INTERPRETATION

第124回 digiceuticalって何?

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。まだまだ寒い日々が続いていますが、少しは日照時間が長くなり、春も遠くないと感じます。

さて、皆さんはdigiceuticalという言葉を聞いたことがありますか? これはBrexit(Britain + Exit)のように二つの言葉をくっつけて出来た新語ですが、何と何の組み合わせでしょう?

答えは、digital therapeuticです(-ceuticalは「治療」や「薬剤」の意の接尾辞)。

ここ数年でどんどん進化しているデジタルテクノロジーを利用した治療のことですが、他の健康アプリとの違いは、FDAのような規制当局によって効能が検証・承認され、医者から処方されるものを指し、センサーを使って集められたデータが治療に生かされることが多いようです。

今回は、英エコノミスト誌2018年2月1日号の「A new sort of heath app can do the job of drugs」から気になる用語を紹介します。

まず小見出しにはこう書かれています。

Smartphones are increasingly delivering verified treatments for diabetes, addictions and ADHD

(糖尿病や依存症・ADHDなどの治療にスマホ利用の効果が実証されるケース、増加)

・verify: 立証/実証/検証する

・treatment(可算名詞): 治療法

・diabetes(常にsがついている不可算名詞):糖尿病

diabeticは「糖尿病の」という意の形容詞と「糖尿病患者」という意の名詞用法があり。

・addictions: 中毒、依存症。

本記事によると、喫煙(smoking)や米国で深刻な問題化しているオピオイド中毒(opioid addiction)のほか、アルコールやコカインなどの刺激物の乱用にも効果があるアプリが開発されているという。

・ADHD:attention deficit hyperactivity disorderの略。注意欠陥・多動性障害。

注意力や自己統制力を養えるようなゲームアプリが開発されていて、承認されれば薬剤治療の代わりになるという。

同記事の冒頭では、「23年間も糖尿病を患った患者さんが2016年に処方された治療法によってやっと血糖値が下がり減量もできたのだが、その最新の治療法は新しい錠剤(a new pill)ではなくBlueStarというスマホアプリのおかげだった」というエピソードが紹介されています。

ただし、記事途中にはこのような記述もあります。

Some digiceuticals will work better alongside conventional drugs, rather than on their own–opening up possibilities for alliances between tech and pharma firms.

従来の薬剤の代用としてではなく、併用することによって効果を発揮するdigiceuticalsもあり、テック企業と製薬会社の提携の可能性も開かれる一方、患者が錠剤からソフトウェアに切り替えられるか(many patients will find it hard to believe that software can be as effective as a pill)という問題も残されているようです。

この記事を読んで、かなり前の父の言葉を思い出しました。30年ほど前に糖尿病と診断され、それ以来何人もの医師の診察を受けましたが、「どの医者も信用できない」と嘆いていました。その理由は、どの医師も薬をたくさん処方するだけで誰一人「運動しなさい」と言わなかったからでした。

新たなテクノロジーと医療との組み合わせで、効果的な治療が増えることを願っています。

2018年2月5日

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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