TRANSLATION

Vol.2 手に入る情報を最大限に使ってどれだけのものが作れるか

ハイキャリア編集部

翻訳者インタビュー

[プロフィール]

山内祐治さん
Yuji Yamauchi
横浜市立大学文理学部文科卒業後、出版社入社。2年後NY勤務となり、アメリカ雑誌記事翻訳プロジェクトに携わる。4年半後に帰国、出版社で翻訳・編集に従事する傍ら、社内通訳をつとめる。エキスポや建設現場で通訳経験を積み、現在は社内翻訳者として外資系企業に勤務。

Q. 翻訳者を目指すようになったきっかけは?

大学時代、出版翻訳家を目指していたんです。とはいえ、いきなり翻訳出版はムリなので、まずは出版社に入ろうと思ったわけです。入社2年目にNY勤務になり、米国雑誌記事の日本語版記事製作プロジェクトに参加しました。4年半後帰国し、今度は翻訳者の手配や訳文チェックを担当することに。今思えばそれもだいそれたことなんですけどね(笑)。
訳文を見ていて、「翻訳者にもいろんなタイプがいるなあ。自分だったらこう訳すのにな」、と考えるようになったのが、翻訳者を目指した直接のきっかけでしょうか。

Q. 現在のお仕事について教えて下さい。

翻訳を頼まれると、まず分量と納期を確認し、自分一人で出来るかどうか判断します。基本的に日英が多いですね。本当は英日の方が楽なんですが。多い日は1日2,000ワードぐらい訳すこともあります。Powerpointだと1日20ページが目安でしょうか。空き時間は専門用語のリストを作ったり、ネイティブチェックで直しが入った部分を自分の翻訳と比べたりします。短期間で大量に翻訳しなければならないこともありますが、一日中翻訳をしていると、どうしてもペースもクオリティも落ちるので、うまく気分転換する必要がありますね。
愛用の辞書

Q. お仕事上の苦労話などは……?

外資系企業だけに英語が堪能な方が多いんですよ。「なんだこんな翻訳して」と言われてクビになるんじゃないかと最初は不安でした(笑)。社内用語や専門用語については、発注元や通訳者さんに教えて頂いています。特に社内文書は、関係者同士の間では当たり前と思って書いていることでも、第三者にとっては「?」ということも少なくありません。手に入る情報を最大限に利用してどれだけのものが作れるかで翻訳者の力量が試されるので、そこは力の見せ所でもあるんですけれども。

Q. 通訳者になろうと思ったことはありますか?

もともと、通訳の仕事を探そうとエージェントに登録したんですよ。米国勤務経験を買われて、社内ではたまに通訳する機会もありましたが、専門的に教育を受けたいと思い3年前に通訳学校へ通い始めました。今は一番上のクラスですが、当時入学適正検査を受けたら一番下のクラスにも入れてもらえず、通訳準備コースからのスタートだったんです。ショックでした(笑)。今は企業内翻訳者として充実した毎日ですが、いずれは通訳者としても仕事が出来ればと思っています。通訳と翻訳は似て非なるものなので両立は難しいかもしれませんが、挑戦してみる価値はありますよね。ここだけの話、今のお仕事を頂いた時も少し悩んだんですが、企業文書の翻訳経験はいずれ通訳するときにもプラスになる、というエージェントの方の言葉を信じてスタートすることにしました。今でも、その判断は間違っていなかったと思っていますよ。

Q. 会社を辞める時は、一大決心でしたか?

10年程会社勤めをしましたが、もともと組織の中で働くことにこだわりを持っている人間ではないので、もういいかなと(笑)。夕方には家に帰って自分の時間を楽しむのが理想でした。大学時代、翻訳者を目指していたのも「職人」としての憧れがあったからなんです。自分の技術が人の役に立って、それでご飯が食べられたら一番いいなと思うんです。そう考えると、今の仕事はすごく自分に合っていると思います。

Q. もし翻訳・通訳者になっていなかったら?最後にこれからの目標を教えてください。

あまり考えたことはありませんが、失業者かなぁ……、というのは冗談です。中学の頃から外国語が話せることがすごく楽しかったんです。英語の授業で先生にちょっと褒められると、もう嬉しくて嬉しくて。その積み重ねでここまで来たようなものですね。いずれにせよ、何かしら英語を使う仕事をしていたのではないかと思います。夢はヨーロッパで異文化に触れながら家族と生活することですね。通訳・翻訳の仕事があればベストなんですが。これはまだ大切に取っておきたい夢です。

<編集後記>
8月にパパになった山内さん、お子さんに英語で話かけることもあるのだとか。とってもお話が面白く、あっという間の1時間でした。仕事に対する真剣さはやはり「プロ」そのもの!

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ハイキャリア編集部

テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

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