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枝廣淳子のNext Stage

同時通訳者、翻訳者、そして環境ジャーナリストとして、環境問題に関する講演、執筆、翻訳等マルチにご活躍の枝廣淳子さん。代表的な翻訳本として「不都合な真実」(アル・ゴア:著 枝廣 淳子:訳)、著書である大ヒットシリーズ、「朝2時起きで、なんでもできる!」などでも知られる枝廣さん代表の有限会社イーズでは、翻訳力アップのための自己トレーニングメール講座、「Next Stage」を開いています。 本コンテンツでは翻訳者を目指す方をNext Stageへと導く枝廣さんからの楽しくもためになるコラムを毎月第1水曜日にお届けします。乞うご期待下さい。

第2回 6年越しの夢が叶った翻訳書

 翻訳者は、「出版社などが翻訳を決めたものを翻訳する」ことが多いものですが、中には、自分で「これをぜひ翻訳して日本で読んでもらいたい!」と翻訳したい原書を自分で見つけてきて(またはそういう原書に出会ってしまって)、翻訳出版の提案書・企画書を作るところから始める場合もあります。

 私は主に自分が取り組んでいる環境問題やシステム思考、自己啓発の分野で、まだ日本に知られていない大事な考え方や書籍が海外にあることが「もったいなくて」しかたありません。「これはいい本だから、日本でも出版して日本の人々にも読んでもらいたい!」といてもたってもいられなくなることが多く、これまでに出した翻訳書26冊のうち11冊は、自分で企画書を書いたり編集者にもちかけたりして出版を決めてもらい、翻訳も担当したものです。(ご参考まで、これまでの翻訳書の紹介はこちらにあります。
http://www.es-inc.jp/books/translation.html

 「ぜひ日本でも読んでほしい!」という6年越しの(そう、そう簡単にはいかないことが多いのです。ボツになるものもけっこうありますし)夢がやっと叶った本がこの夏に出版されました。日本でもとても知られた「100人の村」を書いたドネラ・メドウズさんの珠玉のエッセイ集です。

『地球の法則と選ぶべき未来』
ドネラ・H・メドウズ著、枝廣淳子訳 ランダムハウス講談社
https://www.amazon.co.jp/dp/4270005076?tag=junkoedahiro-22

 ドネラ・メドウズさんは、私も参加しているバラトン・グループ(世界中の環境問題やシステム思考の専門家・実践家のネットワーク)を、デニス・メドウズ氏といっしょに30年近く前に立ち上げた方です。(残念ながら2002年に亡くなり、私は直接お目にかかることができませんでした。。。)
システム思考(システムダイナミクス)の研究者だったのですが、「より多くの人に伝えることが大事」とジャーナリストに転身し、多くの新聞などに「問題の構造をつながりをたどって明らかにする」コラムなどを寄稿しました。

 ドネラさんの深い洞察と明快でわかりやすい「目からウロコ」の文章を読むたびに、「ぜひ日本でも多くの方々に読んでほしいなあ!」と思っていました。物事や地球がどうつながっているのか、本当に大事なことは何なのか、どこから私たちは変えていけるのか−−たくさんの気づきとヒントを得ることができるからです。

 そして、この本の翻訳は「チーム」で行ったという点でも、自分にとってはひとつの新しい試みが上首尾に成立することがわかり、うれしいものでした。私は監訳者としてすべての訳文のチェック・修正をしましたが、私の環境メールニュースなどのために、海外からの情報をボランティア翻訳してくれている「実践和訳チーム」の数十人が力をあわせて翻訳協力をしてくれたおかげで実現した翻訳なのです。

「ぜひいつかは日本に!」とこの本の翻訳プロジェクトを立ち上げた6年前には、(エコブームもまだありませんでしたので)こういう本を出してくれる出版社がなかなか見つからず、それでも「いつかきっと」と、みんなでコツコツと翻訳を続けました。おかげで、企画書が通ったときには、翻訳はほぼ完成しており、すぐに出版できたのです。
みんなの思いにゆっくりと抱かれて誕生したスローな本です。秋の夜長にゆっくりと読んでいただけたらうれしいです。

 そして今は、アル・ゴア氏の『不都合な真実』の続編の翻訳を猛スピードで進めているところです! 前書に比べて量もとても多くてタイヘン。がんばります〜。
「ぜひ日本でも読んでほしい」本を一緒に翻訳できるメンバーが増えてほしい、という願いから、翻訳力アップ自己トレ「メール講座Next Stage」をはじめ、「翻訳道場」など、翻訳者を目指す方へスキルアップの機会も提供しています。翻訳力アップ自己トレ「メール講座Next Stage」1〜3を修了した方には、「実践和訳チーム」をはじめ、私の出版プロジェクトのトライアルを案内している、修了生の有志勉強会グループをご紹介しています。また、12月27日と、1月8〜9日に予定している「実践型トライアルをかねての冬の翻訳道場」で成績が優秀だった方にも、これからの出版プロジェクトに参加していただく予定です(おかげさまで12月のコースはすぐに満席になり、現在キャンセル待ちになっていますが、1月の合宿コースはまだお席に余裕があります)。よろしければみなさんもぜひご一緒しませんか?

●翻訳力アップ自己トレ「メール講座Next Stage」
http://www.es-inc.jp/courses/course09.html

●「実践型トライアルを兼ねての冬の翻訳道場」
http://www.es-inc.jp/news/001731.html


トレーニング方法も進化することが大切です

 春と夏の翻訳道場が終わりました。
私は自分でも翻訳をしていますが、世界にたくさんある、まだ日本に伝わっていない大事な情報や書籍を正確にわかりやすく翻訳できる人をもっともっと増やしたいと思って、翻訳者を育てる講座やトレーニングも行っています。

 通常は、メールで週に1回ずつ課題を受け取って、自分で勉強を進めていく翻訳メール講座「Next Stage」でトレーニングを積んでもらっていますが、自分の時間のとれるときに、直接指導ができる翻訳道場を開催しています。一緒に翻訳を進めることで、どこに気をつけて、何を見ながら、何を判断の基準として訳語を選択し、全体のトーンを整えていけばよいかを体感してもらい、トレーニングに活かすことで力をつけてもらうものです。
今回は、5月に1回、7月に2回、そしてより少人数での集中的な翻訳道場その2を8月に2回開催しました。

 道場をやってみて、気づいたことがあります。「翻訳の勉強方法やトレーニング方法は進化していくもの」ということに気づいていない人がいるということです。
もしかして、6カ月前と同じやり方でトレーニングをしていませんか? 勉強方法もトレーニング方法も、自分の力がついてくるに従い、新たな課題が明らかになるに従って、刻々と変わっていくものです。

「え、私、6カ月前や1年前と同じやり方で練習している......」と思ったとしたら、翻訳だけではなくて、翻訳のトレーニング方法も進化させることを考えることをお勧めします!

 自分はどういう翻訳ができるようになりたいのか? そして今、自分はどこまでできて、どこが足りないのか? 次の一歩として、自分はどのような力を身につけることが必要なのか?――翻訳に限りませんが、成長していくためには「課題設定力」がとても大切。自分の課題を自分で見いだし、設定し、集中的にその力を伸ばすようなトレーニングを繰り返すことで、正確で読みやすい翻訳ができる力を少しずつでもつけていけます。

 芸術の秋、食欲の秋、勉強の秋......ですね。自分の翻訳トレーニング方法をちょっと見直してみませんか?

翻訳力アップ自己トレ「メール講座Next Stage」では、「今の自分に必要なトレーニングは何か」について、自分で気づくためのヒントやアドバイスをいろいろ紹介しています。また、他の人や自分の訳文を「読者」の視点で読むトレーニングを重ねることで、自分の苦手なところだけでなく、得意なところに気づいて伸ばしていくお手伝いもしています。よろしければご一緒しませんか?

講座の詳細はこちらからご覧いただけます。
http://www.es-inc.jp/courses/course09.html



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プロフィール

枝廣淳子

枝廣淳子さん:Junko Edahiro
東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。2年間の米国生活をきっかけに29才から英語の勉強をはじめ、同時通訳者・翻訳者・環境ジャーナリストとなる。環境問題に関する講演、執筆、翻訳等の活動を通じて「伝えること、つなげること」でうねりを広げつつ、行動変容と広げるしくみづくりを研究。世界と日本をつなげる役割としての翻訳者を育て、活躍の場を提供する取り組みも行っている。