INTERPRETATION

Vol.6 粕谷麻里子さん「周囲の人たちに支えられて」

ハイキャリア編集部

多言語通訳者・翻訳者インタビュー

【プロフィール】
粕谷麻里子さん

Mariko Kasuya

明治学院大学国際学部国際学科卒業後、国際協力事業団青年海外協力隊参加、タイ王国にて人形制作指導に携わる。1993年帰国、タイ王国大使館労働担当官事務所にタイ語通訳翻訳担当職員として勤務。茨城県警察本部通訳、企業内通訳翻訳を経て、現在はタイ王国大使館労働担当官事務所に通訳翻訳者として勤務。週末などの時間を利用して、フリーランス通訳者としても活躍中。

タイ語に興味を持ったきっかけは?

ともと語学に全く興味はなかったんです。旅行がとにかく好きで、学生時代はよくバックパックで一人旅をしました。海外で暮らしたいと考えるようになり、留

学ではなく現地の生活を体験できたらいいなぁと思ったんです。大学卒業当時はバブルで、今しかできないようなことをやってみたいなと思い、青年海外協力隊

の試験に応募しました。

3ヶ月間の事前研修があり、毎日5時間ほどタイ語の授業を受けました。他の協力隊員に比べると年齢的にも若かったせいか、成績は良い方でしたよ! 赴任先は南部地方で、訛がありとても早口なので苦労しましたが、おかげで今でも他の地方の言葉はゆっくりに感じられます。

帰国後、通訳翻訳者に?

イ語を使って仕事をしようとは特に考えていなかったんです。それほど需要もあるとは思ってはいませんでしたし。ご縁があってタイ大使館で採用して頂いたん

ですが、当時の私のタイ語力はお恥ずかしいものでした。自分が何職で採用されたかも理解できなかったんです(笑)。通訳と一般事務職の募集をしていて、

「あなたは通訳と一般事務どちらの職種をご希望ですか?」とタイ語で聞かれたものの、「通訳」と「一般事務」という単語すら分かりませんでしたから。「タ

イ語でタイピングはできますか?」と聞かれ、「できません」と答えたところ、別の部屋で翻訳試験を受けさせられました。語彙力がないため、その場では少量

しかできなかったのですが、自宅で仕上げて翌朝までに送るよう言われ、徹夜で仕上げました。結果、通訳者として採用されたときは嬉しかったですね。

通訳業務を経験して、いかがでしたか?

のいた部署は、日本人が一人だったので、毎日何をするにも通訳が必要になるわけです。本来であれば、通訳学校で勉強したいところでしたが、タイ語の通訳学

校は存在しないため、体当たりで覚えていくしかありませんでした。メモ取り、同時通訳、全てその場で覚えました。お給料を頂きながら毎日勉強させて頂いて

いたので、最初は本当に申し訳ないなぁと思っていたことを覚えています。

1994年からは、通訳専門職員として茨城県警本部に?

本の組織で働いたことがなかったので、一度経験してみたいと思ったんです。被疑者の取調べや警察の聞き込み時に通訳が必要になるのですが、警察では公判に

耐えうる調書の作成が必要なので、その場を取り繕う通訳ではなく一語一句正確に直訳することが求められます。慣れるまでは大変でしたが、このお陰で、普段

適当に流してしまいがちな表現についても深くじっくり考えることができました。

ある時、見つかった死体にタイ語の刺青があったんです。私も警察の聞き込みに同行し、ついに犯人逮捕となりました。おそらくサスペンスドラマだと、犯人逮

捕でエンディングになると思うんですが、実際はそこからが大変なんですよ。被疑者に真実を話してもらわないといけないのですが、そう簡単にはいきません。

幾度に渡る説得の結果、ついに被疑者が涙を流しながら話し始めた時には、私も胸がつまる思いがしました。

ここでの経験から、通訳の仕事に魅せられ、もっと実力をつけて広い分野の通訳を経験できるようになりたいと考えるようになりました。

面白ハプニングは?
お店の摘発に同行したときのことです。店内は人で溢れ、誰が誰だか分からなくなっていたせいもありますが、いきなり警察に「動くな!」と言われてびっくりしたことがあります。どうやらお店のホステスと間違えられたようなのですが……。

 青年海外協力隊時代の私のタイ語力がいかに低かったかを思い知らされたことがあります。日本帰国後、3年ぶりにタイを訪れたときのことです。小さい町な

ので、道を歩いていると、当時の知り合いに会うことも珍しくありませんでした。「あなたどうしてそんなにタイ語がうまくなったの?」と何人にも驚かれまし

た(笑)。タイ語は発音が難しいので、挨拶一言聞いただけでも、そのレベルが分かるのかもしれませんが、本当に私ってひどかったんだなぁと、嬉しいような

悲しいような(笑)。

お得意な分野は?

くやっていたこともあり、法律、労働関係は得意です。映像翻訳も好きです。今までは、タイ語のレベルを上げなければ! と思っていましたが、最近は日本語

の表現力にもっと磨きをかけていく必要があると感じています。テレビ通訳のお仕事も頂いており、会議通訳とはまた違ったスキルが要求されるので、状況に応

じてフレクシブルに対応できればと思っています。

スキルアップのために、何か行っていることは?

段話す日本語に気を使うようにしています。ちなみに、電子辞書は英⇔タイ⇔タイのものしかないので、タイ⇔タイをたまに使うだけです。タイ語は英語のRと

Lのように日本人には聞き分けることが難しい音が無数にあるので、音として初めて聞いた言葉は、必ず辞書でスペルを確認して正確に発音できるようにしてい

ます。

6ヶ月の娘さんがいらっしゃるようですが、ご家庭との両立は?

がこうやって仕事を続けていられるのも、職場の理解、両親の協力、そして夫が私の仕事を認めて、励まし協力してくれているからなんです。休日私が外出して

いる時は、夫が娘の面倒を見て、夕飯まで作って待っていてくれることもあります。今回、インタビューのお話を頂いたときに、夫へ感謝の気持ちを伝えたいと

思いました。普段はなかなか口にだして言えませんので。このインタビューが掲載されたら、真っ先に夫に見せようと思っています。

 大使館の方々にも本当に感謝しています。私が妊娠したときも、皆さんがサポートしてくださいました。つわりもひどく、辞めようかとも考えていたんです

が、特別に予算を取って外部の通訳を雇ってくださり、日常の簡単な通訳であれば同僚が嫌な顔ひとつせずに代わってくれました。皆さん本当に温かく見守って

くださっています。

今後も通訳翻訳を?
そうですね。家庭とうまく両立させながら続けていけたらと思っています。
もし通訳者になっていなかったら?
昔から縫い物や、何かを作るのが好きで、大学に行かずに専門学校にいこうかと思っていたんです。タイ語をやめて、服飾関係企業に就職しようと思ったこともあるぐらいです(笑)。もし通訳者になっていなかったら、服飾関係の仕事に就いていたかもしれませんね。
タイ語通訳を目指す方へのアドバイスをお願いします。
私は本当に環境に恵まれていたと思っています。勉強を続けていけば道は開けるので、がんばって頂きたいです。タイに留学する方も増えていますが、留学だけだとビジネスレベルの語彙力が身に付かないかもしれませんので、OJTでどんどんスキルを伸ばしてください!

編集後記
今回は、大使館近くのカフェでのインタビューとなりました! 大使館では毎年冬にタイ料理パーティを行っているようで、次回是非参加したいです。

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テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

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