INTERPRETATION

第173回 「エビで鯛を釣る」

柴原早苗

すぐ使える英語表現

a sprat to catch a mackerel エビで鯛を釣る

The store is offering a huge discount. This is a sprat to catch a mackerel.

(お店は大幅な割引をしています。これはエビで鯛を釣るためなのですね。)

「エビで鯛を釣る」は英語でa sprat to catch a mackerelと言います。日本語ではエビと鯛が出てきますが、英語ではmackerel(サバ)とsprat(スプラットイワシ)を使います。スプラットイワシはニシンの一種です。日本語も英語も魚介類が出てくるのが興味深いですよね。大きなリターンを期待するというニュアンスがいずれの言語でも表れています。

さて、放送通訳の現場では、こうした熟語が頻繁に出てきます。先日もロシアゲート関連のニュースでred herring(おとり、気をそらすもの)という表現がヘッドホンから聞こえてきました。以前このコラムでもご紹介したフレーズです。ところが肝心の私自身が訳を度忘れしてしまったので、内心焦りました!同時通訳では文脈に応じて訳すしかありません。沈黙してしまえば放送事故になってしまうからです。とりあえずその日は無難な表現で切り抜けましたが、まだまだ勉強不足を痛感します。

ところでサバは漢字で「鯖」。つくりの部分は「靑」という旧字を本来は使います。「鯖を読む」はfudge the figuresと英語で言います。fudgeはキャンディーの一種だけでなく、「ごまかす、ずるをする」という意味もあるのですね。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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