INTERPRETATION

Own what you say!

木内 裕也

Written from the mitten

 日本人の話す英語を聞いていてよく感じるのが、表現のあちらこちらに英語としては不自然で、自信のなさそうな表現が散乱していることがあります。以前、私の教えている学生がI think やI believeといった表現を使って論文を書いている、とこのブログに書いたことがありますが、似た傾向が日本人のビジネスパーソンにも見受けられます。

 「4月に新製品投入の予定です」と言う時にI thinkと言えば、相手は不安になるでしょう。「私の意見では」をI thinkとしても同様です。In my opinionというほうが数倍望ましいです。なぜなら、Thinkは「思っている」だけでしかなく、何を思うかはその人の勝手であり、その内容が正しいかどうかにその個人の責任が発生しないためです。In my opinionとすれば、まだ「個人的見解」でありながらも、もう少し考えて発言している印象を与えます。

 Something like thatと言うのも日本人が好む表現です。「何かそんな感じ」というはっきりとしない、適当な印象を与える表現ですが、「など」の意味で使ったり、「それに似たもの」という意味で使っていると思われます。「など」であれば、And othersともいえますし、And so onでも大丈夫。「それに似たもの」であればAnd the likeでOKです。「それみたいなもの」とは、「それではない」という意味にも取れますから、誤解を招くことがあっても不思議ではありません。

 As XX as possibleというのも日本人が好きです。すぐやります、というときにSoonやImmediatelyと言わずに、As soon as possibleと言うのです。これは学校で学んだ熟語の影響があるかもしれません。しかし「可能な限り早く」というのは、「可能じゃなければ早くしない」という意味です。「すぐに取り掛かります」と意気込みを伝えたくても、As soon as possibleと言ってしまえばその意気込みは薄れてしまいます。

 逆にI don’t knowは日本人がなかなか言いません。質疑応答で質問されて、答えがなくても適当な答えで済まそうとしている姿を目にすることがあります。これは英語でのコミュニケーションに限ったことではありませんが、「ここは素直に知らないと答えたほうが信頼関係が生まれるのでは?」と感じることが少なくありません。I don’t have an answer to that, but I can say that…と続けることもできるはずです。

 以上の例が示すように、やや「弱い」印象や「大丈夫かな?」と思わせてしまうことがあるのが、日本人の特徴かもしれません。また「少し考えてみます」というつもりで”I will think about it a bit”と言えば、「ちょっとしか考えてくれないんだ」という印象を与えてもおかしくありません。日本語のように言外の意味を汲み取る文化は素晴らしいですが、言葉が変わると、同じ期待値を求めることができないことも多くあります。そんなときはこの点に気を払うことも重要でしょう。

Written by

記事を書いた人

木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

END