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タイトル 「あなたはなぜ『嫌悪感』をいだくのか」
著者 レイチェル・ハーツ
監修・訳者 綾部早穂(監修)・安納令奈(訳者)
出版社 原書房

訳者コメント:

<この本のお勧めポイント>
思わず目を背けたくなる、ゴキブリやヘビ、悲惨な事故現場。どうしても食べられない苦手な食べ物や、におい。傷やかさぶただらけの病人。気持ちが悪いんだけれど、指の間から見たくなってしまう、ホラー映画、ゲテもの食い、大食いコンテスト、レディ・ガガの生肉コスチューム。。。見たり考えたりするだけで身の毛がよだつ。生理的にムリ。こんなふうに、苦手なものがある、というのはネガティブなことだと思いこんでいないでしょうか。
実は「嫌悪感」というのは、生き延びるために、人が後天的に学習していく知恵なのです。人間はこの感情を生存競争だけではなく、パートナー選び、選挙、裁判、政治、商業活動にも利用してきたのです。

原題は、"That's Disgusting"。
「ちょっと、キモくない!?」「ありえない!!!」。日本語だったらこんな悲鳴が思わずあがってしまう古今東西のありとあらゆる気持ち悪い事物が、本書にはふんだんに登場します。共感を覚えやすい事例を挙げながら、ヒトの感情としては比較的新参である「嫌悪感」・「不快感」について、心理学、文化人類学、犯罪史、風俗史、ポップカルチャー等々、驚くほどさまざまな視点から掘り下げます。読むのに少々の心臓と体力の必要な(?)ほかに類を見ない、大胆で骨太なサイエンス読み物です。

<翻訳中の苦労話>
実は、ものすごい怖がりです。
ホラー映画はもちろん、マフィア映画(マフィア、という設定は大好きなのに!)の流血シーンや、時代劇のチャンバラ・シーンも正視できません。また、下ネタ系、艶っぽい話も、決して得意じゃない(通じない、といわれてひさしい)。それなのに、トライアル課題として渡された「食」に関するタブーや嫌悪感を扱ったチャプターで、すっかり本書に魅せられてしまいました。
画像や動画でコンテンツ、構造や配置、事実関係を確認しなければならない箇所がきわめて多く、調べ物は、名実ともに汗と涙、だったのですが、ひとえに好奇心とウィットに富む著者の文体にぐいぐいと引っ張られました。生粋の学者でありながら、お転婆でお茶目なところもある著者の語り口を日本語で再現できるよう、編集者と監修の綾部先生のお力を借りながら改稿を重ねました。

「何かを苦手」、と思うことが決して克服すべき短所ではないことを、奇しくも訳者も実感しました。弱さも、迷いも、恐れも、醜さも、否定せず、受け入れて生きる、ということに尽きるのだと思います。
最後には人間がたまらなく愛おしい存在に思えた、忘れがたい作品です。

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