INTERPRETATION

第150回 「分相応の生活をする」

柴原早苗

すぐ使える英語表現

cut one’s coat according to one’s cloth (分相応の生活をする)

I wanted to buy an expensive car but I came to a conclusion that I must cut my coat according to my cloth.

(高い車を買いたいと思っていましたが、分相応の生活をしなければならないとの結論に至りました。)

cut one’s coat according to one’s clothは文字通り訳せば、「自分の布に応じて自分のコートを裁断する」という意味で、「分相応の生活をする」ということです。大修館書店の「ジーニアス英和辞典」によれば、忠告をする際に使われるとあります。他の辞書を引いたところ、主にイギリスで使われる略式表現と出ていました。

「順応して生きるべし」という意味の表現は他にもあります。たとえばWhen in Rome, do as the Romans do.(郷に入っては郷に従え)やStretch your legs according to your coverlet.(掛け布団の長さに合わせて脚を伸ばせ)、Better bend than break.(折れるより曲がった方がまし)などです。日本語でも「長い物には巻かれよ」「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」などがありますよね。いずれも「中庸」を勧めることわざです。

ところで私は今回の執筆にあたり、coatを英和辞典で引き直し、一通り語義を読み直してみました。coatはcoteと同音であることや、他の用例も参考になっています。たとえばa heavy coat(厚手のコート)、a light coat(薄手のコート)なども使いこなしたいところですよね。なお、少し古風な用法としてcoatには「上着、ジャケット」という意味もあり、A coat and tie are required(上着とネクタイをお召しください)との例文も辞書には出ています。こうして「ついでに」調べてみると、改めて発見がありますよね。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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