INTERPRETATION

第14話 通訳現場の思い出

吉岡余真人

通訳者のための現場で役立つ同時通訳機材講座

みなさん、こんにちは

9月も後半に入り、やっと涼しくなってきましたね

第14話は、本年12月で取り壊しになる

東京商工会議所 国際会議場の思い出について、お話しします。

私がこの業界に入った1989年は

横浜博覧会 Yes89開催の年で、非常に国際会議が多く

新人の私は、毎日数多くの現場に飛び回る日々でした。

その最初に行った現場が、東京商工会議所 国際会議場です。

当時、新人の私は、同時通訳エンジニアの勉強中で

ハイエースであちらこちらの現場へ機材を運搬し

運んだ現場で、先輩が機材をセッティングしている姿を、見よう見真似で覚えました。

当時のハイエースはパワーステアリング(ハンドルを油圧で軽い力で回すことができる装置のこと)がなく、1日5現場も運転をすると非常に疲れました。

駐車場も狭く、大変でした。

それから25年を過ぎ

本年12月末で閉館になり、来年より取り壊しがはじまります。

そのことを思い出しました。

東京商工会議所 国際会議場は

天井が高い、会場の解放感

金メッキを多用した、手すり、毎日丹念に、磨きかれピカピカでした。

触ったときの鉄の香が懐かしいです。

14-1.jpg

そのつぎに通訳ブースですが

下記の写真の通り、音響調整室と隣あっており

通訳さんが、通訳音声の出力ボタンを押し間違えたときなど、急いでフォローに行きました。

現在のBOSCHやDISなどは装備されておりませんが

日本無線製(JRC)同時通訳機材は、

通訳者が押し間違えたことをを知らせるランプが装備されていました。

通訳者はその点滅により、出力(CH)ボタンを切り替えます。

これは日本と、欧州の機材設計の考えかたが異なるためです。

通訳者操作器(Interpreter Operation Unit)

日本の考え方⇒通訳者の押し間違えはエンジニアがフォローする

欧州の考え方⇒通訳者の押し間違えは通訳者の業務

          それでも復旧しない場合はエンジニアがフォローする

これは多言語通訳の多い、欧州ならではの考え方であると思います。

14-2.jpg 

この国際会議場が取り壊しになることは残念ですが

今後、2020年の東京オリンピックに向け、

たくさんの国際会議が行われていることでしょう

私たち、テンナインテクニカルチームは

おもてなしの精神をモットーに通訳のみなさんと一緒になって、円滑に会議が行われるよう、最善を尽くします。

どうぞよろしくお願いいたします。

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記事を書いた人

吉岡余真人

東京オリンピック開催直前 1964年8月に東京葛飾金町にて産声を上げました。専門学校卒業後、稼業の理髪店を経営するが、オリンピックで開催される国際会議にあこがれ、1989年同時通訳機材会社に就職し、東京サミット、APEC大阪、ADB福岡会議の機材運営に携わる。長野オリンピックでは組織委員会にも在籍し、ローザンヌのIOC本部にも出張し、すべての会場の同時通訳機材運用を統括。第107回IOC総会、理事会、メインプレスセンター、選手村、IBC国際放送センタースポーツ調停裁判所、医事委員会などの同時通訳機材運用を統括する。
その後大手通訳会社にて通訳コーディネーターとして勤務し、社内ベンチャーで機材会社を設立。退職後2005年からは舞台を中国に移し、国際会議ディレクターにて活躍。2008年北京オリンピックでは東京五輪の招致記者会見の通訳・機材の運用に携わり中国および東南アジアでの国際会議を運営する。上海・バンコクの通訳会社にも所属し、東南アジアを駆け巡る日々を送る。
2013年から2017まで株式会社テンナイン・コミュニケーションに在籍し
2017年8月からバルビエコーポレーション株式会社を設立し現在に至る。

END