INTERPRETATION

Vol.24 「アマゾンから世界へ」

ハイキャリア編集部

通訳者インタビュー

【プロフィール】
小浜由美子さん Yumiko Kohama
大阪女学院短期大学英語科卒業後、松下電器産業株式会社に勤務。1989年よりカナダ滞在、現地日系企業に勤務。現在は、地球環境をテーマに活動するNPOで講演活動、海外プロジェクトに携わり、「アマゾン・パラダイス」小浜由美子として、ハワイ島と日本を往復しながら執筆、講演活動などを進めている。

Q. 英語を勉強するようになったきっかけは?

高校2年の時に聞いた、NHKラジオ英会話がきっかけです。ラジオから聞こえてくる生の英語を聞いたときに、大きな感動を覚えたんですよ! 学校で習う英語とは違う響き、何だろうこの音は? と。とにかく勉強してみようと、独学でいろんな方法を試しました。小さい頃から、言葉に対する関心は強かったんですが、英語に関しては、運命的な出会いを感じましたね(笑)。

Q. 具体的にどういう勉強を?

NHKテキストをフル活用しました。毎日録音して、時間のある時にテープをずっと流しておくんです。耳から英語を学ぶようにしました。私は帰国子女でもなく、英会話学校にも通ったことがないので、常に自主学習の毎日でした。
大学では、通訳講座を受講しました。通訳って面白そうだなぁと受けてみたんですが、これが大変! いきなり逐次通訳や同時通訳の練習をさせられ、今思うと非常にレベルの高い厳しい授業だったなぁと思います。当時は、ここで勉強したことが、その後に生かされることになるとは、思ってもいなかったのですが。

Q. 1989年にカナダへ?

大学卒業後、メーカーに就職したんですが、英語を使う機会が全くなかったんです。同級生の中には、海外留学や国際結婚する人もいて、自分だけが身に付けたスキルを生かせないことがもどかしくて……。 自分の力を試してみたかったんです。実際に海外に行って、いろんな人と出会えたことが非常に嬉しかったですし、将来の目標がだんだん見えてきた気がしました。

Q. 地球環境NPO運営に携わるようになったきっかけは?

カナダ滞在時、環境問題に対する人々の意識の高さに、ショックを受けたんです。日本はバブルで浮かれ騒いでいた時期でしたが、カナダでは日常的に環境について皆で語りあうことが多く、若い人たちの考え方も根本的に違うことを実感しました。これは私も何かしないと! と思ったんです。そんな時に出会ったのが、米国元副大統領アルバート・ゴア氏が書いた、『地球の掟』という本でした。地球環境は学際的な学問だと認識し、アメリカで勉強したい気持ちもありましたが、日本でしばらく活動してみてからでも遅くないと思いました。国際プロジェクトの一員として、日本全国で講演させて頂いたことは、大変貴重な経験になりました。

Q. 通訳もご経験されたと伺いましたが。

外務省外郭団体の関係でBBCオピニオン・リーダーの通訳、NGO国際プロジェクトでの通訳などを担当しました。特に印象に残ったのが、神戸で行われたSS会議(永続可能な社会 全国研究交流会)で、インドの有名な運動家、スンダルラル・バウグナさん(インド・チプコ運動のリーダー)の通訳を担当したときのことです。引き受けたものの、普段通訳をしていない私が、やってもいいものだろうかとすごく不安になったんです。もし聞き取れなかったら、もし理解できなかったらどうしようと。
ある時、「そうだ、バウグナさんの想いと一つになればいいんじゃないか?」と考えたら、すごく楽になったんです。当日はとてもうまくいき、後から良いフィードバックを頂きました。

Q. 通訳の大変さは?

範囲のない受験勉強のようなものですよね。私の場合は環境問題が多かったので、そういう意味では自分の専門が生かせてよかったと思います。テクニカルタームや専門知識を叩き込みましたが、どこまでやっても「これでいい!」と思えることはありませんでしたね。

Q. 2002年から、執筆活動を開始されたようですが。

現在は「アマゾン・パラダイス」という名のもと、個人で活動を進めています。今までは、組織の中の一人として動いていましたが、これからは私自身が直接世界の人たちと自由につながっていきたいなと思ったんです。組織の難しさを見てきたことも理由ではありますが、これからは本当の意味でのネットワークが構築できればいいなと。その第一歩として本を出す予定です。アマゾンで見た人間の原点。あの純朴な生き方を、この文明社会で生きている私たちの中に取り戻したいんです。太古の知恵と現代文明の妥協ではなく、融合を見つけていきたい、それがアマゾン・パラダイスの願いです。

Q. どうしてアマゾンだったんでしょうか。

1998年にブエノスアイレスで行われた地球温暖化会議に参加したんですが、どうも面白くなくて(笑)。環境問題は深刻ですが、これはダメ、あれはダメと難しい話をしても人に伝わらない。地球と調和した生き方ってどんなものだろう? と考えたときに、まず自分が体験しないといけないんじゃないかと思ったんです。せっかく南米にいるのならアマゾンに行ってみようかとふらりと訪れました。それ以来心を掴まれてしまいました。日本で講演活動を続けながら、たびたびアマゾンの奥地を訪れています。

Q. 今後の活動は?

執筆、講演、アーティストとのコラボレーションを中心に活動を進めます。以前のように、形式ばった講演会ではなく、皆さんとより近い形で私が体験してきたことをお話できたらと思っています。2冊目の本も執筆中です。今年からは、小中学生、幼稚園児たちにもお話します。子供たち向けのアマゾンの絵本も書いてみたいですね。やりたいことがどんどん増えてきて、夢は膨らむばかりです。

Q. 全ての活動は、英語から始まったんですね。

そうなんです! 40歳になってやっと、一生やっていきたいと思う事が見えてきました。あぁここにつながったのだなと思っています。出版される本は英語で書いているので、世界の人に紹介することができます。アマゾンで目覚めた感覚、楽園の記憶、「喜びと幸せのために生まれてきた」インディオたちの精神、人間本来の生き方を、アマゾンから世界へ発信していきます。

<編集後記>
小浜さんの凛とした表情が忘れられません。本の出版が決まったら、皆さんにお知らせいたします!

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ハイキャリア編集部

テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

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