INTERPRETATION

第115回 Lost and found: 失ったけど見つかったのは?

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。11月も中旬に入り、街にはイルミネーションが点灯され、クリスマス・年末が近いことを実感します。今年は何を成し遂げられたかを振り返るのに良い時期かもしれません。やりたかったことが達成できていなくても、年初には思いつかなかったことが意外に実現できているかも?! どうしても成し遂げたいことがあればまだ1カ月以上あります! あきらめないで小さな達成感を大切にしながら、少しずつ前に進めるといいですね。

さて、今週はThe Economist誌のEspresso(毎朝、短い記事が配信されます)でおもしろい表現を見つけたので珍しく日本のニュースを紹介します。

Lost and found: Japan’s economy

Five years ago this week Yoshihiko Noda, Japan’s then prime minister, dissolved the country’s parliament, prompting an election his party was sure to lose. The yen weakened and the stockmarket rallied in anticipation of more expansionary policies under his opponent, Shinzo Abe, who had promised to rescue Japan from its lost decades of deflation. Five years later, Mr Abe is still in charge, having won his third election in a row last month. During that period, the Nikkei stockmarket index has risen by about 150%. Profit rates are now at record highs and jobs are easy to find. Amazingly, employment has increased by almost 2.9m in the past five years, even as the working-age population has shrunk by more than 4m. Figures released today show the economy grew in the third quarter by an annualised 1.4%, the seventh consecutive quarter of expansion and the longest growth streak in 16 years. What once was lost, now, increasingly, is found.

まずタイトルの「Lost and found」はどういう意味でしょう? 「いなくなって見つかる」→「かくれんぼ」だと思ったら、楽しい間違いです♪ 本コラムをお読みの皆さんならきっと「忘れ物預り所」が思い浮かぶのではないでしょうか。(ちなみに「かくれんぼ」はhide-and-seek。隠れる方はhider、探す方はseekerという)

でも、「忘れ物預かり所」という訳にこだわっていると「日本経済」とのかかわりがピンときません。こういう場合は、文字通り「”なくしたものが見つかる”とはどういうことなのか」という問題意識を持ちながらピンと来るまで辛抱強く記事を読む必要があります。そうすると、最後の一文でハッとします!

What once was lost, now, increasingly, is found.

→「かつて失われたものが次々に見つかりつつある」

勘のいい人は2文目のlost decades of deflationで気が付いたかもしれません。これとかけて使われていたんですね!

1990年代初頭のバブル崩壊以降、まずは「失われた十年(Lost Decade)」という言葉が使われました。2000年代初頭、いったん景気が回復したものの2008年のリーマンショック(英語圏ではLehman Shockという言葉はめったに使われることはなく、ふつうthe financial crisisという)以降、また経済が低迷したため「失われた二十年(lost decades/ two lost decades) 」と言われるようになりました。長い間、デフレ・経済低迷に悩んできた日本経済ですが、株価や企業の利益率が記録的な高い水準となり、人手不足が深刻化するほど失業率が下がっているという最近の状況を受け、lost and foundと表現されています。

他、必須用語を解説します。

1.dissolve the parliament: 議会を解散する。「議会」については第113回を参照。ここでは日本の国会を指しているので本来ならDietですが、イギリス英語なのでイギリス式にparliamentが使われています。

2.The yen weakened: 円安になった/円安が進んだ。日本語では「円安」と名詞形で表現することが多いですが、英語では「円が弱くなった」とweakenという動詞を使うことも。weaker yen/weak yenなど、訳す際にフレキシブルに品詞を変えられるといいですね。

3.rally: 反発する。(第44回参照)

4.expansionary policies: 緩和策。(第59回参照)

5.in a row: 連続して

6.the working-age population: 生産年齢人口。直訳で「労働年齢人口」と言っても通じるでしょうが、経済学用語では「生産年齢人口」と言い、15歳以上65歳未満の人口層を指します。

7.by an annualised 1.4%: 年率換算で1.4%。11月15日に内閣府が発表したのは7~9月期のGDP速報値。同四半期では0.3%の成長でしたが、それを年率に換算すると1.4%増になるとのこと。

8.seventh consecutive quarter of expansion: 7期連続のプラス成長。consecutive(連続して)は前述のin a rowを使って言い換え可。

(例)三日連続:three days in a row → three consecutive days

expansion: ここでは「GDPの伸び/経済成長」の意。

以上、日本からの明るいニュースをLost and foundという表現と共に取り上げました。次は「賃上げ」+「さらなる成長」が期待されます!

2017年11月20日

Written by

記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
Follow me on Twitter (@HiromiGreen) and note (https://note.com/hiromigreen)

END