INTERPRETATION

Vol.4 「人間が好き」

ハイキャリア編集部

通訳者インタビュー

【プロフィール】
田中ジューン恵さん
June M. Tanaka
幼稚園から高校卒業までをアメリカンスクールに学ぶ。上智大学卒業後、1987年に通訳業務を開始。映画・エンターテイメントの通訳をメインに活躍。BS放送で英語・日本語のニュースキャスターを務めた経験もある。現在は会議通訳者として活躍、多忙な毎日を送る。

Q. どうして通訳者に?

兄が通訳のコーディネートをやっていたんです。ちょうど私も仕事を探していた時で、「やってみれば?」と言われて始めたのがきっかけです。それからもう十数年経ってしまったんですけれども。でも辞めてないということは、嫌いではなかったということでしょうね(笑)。昔から漠然と事務などは向いていないだろうなとは思っていましたが、絶対に通訳! という感じではなかったんです。

Q. どのようにして勉強を?

通訳学校に通ったことはありません。自主トレというか(笑)、全てOJTで学んだといっても過言ではありません。初めての仕事はテーマパークのショー振付通訳だったんですが、すごく面白くて。日本人振付師の指示を訳すんです。「こんなに楽しくて、お金もらっていいんだろうか?」というのが始まりで、どっぷり浸かってしまいましたね。

Q. 現在はエンターテイメント分野の他に、会議通訳もなさっているんですよね。

そうなんです。ずっとエンターテイメントや映画関係をやってきて、今も演出家に付いて通訳しています。私のメインの分野はエンターテイメントですが、今後もっと幅を広げたいので、会議通訳にも挑戦しています。ビジネスの部分が一番弱いので、ちゃんと勉強してみたいと思ったんです。財務や来年の年次計画についての話は今まで取っつきにくくて避けてきたんですが、それではいけないと思って、必死に勉強しています(笑)。

Q. 英日・日英、どちらのほうがお得意ですか?

私は英語がネイティブなので、英語に訳す方が気が楽ですね。日本語は敬語などに気を遣わないといけないので(笑)。ただ、一応バイリンガルな家庭に育っているので、どちらもそれほど不自由は感じません。

Q. それでは言葉の面で苦労されたこともないのでは?

父は日系のアメリカ人で、母が英語が全く話せないこともあって、家では割と日本語が多かったんです。小学校1年生の時、英語ですごく苦労したことを今でも覚えています。友達に英語が下手だとからかわれましたし。でも子供は柔軟だからか、2年生の終わりぐらいには全くハンディを感じなくなっていました。

Q. 仕事でストレスがたまることはありますか?

意外とストレスの発散は出来ている方だと思うんです。ただ、時々「一人になりたい」と思う時があります。そんな時は一人で温泉に行ったり、シティホテルに泊まったりします。何か暗い人みたいですが(笑)、一人でゆっくりして、次の日また仕事! と気分転換しています。趣味は日本舞踊です。昔からやっていて、週に一度お稽古に行きます。ちょっとだけお習字も習っています。

Q. スキルアップの秘訣は何ですか?

ほんとにずぼらなんですが(笑)、電車の中吊り広告を活用しています。これって英語で何て言うんだろう?、日本語だとどうなるんだろう? と気になるとその場で辞書を引っ張り出して調べています。そう、とにかく辞書だけはどこにでも持ち歩いていますね。あと例えば、「私ならこう訳すのにな」と思った時も、辞書を引いてニュアンスの違いを調べています。

Q. ジューンさんの強みは?

うーん、落ち込んでもすぐに立ち直る強さはあるかもしれません(笑)。ミスをしても、ずっと引きずっていたらパフォーマンスに響いてきますものね。「今日失敗しても、それは忘れてまた明日!」と心がけているんです。ニュースキャスター時代に生の本番をこなしてきたので、度胸はついているのかもしれませんね。

Q. もし通訳者になっていなかったら?

一日中椅子に座って事務的な仕事をするのは向いていないと思うんです。人間が好きなので、何らかの形で人と接する仕事がいいですね。営業的な事や、人とコンタクトがとれるような仕事をしていたと思います。

Q. 最後に、通訳を目指す方へのメッセージをお願いします。

学校で勉強することもためになるとは思いますが、やっぱりOJTで覚えて行くのが一番です。最初は失敗したり、大恥をかいたりすることもあるでしょうが、来た仕事は積極的にやってみるべきだと思うし、失敗しても今後それが生きてくればいいんです。来た仕事を誠実にこなしていけば、真面目な姿勢は向こうが分かってくれると思います。最初のうちは完璧に通訳なんて出来ませんから。よく冗談で言っていましたが、実力のつく前はとにかく愛想のよさでごまかすって(笑)。やっぱり人間性って仕事に出ると思うので、来た仕事を一生懸命こなすのが一番だと思います。

<編集後記>
日本語を外国語として学んだため、未だに漢字の読み書きは苦手なんです、とジューンさん。まだまだ通訳としては未熟だから、自分で納得出来るところまでやってみる、とのお言葉には力がこもっていました。

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ハイキャリア編集部

テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

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