INTERPRETATION

成功に必要なのは意志よりも計画性

柴原早苗

通訳者のたまごたちへ

 毎日仕事や家事、子育てなどをしていると、「ああ、あともう少しだけ時間があったらなあ」という思いにかられます。私なりに時間管理術の本を読んだり、家事を効率化してみたりといろいろと工夫を重ねてきたつもりではいますが、やはりそれでももっと時間がほしいという気持ちを抱きながら今日に至っています。

 ただその一方で、自分でもずいぶん欲張りだなと思ってしまうこともあります。家族がみな健康で、食べるものもあり、寝るところもあるというだけでも十分幸せな人生のはずです。それなのに「スポーツクラブに行きたい」「フランス語を勉強したい」「もっと新聞を読みたい」「英語を学びたい」と、ややもすると欲求はエンドレスになってしまうのです。

 先日聴いたフィットネス関連のポッドキャストで、興味深いことが言われていました。ダイエットの成功の有無は「意志が20%、計画が80%」なのだそうです。つまり、「ダイエットしなきゃ」と自分の意志でコントロールしようとするとストレスがたまってしまいますが、食事や運動計画をしっかり立ててそれを実行することに焦点を当てた方が成功する確率が高いというのです。

 確かにその通りだと思いました。英語学習でも家事でも、いったん面倒だと思ってしまうと、着手するまで時間がかかってしまいます。「やらなきゃ」と頭ではわかっているものの、つい他のことを優先したり、先延ばしにしてしまったりするのです。

 けれども計画をまずは立てて、それをこなすようにした方が取り組みやすくなります。たとえば私の場合、「冷蔵庫の中の食材を見て献立を考える」ということがものすごく不得意です。「適当に調理する」といった作業がとても苦手なのです。

 一時は「料理を得意にならねば」とプレッシャーに感じた時期もありましたが、やはりうまくいきませんでした。けれどもその後、「不得意ならそれでいい。その代わり、一週間分のレシピを集めてそれを順番に作っていこう」と計画を立てるようになって以来、スムーズにいくようになったのです。要は「苦手なら苦手なりにシステム化してしまう」ということです。

 英語学習であれば、たとえば翌朝勉強できるよう前の晩のうちにテキストとノートを開き、電子辞書もすぐに引けるよう、ふたを開けておくというのも一案でしょう。朝、ジョギングを続けたいのであれば、ウェアとシューズを用意して寝るということでハードルは下がります。

 大事なのは、意志に頼ろうとせず、計画を作ること。私自身、いろいろな分野でこれを応用したいと思っています。

 

(2010年11月8日)

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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