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アーティストとして大成する人とは……?

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通訳・翻訳者リレーブログ

アーティストとは、本当に不思議なもの。
自分のやりたいようにやれているミュージシャン、自分の道をしっかりと歩めている人に限って、“好きな世界で、ここまでやってこられたのは、自分の努力というよりも、幸運と人との出会いに恵まれ、目に見えない何かに導かれた、大きな力が作用した結果。そうとしか言いようがない”…と口々に言います。

もちろん、みんなの見えないところ、陰では努力もしていますし、挫折感や苦渋を味わってきたことも、あるとは思うのですが、でも成功している人に限って、そういう過去を口にすることは、一切ないわけで…。

逆に、物凄く努力をしているにも拘わらず、空回りしてばかり、思うようにいかない人もいます。
ひたむきに人生と向き合ってきた、とても純粋で“良い人”だったのに、いつの間にか消えてしまった人。はっきりした目標を掲げ、そこに向かって、がむしゃらに走り続けていたのに、結局その目標に到達できず、その道から逸れてしまった人…。
“それなりに良いもの”をもっていても、“物凄い頑張り”や“それなりの才能”だけでは、どうにもならない、“何か”が存在するような…。
あともう少し、もう一歩。でも、どうしてもその道に乗れず、“そこ”へは届かず。見ていて、じれったい。
そんな人達を、仕事を通して、どれほど見てきたことか。

いえいえ、だからと言って、“努力など無意味。するだけ無駄”…などと言っているのでは、けっしてありません、が、ただ、“なんだかもったいない生き方をしているなぁ”…と思う人も多々います。

基本的に、ある特別の才能をもって生まれた人は、その才能により、人々を幸せにしたり、世界に何かをもたらす為に、この世に誕生したわけで、だからこそ、その才能は必ず開花するようになっていて、その為の道はしっかり用意されている。そんな気がします。
部屋に入った途端、その人の周囲には、違う色や空気が漂っていた。強いオーラを感じた。それもデビュー間もないのに。“あぁ、そういう星の下に生まれた人っているんだなぁ”…。そう思うようなアーティストを、たくさん見てきました。

そうしてそういう人達には、その人にとって、意味のある瞬間や出会いが、必ず用意されているもの。
ただ、その出会いの瞬間に、それに気づく“直感”のようなもの、そうしてそれを実際に掴み取る為の“行動力”。それがあるかないかで、人生は、大きく変わってくるのだと思います。

だからこそ、その“いざという瞬間”の為に、日頃から“直感力”や“行動力”を磨くこと、それがとても大切なのだということを、“大物”と言われるような人気アーティスト達と、言葉を交わすたびに、強く感じます。
実際、そんなことを口にしていた人も、何人もいましたっけ。

生まれ持った才能と、それから努力。正確に言えば、その努力も苦とは感じないような資質。それまた才能の内ですが。それに加え、それを生かす舞台。正確に言えば、その舞台へと誘ってくれる“瞬間”や“出会い”に気づき、そうしてそれを引き寄せる力…。
それを合わせもつ人は、とても強いし、頼もしい。

もうひとつ、大事なこと。
それは、ファンやその時代に迎合しないこと。そういう存在は、移ろいゆくもの。案外と虚しく、当てにはならない。
その時々の流れに沿って、変わり続けながら生き長らえている、とても器用な輩も、中にはいますが、でもそれはアーティストではなく、何か別の生き物。よって、ここでは触れないでおきます。

それから、一度にその才能を使い果たさないこと。“小出しにする”ということとは、まるで違いますが…。
あっという間に、頂点へ到達したアーティストは、それだけあっという間に、落ちていく傾向にあります。まるで線香花火。一瞬の内に、燃え尽きてしまう。それはその御本人以上に、その周囲の人達に、責任がある場合が殆どですが…。“それだけは避けたい”…と、先日インタビューした人も、ちらっと言っていましたっけ。

ひとつひとつのもの、ひとつひとつの瞬間と、真摯に向かい合うことは大切です。と同時に、そこで終わってしまうことのないよう、2年3年4年5年…と、長いスパンでキャリアを考えること。
非常に大切なことなのですが、でもこの世界に限って言えば、これは意外と難しいことでもあるのです。

……ここ数日間、世界中で愛されている某シンガーの、今度発売されるニュー・アルバム用の原稿書きに当たり、長いバイオに目を通し、此処までの道のりに触れながら、そんなことを改めて、あれこれ考えていました。

“ひとつのことにより、ひとつの方向へと導かれ、そうして予想もしなかったような場所へと到達する、人生とは本当に不思議なもの”。
運命的な出会いを果たし、その彼等とチームを組み、最初はなかなか上手くいかなかったものの、それでも自分達の信念を貫き通し、地道に活動していく中で、気がついたらこれだけの歳月が経ち、こんな場所へと導かれていた…と。

驚くほどに、ブレていない。そうして信じられないほどに、謙虚です。
あんな大物アーティストなのに。いや、大物アーティストだからこそ…と言った方が正しいか…。

そうそう、もうひとつ。
アーティストの多くは、頭で考えるのではなく、こころで感じ、そうして行動していることに気づかされます。

さて、この人はどうなのでしょう。吉村和敏氏。私の敬愛する人気風景写真家。
20歳の時に、カナダへ渡った氏。20数年前のその瞬間、どんなことを直感し、どんな閃きを得て、そうして遥か彼方、初めての海外へと、旅立って行ったのでしょう。
まずはヴァンクーバーで中古車を購入し、1か月かけてカナダを横断。そうして東海岸に浮かぶプリンス・エドワード島と、“運命的な出会い”をし、そこで1年間暮らします。そうして帰国後、撮り溜めていた写真を売り込み、写真家人生を歩み出します。その行動力と根性。想像を絶します。きっと幸運にも恵まれ、素敵な出会いもあったのでしょう。
その彼が先日、『PASTORAL』(今年4月)に続く写真集を出版しました。来週はその新作について、綴ってみたいと思います。

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高校までをカナダと南米で過ごす。現在は、言葉を使いながら音楽や芸術家の魅力を世に広める作業に従事。好物:旅、瞑想、東野圭吾、Jデップ、メインクーン、チェリー・パイ+バニラ・アイス。

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