠った場合。
(ii) 他方当事者が、強制または任意のいずれにかかわらず、破産、清算、または会社再建手続きに入った場合、または債務の結果としてその全てまたはいずれかの資産に対して管財人が指名された場合、もしくは類似のいずれかの措置を受けた場合。

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(3)
Article VII Payment
1 All payments shall be made in US Dollars and
by wire transfer to the bank account specified
below.
Bank Name: Bank of Manhattan
Bank Address: 100 5th Ave, New York, NY
Account No : 100500200
SWIFT code: MNHTTN1005

2. Licensee may deduct withholding taxes from
the amounts payable to Licensor and shall provide
Licensor with tax payment certificate upon Licensor’s
request for the purpose of Licensor’s tax relief.


第 VII 条 支払い
1. 支払いはすべて、米ドルで支払われるものとし、電信送金で、以下に指定する銀行口座に送られるものとする。
銀行名:Bank of Manhattan
銀行の住所:100 5th Ave, New York, NY
口座番号:100500200
SWIFT コード:MNHTTN1005

2. ライセンシーは、ライセンサーに支払われるべき金額から源泉徴収税を控除することができ、ライセンサーの税負担の軽減のためにライセンサーの要求に応じて納税証明書をライセンサーに提供するものとする。

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(4) 
Article XI Survival
The provisions of Articles 1, 7, 8, 11, 13 and
15、and Sections 5.4, 7.2, and 12.3 shall survive
any expiration or termination of this Agreement.


第 XI 条 存続
第1条、7条、8条、11条、13条、および15条、ならびに第5.4項、7.2項、および12.3項の定めは、本契約の終了または解除の後も存続するものとする。

さて、今回は「定義」、「期間と解除」、「支払い」、「存続」、の4つの条項を紹介しました。いかがだったでしょうか。こういった条項は、内容も英語の表現も似たものが多いので、覚えてしまうと契約書の翻訳が楽になります。
このほかにもまだまだ、よく用いられる条項がありますので、次回以降もお楽しみに。

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記事を書いた人

江口佳実

神戸大学文学部卒業後、株式会社高島屋勤務。2年の米国勤務を経験。1994年渡英、現地出版社とライター契約、取材・記事執筆・翻訳に携わる。1997 年帰国、フリーランス翻訳者としての活動を始める。現在は翻訳者として活動する傍ら、出版翻訳オーディション選定業務、翻訳チェックも手がける。

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