INTERPRETATION

Vol.4 万紅さん「北京通翻訳エージェント社長の歩み」

ハイキャリア編集部

中国語通訳者・翻訳者インタビュー

【プロフィール】
万紅さん Wan Hong
北京外国語大学日本語学部卒業後、中国外交人員服務局入社、日本国際協力事業団(JICA 現・国際協力機構)中国事務所勤務。ニュースネットアジア(現・

NNA)北京事務所を経て、フリーランス中国語通翻者に。2000年より、北京にて通訳翻訳エージェントの代表を務めるとともに、フリーランス通訳翻訳者

としても活躍中。

日本語に興味を持ったきっかけは?

さい頃、近所に住んでいた日本人のおばさんが、共働きだった両親に代わって私の面倒を見てくれたんです。旧満州国の新京出身で、歴史的な背景もあって日本

という国を意識せざるを得ない環境で育ちましたが、私自身はおばさんを通して日本を見ていたので、いい印象しかありませんでした。自分の子供がいるのに、

私のことを非常にかわいがってくれて、「あぁ日本の人はこんなに優しいんだなぁ。一度日本に行ってみたいなぁ」と思っていました。中学校に入ると「あいう

えお」から勉強し、毎日おばさんと日本語で話すのが楽しみだったんです。大学を卒業する頃には、「日本語力を生かせるような仕事に就く」と決めていまし

た。

大学卒業後の進路は?
天安門事件後間もない頃だったので、大学卒業後は全員が半年間の軍事訓練を受けることになっていました。訓練は非常に厳しかったのですが、お陰で体だけは丈夫になりました(笑)。

その後外務省に入り、JICAに派遣されました。最初は事務的な仕事が多かったのですが、上司にも恵まれ、少しずつ協力事業現場の通訳翻訳も担当させて頂

けるようになりました。机の上だけでの勉強とは違って、仕事で語学力を生かすことができたことと、多少なりとも中国と他国との橋渡しになっていると思うと

嬉しくてたまりませんでした。上司は非常に厳しく、翻訳も毎回かなり直されましたが、そのお陰で今の私があると思っています。学校で学ぶことと、実際の仕

事は全然違うんですよ。社会に出て、本当に多くの事を教えてもらった気がします。

JICAには7年いたんですが、結婚し子供が生まれたので、一旦家庭に入ろうと思って辞めたんです。専業主婦になろうと思っていたのに、2ヶ月もしたらい

てもたってもいられなくなってきて(笑)。ニュース配信会社に入って、編集や翻訳の仕事をするようになりました。ここでも厳しく翻訳をチェックされ、かな

り力がついたと思っています。

その後、通訳翻訳者に?
ニュー

ス配信会社での仕事はやりがいがありましたが、残業が多いため、子供と過ごす時間がだんだん作れなくなってしまったんです。語学力が生かせて、子供と過ご

す時間も持てるような仕事はないだろうかと考えていた時に、ある会社から「通訳をして頂けますか」とご依頼を頂いたんです。思い切って会社を辞めて、フ

リーランスで通訳翻訳をやってみることにしました。

印象に残った仕事は?
NHK会長の通訳です。私自身、NHKの番組が大好きで、いつか仕事で関わることができたらいいなと思っていただけに、非常に感動しました。会長にお会いしたら、とても素敵な方だったので、改めてNHKのファンになりました。
思わぬハプニングは?

日、調査関係の通訳でチベットに行ったんです。標高4700メートルを超えるようなところで、私もふらふらでしたが、団長が高山病になってしまったんで

す。昼間は通訳、夜は病院で団長に付き添うことになり、3泊4日の仕事が終わるまで、ほとんど寝られませんでした。仕事中は、緊張感があるので体も大丈夫

でしたが、家に戻った途端倒れてしまい、1週間ぐらい寝込みました。

通訳翻訳エージェント設立に至ったきっかけは?

時中国はエージェント業がまだ確立されておらず、私自身も今まで培ってきたネットワークを生かさない手はないと思っていたところだったんです。会社経営し

ていた友人のところで通訳翻訳部門を立ち上げさせてもらえないか相談し、OKをもらいました! その後友人が会社全体を手放すことになったので、私が全て

の株を買って代表になったわけです。

社長業と通訳翻訳業の両立は?

だ会社の規模も小さいので、何とかやっています。私が通訳出張に出るのは最大10日までと決め、その他いろんな規則を設けて行動しています。会社経営は新

しいことを勉強できて楽しいのですが、個人的にどっちが好きかと聞かれたら、通訳翻訳ですね。私にとっては、趣味のようなものなんです。いつも幸せを感じ

ながらやっていますが、今後会社の規模を拡大していくには、私が現場に出ていてはいけませんから、経営に専念せざるを得ないでしょうね(笑)。

中国の通訳翻訳市場は?
以前は、需要に供給が追いつかないような状況でしたが、最近は日本のエージェントが進出してきたこともあり、供給が上回っています。これからは「質」が勝負だと思っています。
現在の1週間のスケジュールは?
仕事で毎日バタバタしていますが、時間が許す限り子供と一緒に過ごすようにしています。休みの日は、ジムで泳いでいます。
今後は?

しずつ、会社を大きくしていけたらと思っています。私もあまり現場に出ないようにして(笑)。会社で通訳翻訳者向けの講座が開けたらと思っているんです。

中国には、これまで通訳翻訳学校がなく、2003年に北京外国語大学が初めてクラスを開講しました。語学力の高い学生はたくさんいるので、彼らを育てる場

を作るべきだと思っています。そのきっかけとして、弊社でも何かスタートできればと考えています。

編集後記
「通訳翻訳をしているときが、一番幸せ」とおっしゃった時の万さんの表情が忘れられません。好きを仕事にできるって、やっぱり素敵です!

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テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

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